クラスごと異世界に飛ばされた俺たちはクラスの中にいる異世界人を殺さなければ元の世界に戻れない件について

神崎夜一

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第三話 殺人

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俺たちは果物や食べれそうな草を一通り取り集合場所へと戻った。集合場所にはすでに他のグループの人たちもいて見つけた場所へと案内される。
案内された場所は丁度よく皆んなが快適に暮らせるほどの広さで、周りの木々は頭上に覆い被さり、日陰になっていた。近くには湖もあり、水には困らなそうだ。

「よくこんな場所見つけたなー。でかしたぞ!」

永田が周りを見渡し言葉を発する。

「偶然でしたけど良かったですね。これで一安心です」

メガネをかけ、いかにもインテリ系と言わんばかりの顔だ。頭が良さそうだな。名前は...。

「えっと、誰だっけお前」

ど直球に永田がそいつに疑問をぶつける。俺はお前の名前も定かではないが。多分永田や他のみんなにも俺の名前は覚えられてないだろう。

「私の名前を知らないとは正直驚きました。私は新田盃です。改めてよろしくお願いします」

「そうか!よろしくな新田!」

「てかーぁー。マジでここで生活するのー?無理なんですけどー。虫とか出るし、水とか食べ物も不安しかないんですけどー?」

白石は言葉は悪いが、皆んなが疑問に思ってることを代弁して言ってくれるのは有難い。

「白石さん。ここの水は大丈夫だわ。そして果物や草も食べれないことはない」

秋姫が白石の疑問に答える。

「なんでそう言い切れるわけ?なんも確証なんてないじゃない」

「それは...なんとなく...だわ」

「話にならない。確証がないのなら出しゃばらないで」

「こいつの言う通り、ここの水や食料は安心していいよ。私はサバイバル経験者。無人島で1年生活した経験がある。だから言える。これらは大丈夫」

隅にいた涼子が姿を現し、横から口出す。

「信じられるわけがないじゃない。ねぇー皆んなもそう思うよね?」

白石の後ろにいた女子たちに賛同を求める。それに臆するかのように頷く。それだけ白石という少女はこのクラスで権力を持っていることがわかる。

「皆んなも同じだってー。信じられるわけないよね」

「勝手にしな。これ以上私は何も言わない」

そう言って涼子は端に座る。

「それに早く帰してよねー。もう疲れたんですけど!」

「それは無理なことだ。お前たちはもうここから帰るには異世界人、いや裏切り者を殺すしかないのだからな」

今まで片隅で目をつぶっていた先生が口を開いた。

「あっそー。だったら早く出てきてよ!その裏切り者」

静寂に包まれる。その問いには当然誰も答えない。

「無意味なことだ白石。お前は死んでほしいから出てきてくれと言っているようなもんだ。当然出てくれるはずは無い」

「落ち着こう白石さん。これからはじっくりと話し合うことが必要だと思うんだ。だから仮に裏切り者がいたとしても僕は殺すことは絶対にしない」

「赤司くんがそう言うなら黙ってる」

何故か白石は赤司に対しては優しさが見て取れる。

「先生一つ良いですか?」

赤司が手を挙げ、先生に質問をする。

「あぁ。なんでも聞いてくれ」

「先程も聞いたことですが、この裏切り者探しの目的を教えてもらえないでしょうか」

それは誰もが思っていたことだ。目を光らせ、先生に注目が集まる。

「良いだろう。この裏切り者探しは異分子の異世界人を殺すことだ。異世界人は非常に極悪非道だ。殺すことに快楽を覚える。だから人を殺し続けているんだ。どういうわけか私たちの世界でも異世界人からの被害もあった」

「ま、マジかよ!そんな奴がこの中にいるなんて、マジ信じられねぇーよ」

龍崎が疑いの眼差しをみんなに向ける。他の皆んなもざわつき始める。

「だったら一つ疑問が残るわ。ここは異世界なのでしょう。異世界人がそういう人ならこの世界の人たちを全員殺さないと意味がないわ」

黙って聞いていた秋姫が言葉を発する。

「それは心配ない。他の異世界人は全員殺した。日本の武力行使でな。実際に街を見れば分かることだが誰一人住んではいない。もぬけの殻だ」

「理解したわ。それで残り一人の異世界人がこのクラスに紛れているってわけね。それを私たちが見つける。そして殺す。50億もの報酬をつけるのも頷けるわ」

「あぁ。そういうことだ。別行動するよりもここにいる全員で行動した方が有益だと思わないか?白石?」

今まさに女子たちと別行動をしようとしていた白石に先生は問う。白石も思考を巡らせ、考えを改めたようだ。

「だねー。ここにいる赤司くんを除いての男子たちと一緒にいるのは苦痛だけど、別行動しても意味がないってのはよくわかった」

「なんだとぉ?白石!やるのか?」

龍崎が白石の言葉に反応して突っかかっていく。

「何よ。私は本当のことを言っただけだけどー」

「そうかよ。お前とは協力しねぇーぜ」

「それは良かった。私もそう思ってたのよね」

「二人とも冷静に。喧嘩している暇はないよ」

「なんだよ赤司!俺たちに突っかかってくんじゃねぇーよ」

「冷静にならないか?これ以上言い争っても平行線のままだよ。ならもっとクラスのみんなで話し合った方が有益なはずだよ」

「くっっ!あっそ!もういいや」

龍崎は苛立ちならが森の中へと歩き出す。

「どこ行くの龍崎くん!」

「ちょっとそこら辺を散歩してくるだけだよ!文句あんのか?」

「いや。気をつけて」

赤司は龍崎を見送り、次に皆んなに質問をする。

「まだ答えは出るはずもないと思うんだ。一先ず食事にしないかな?」

「確かにお腹空いたわ。食事にしましょう」

「赤司くんが言うならそうする」

「他の皆んなもそれで良いかな?」

「異論ねぇーぜ」
「大丈夫だよ」
「お腹空いたー」

などなど答える中で一人疑問に思った男子が手を挙げた。

「あ、あの?も、森田くんが居ないのですが」

気が弱そうなその少年は勇気を振り絞って皆んなの前で発言する。 

「そうだね。森田くんが居ないね。誰か何か知っている人はいるかな?」

森田って多分、涼子が蹴りを入れて森に置いてきた奴だよな。ここはどうするべきか。

「えーとそれは私がー」
「疲れていたから置いてきた」

俺は涼子からの発言を遮り言葉を発する。

「え?それはどういうこと?」

「そのまんまの意味だ。森田が疲れたというから置いてきた」

「ちょっとそれは酷くないかな。待ってあげようとは思わなかったのかな?」

「待つ義理もなかったからな。置いていっても大丈夫だと判断した」

「こんな森の中にたった一人に取り残されて大丈夫だと思うのか?僕だったら考えられないよ」

「だな。それは俺の判断ミスだ」

「しょうがない。みんなで手分けして探そう。皆んな協力してくれ」

赤司のお願いにクラスのほぼ全員が応じる。

「なんで私を庇ったの?ただのお節介なんだけど」

その後取り残された俺はその場に佇んでいた涼子に声をかけられていた。非常に怒ってらっしゃる。

「ただの気まぐれだ。それ以上もそれ以下もない」

「そう。だったらこれ以上私に関わらないで」

「気まぐれだ。俺が判断する」

「何それ。意味わかんない」

そう言い、森の中へと姿を消した。

まだ一人居たので声をかけてみる。

「お前は行かないのか?」

「誰かもわからない人を探すほど私はお人好しではないわ。それとあなたは誰?」

秋姫はこちらを見ず湖に目を向けていた。

「自己紹介の時に言ったはずだ。思い出せないか?」

「特に印象になかったのかしら全く覚えてないわ」

少し傷ついた。誰も俺のことは覚えていないのかもしれない。心配になってきた。

「それは酷いな。俺はー」

最後まで告げることなく秋姫の言葉に遮られる。

「いえやはり教えてもらわなくていいわ。私はあなたに興味がないもの」

「そうかよ。じゃあ俺もぼちぼち行くとするか」

「知らないわよ。勝手にしなさい」

きつい言葉を受け、俺は皆んなの後を追った。

森の中を進み、頭の片隅にある記憶を辿り森田の所へと辿り着いた。そこには他の皆んなも輪を囲むように集まり、 森田を見ていた。
俺もすぐさま歩み寄る。と、そこには血が滴り落ち、切り刻み込まれた死体がそこにあった。

「きゃーーーー!!!ひ、人が死んでるーーー!!!」

女子生徒の誰かが叫ぶ。

「や、いやーーー!!!もう無理ーーー!!!」

しゃがみこむ者、落ち込む者、吐く者、平然と見下ろす者などがいる。
皆んな慌てて顔色も悪い。

「皆んな戻ろう。事態は深刻だ」

「ふざけないでよ!もうこんなのはいや!人が死ぬなんてあり得ない!た、助けてよ!」

「お、落ち着いて、今はまた同じことが起こらないように作戦を練ることしか出来ない」

「赤司、随分落ち着いてるんじゃね?」

「龍崎くん。人を疑うなんて、ましてや赤司くんを疑うなんてほんと最低だね。違うよね赤司くん」

坂上だったと思う少女は龍崎の問いに否定し、赤司を庇う。龍崎は一足先に森の中へと消えてったはずだが、ここに辿り着いたのか。思わぬ偶然だな。

「あぁ、僕は違う。自分がまずは落ち着かないと他の人だって落ち着いてもらえないと思うし、僕だって正直困惑している。だからここはみんなで力を合わせて乗り切らないといけないと思うんだ」

「だってー。赤司くんはそう言ってるよ」

「ふん。あっそうかよ」

「わ、私は死にたくないよー」

「大丈夫だよ神田さん。皆んなで協力すれば大丈夫」

「赤司くん!」

赤司の言葉に神田は目を輝かせる。

「それで作戦は?」

龍崎が赤司に問う。

「それを今から皆んなで考えるんだよ」

赤司、それは何一つ解決していない。ただ都合のいい言葉を発言しているに過ぎない。

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「園神さん待ってー!」

奇声を発した園神という少女は死体を見て、血相変え走り出した。赤司の言葉も聞こえてないのかそのまま森の奥へと姿を消した。

「皆んなはさっきの所へ戻って!僕は園神さんを追うから!」

「わかった赤司くん。絶対に連れ戻してね」

赤司は園神を追い、姿を消した。その後俺たちも先程の所へと戻ろうと歩みを始めた。
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