9 / 15
第8話 逃亡
しおりを挟む「しょうがないわね。そこまで言うなら教えてあげる!それはね...ローブを深く被って走る!それ以外ないわ!」
「誰でも思いつくわ!期待して損した!」
思わず突っ込んでしまった。エルと会うまでずっとローブを深く被っていた。その時には誰かから声をかけてくることもなかった。案外大丈夫かもしれない。一度冒険者ギルドでバレてしまって身を引いていた感じはあった。
「でも。良いかもしれないですね。どうですか?龍太郎。試す価値はあります」
「そうだなリア。それで決まりだ」
俺たちと一応エルもローブを深く被り、大通りに出てすぐさま走り出す。賑わっている商店や人通りを颯爽とかけ抜けていく。だが、1人見覚えのある奴が前にいた。そいつは冒険者ギルドで俺たちが外へ出ようとした時、扉を塞いでた奴だ。なおかつ、俺たちに嘘をつかれたこともあって、物凄く怒って探している様子だ。気づかれたらまずいので、俺たちは道の端でしゃがむようにして走る。幸いにも、俺たちに背を向けて、反対側を見ていたので、この隙を逃すまいと、さらにスピードを上げる。そして、去り際に猛ダッシュ。だが、突然そいつは振り向いた。
「おい!そこのローブを被っている奴!待て!止まらねぇーと、魔法を使うぞ!」
そんなことは出来るはずもない。ここは大通りで人通りもある。もし魔法を使えば、被害が俺たちだけでは済まなくなる。ただの脅し文句だろう。
「くそ!止まらないつもりだな。【行け、追尾鳥】!!」
右手に青い魔力を集中させ、鳥のように変形したそれを俺たちに向けて投げ放つ。
人を避け、また1人避けて俺たちに向かってくる。
すると、エルが立ち止まった。
「エル」
その姿に俺はつい呼びかけてしまう。
「このままではまともに食らってしまうわ!ここで私がどうにかしてあげる!あなた達は黙って私の勇姿を見ていなさい!」
「大丈夫なのか?」
「見縊るってもらっちゃ困るわ!私意外と強いのよ!」
青い鳥がさらに大きくなってこちらに向かってくる。先程の冒険者とはある程度の距離はあるのでこの魔法を防ぎければ逃げれそうだ。
「【暗殺術 第2幕 【殺傷】】」
エルが左の腰に携えている短剣を引き抜き、暗殺者の如く、素早く、音も立てず、静かに青い鳥をかき消した。
青い鳥に反応して、周りがガヤガヤしてきたのでそのまま俺たちは踵を返した。
家に着いた俺は早速エルに取引きした残りの聖金貨を渡した。
「これ約束のやつ」
「っっん!ありがと!これで私はあなた達の仲間!改めてよろしくね」
受け取ると、エルは満面の笑みを浮かべ、手を差し出してきた。
「あぁ。これから頼むぞ」
「私もいますよ」
俺とリアとエルは手を握り。正式に仲間になった。
お金が絡んでいる時点でどうかと思うが、その点に関しては気にしないでおこう。
「それでエル、さっきのは何だ?」
エルは先程の戦いで暗殺術というものを使っていた。気にならないわけがない。
「えーと。あれは暗殺術。暗殺者だけが使える技よ。第1幕から第10幕まであって、使える技が違ってくるわ。私は第2幕までしか使えないけど、それ以上使える暗殺者はたくさんいるわ」
「ちなみに俺とかリアは使えるのか?」
「無理よ。ある程度のレベルがないと使えないの。もし使おうとしたら体中が砕け散るわ。まぁ私はあなた達が砕け散ったって知らないけどね!多分...」
「そうか...」
レベルを上げないと使えないか、地道にやるしかないな。
「私、龍太郎のためにも頑張ります!レベル上げ頑張りましょう!」
リアが輝かしい目をして、俺を見つめてくる。
「そうだな。一緒に頑張るか」
「頑張りなさい。あなた達はまだまだ初心者なのだから。これからたくさん人を殺すのよ!ってかここの家。まさかミスレディーの家なの?」
部屋を見渡したエルは疑問を口にする。
「そうだが、なぜ知っている。もしかして暗殺依頼されていたのか?」
「そりゃーここら一帯を仕切っているのはミスレディーだったのし、それにお金持ちとして有名だしね。必然的に暗殺対象になるのは時間の問題だったわね。ただ、戦闘能力は殆ど皆無だったみたいだけど」
流石の情報力だ。もしかしたら俺がミスレディーを殺さなくても暗殺者が殺しに来たのかもしれない。まぁ、終わったことは振り返らないでおこう。
「後、一つ言いたいことがあるわ」
「何だ?」
「龍太郎はミスレディーを殺したのよね?」
「そうだが」
「だったら何で殺した相手の家に住んでいるのよ!」
「住んではない。落ち着いたらここを出ようと思っていた所だ。俺もこの家は嫌だしな」
拷問されて、なおかつ殺されかけた家に誰がいたがるのだろうか。
「落ち着いたらっって!もし誰かが訪ねてきたらどうするの!心配して衛兵がくることもあるのよ!本当信じられない!バカすぎて呆れたわ!暗殺者たるもの暗殺対象の家は証拠を消して、去るものなのよ!それかいっそのこと燃やすことね!この家はすぐさま出るのが正解だわ」
それに関しては全く考えていなかった。復讐やこの国に対する理不尽への対応で頭がいっぱいだった。エルの言っていることは正しい。ここは素直に従っておこう。
「わかった。ここを出よう。でもここら辺に宿はあるのか?」
「私が今、根城にしている所があるわ。そこへ来なさい。3人は少し窮屈かも知れないけど。そこは我慢ね」
「ありがとなエル。俺たちのことを考えてくれて」
「な、何よ。そんなこと言うなんて気持ち悪いわ。ただ、仲間だから...。当然のことよ。それに私はあなた達を導くんだから!」
「エルの助言はありがたい、本当の気持ちを言っただけだ」
「私もエルに負けずに龍太郎の役に立ちたいです!」
リアも負けじと割り込んできた。
「リアもその気持ちだけでありがたい。救われるんだ」
今まで色々あって、こんなことを言われると心の重りが軽くなるように感じる。こいつらが居れば生きていける。今はそんな風に思う。
「さて、ここでやることは済んだし、私の根城に行くわよ」
「あぁ」
そして、これから学院編が始まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※お読みいただきありがとうございます!次話からは学院編に突入するのでこれからも読んでいただけると嬉しいです!
感想待ってます!
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる