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1章〜復讐へ〜

第三十五話 螺旋迷宮ギルディア〜禁呪〜

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ギルは死を覚悟し、目を瞑った。
だが、ケルベロスがギルに当たる寸前、剣の弾く音がした。


「え?」


ギルは死ぬと思っていたが誰かに救われたことに驚きを隠せない。
竜二はケルベロスの頭に剣を振り下ろすと、横たわっているギルを飛び越え、ケルベロスに突っ込む。
ギルは俺のことを確認すると、渋い表情をする。


「なぜ..ここにお前が...」


「仲間が最上階にいる。だがら助ける。そのために俺はここにいるんだ」


「だったら諦めて逃げろ...お前じゃ。あいつには勝てない」


「それはどうかな。やってみなきゃわからないだろ?」


「俺も最初は同じことを思った。だけど俺はあいつを甘く身過ぎていたんだ。到底お前如きでは手も足も出なくて、死ぬぞ...」


「俺も甘くみられていたものだな。ギル、心配いらないぜ。後は俺に任せろ!必ず倒すから」


そうギルに言葉を残すと俺はケルベロスを睨みつける。
ケルベロスは俺の威圧に少し足を竦ませたが、すぐさま見下ろす目になる。


「竜二ーーー!君は病人でしょ!平気なの?」


大きい声だが弱々しい声音でリーナは俺に問う。


「リーナ、俺は大丈夫だ。そこで見ていろ!それでノーラは?」


「私も平気だ」
 

「よし!それでは行くぞ!」


俺の言葉と共に、ケルベロスは俺に向かって迫り来る。

ーーやはり遅い。Aランク級はこの程度なのか。

俺はケルベロスの突進を悠々と避け、後ろの三人の所に行かせないように、後ろに回り込み尻尾を両手で掴む。


「行かせないぞ!」


尻尾を掴んだ途端、ケルベロスは急停止し、横に倒れこむ。
まだ尻尾は離さず、次は体を一回転させ、三層の奥へと投げ飛ばす。
投げ飛ばされたスピードにより、ケルベロスは次々と壁を突き破り、五枚くらい破壊した時、やっとの事で壁に激突し、止まった。
俺がいるところからは約50メートルほど遠くに行ってしまった。


「少し、やり過ぎてしまったかな」


俺は独り言をこぼすと、その光景を見ていた三人は目を見開き、これが現実で起こっているのかわからない様子だった。


「竜二...あなた一体?」


「それは.......まぁこの話は後でだな」


リーナとの話の最中、50メートル先のケルベロスは起き上がり、怒りの形相に変わった。赤目をさらに狂気に満ちた目になり、ケルベロスは再び咆哮を放つと、俺に向かって猛スピードで走り出した。


「グァーーーーーーーーーー!!!!」


俺は地面を蹴り、光の速度でケルベロスに迫る。


「殺す!!」


右手に鋼の剣、左に金色の剣を持ち顔面から突き刺す。顔面から尻尾まで切り刻み、ケルベロスは上半身と下半身で真っ二つになった。
大量の血を流しながら地面へと肉片は落ち、そして、消滅した。


「やはり消滅するのか...」


俺はこの世界から来ての疑問をこぼした。

俺は一呼吸するとそのまま四階の階段目指して走り出す。


「待ってろ!エリシア、アリシャ!!!」


それを瞬き一つせずに見ていたリーナ、ギル、ノーラはというと、


「行ってしまったな。こんなに竜二が強かったなど知らなかった」


時間が経ち、体が動くようになってきて三人は起き上がる。


「そうだな。俺もあいつを見誤っていたぜ。それに命を救われた恩人だ」


「うん。次竜二に会ったら何かしないと気が済まない。竜二は大恩人だな」


「あ、そうだ!次竜二に会ったら私達のギルドに誘ってみるのはどう?」


リーナがキラキラした目で二人に問う。


「俺たちとじゃレベルが違う。竜二は勇者レベル。釣り合うわけがない。誘うだけ無駄だな」


「何言うのだ!ギル。それはわからんだろう!私は言ってみるからな」


横から話に入ったノーラはギルの言葉に反応し、答える。


「せいぜい、頑張って勧誘するんだな」


又しても二人は睨み合う。


「二人とも...そんなに睨まないで、全くもう...」


リーナは二人を見て呆れていたのだった。


「俺はさ、本当に情け無い。ヴァイスを助けられなかったことがやるせなくて、胸が苦しい。俺にもっと力があれば!あれば!」


ギルが悲しみの表情へと変わりリーナやノーラも同じ表情に変わる。


「それは私も。強くないから、弱いから、あーーーーーーーーーー!!!」


リーナは涙を流し、自分の弱さを自覚させられる。


「リーナ姉やめてよ。泣かないでよ...そんなに...私も...守れなかった...」


リーナにつられてノーラも涙が溢れる。


「そうだ...いいこと思いついた」


リーナは下を向き、不敵な笑みを浮かべる。


「リーナ、何だよ」


「ルナに頼んでみるの。ルナの書庫には死者蘇生も出来る禁呪があるに違いない。そしたらヴァイスを助けられる」


「でも、ルナだって預かってるって、多分ダメ」


「50億払えばとかルナ言ってなかったか?」


「そんな...そんなお金...無理に決まってる...」


「良し!ここは俺の出番だな!ギルドホームに帰ったらちょっとルナの書庫から借りてくるぜ」
 

「じゃあ、ギルお願い!決してルナには見つからないようにこっそりね」


「私も協力する。ギルだけじゃ。心配だからな」


「何だとノーラ!お前なんか必要ないんだよ!」


「必要ある!ギルが必要ないんだ!」


「もう二人ともやめてって!これからの方針が決まったんだし、早くここからおさらばよ」


「まだここは三層だし、早々に出よう」


「だな」


そして、三人は悪い方向へと歩き出したのだった。


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※お読みいただきありがとうございます。感想など頂けるととても嬉しいです。
これからもぼちぼちと投稿していきますのでよろしくお願いします。
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