小さな大魔法使いの自分探しの旅　親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章　久々のセルカーク直轄領

第六百三十二話　工房へ向かいます

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　治療後のメアリーさんの体調も確認できたし、僕はさっそく出発する準備を整えます。
　念のためにアマード子爵領兵が僕の護衛につくそうだけど、一人でも大丈夫なのになあって思っちゃいました。
　そんな僕に、グレイスさんが注意をしました。

「レオ君は、今や国を代表する貴族になったのよ。現役冒険者で宮廷魔導師であっても、身の安全を守るのは当然のことよ」

　デイジーさんとジェシカさんも、うんうんとグレイスさんの意見に激しく同意しているよ。
　何だか、僕が思っている以上に大変なことになっちゃっているよ。
　更に、移動は馬車に乗ることになりました。
　これも、グレイスさんは工房までの身の安全を考えれば当然だと言ってきました。
　僕も反論ができないので、忠告に従って馬車に乗り込んで工房まで移動しました。

　パカパカパカ。

「うわあ、懐かしい町並みです。でも、あんまり変わっていないですね」
「アオン！」

　道中馬車の窓から外を眺めていたけど、お店も特に変わっていませんでした。
　人もたくさん歩いていて、やっぱりアマード子爵領は活気があるなと感じました。
　そして、あっという間に屋敷から工房に到着しました。
　昔はいつも歩いて工房に向かっていたけど、やっぱり馬車はとっても早く着きますね。
　ではでは、さっそく工房の中に入ります。

　ガラガラ。
　とととと、ぽすっ。

「あっ、新しいにーにだ！」

　工房の中に入ったら、いきなり小さな男の子が僕に抱きついて来ました。
　でも、この特徴的な青色の髪色ってもしかして。
　すると、若い女性が僕のところにやってきました。
　あの髪色は、間違いなくあの人だね。

「こんにちは、アクアさん。お久しぶりです」
「ああ、やっぱりレオ君なのね。お久しぶりね。ケリーがいきなり抱きついちゃってごめんなさいね」
「うん？」

　アクアさんは、ニコリとしながら僕の頭を撫でてくれました。
　そして、ひょいとケリーちゃんを抱っこします。

「ケリー、このお兄ちゃんが昔工房を手伝ってくれたのよ」
「そーなんだ！」

　僕が工房を手伝っていた頃は、ケリーちゃんはまだ小さな赤ちゃんだったもんね。
　僕のことを見てとても喜んでいるけど、とっても活発な男の子に成長したんだね。
　すると、工房の職人さんも僕のところに集まってきました。

「おお、レオじゃないか。大きくなったな」
「あの小さなレオが、今じゃ王国を代表する魔法使いだもんな」
「立派な服を着ていて、本当に貴族になったんだな」

　職人さんは、みんなニコニコしながら僕の頭を撫でたり肩をポンポンとしてきました。
　僕も、久々に職人さんに会えてとっても嬉しいです。
　そのまま、工房内にある炉のところに向かいました。

　ガキン、ガキン！

　すると、そこでは親方さんとドモンさんが真剣な表情をしながら剣を打っていました。
　ものすごい気迫に引き込まれちゃって、僕は黙って見ていました。

「レオがアマード子爵領に来るって知ってから、みんなで剣を作ってやろうと準備をしていたんだ」
「既に鞘とかは出来ているから、刀身をミスリルで打ち直せば良いだけだぞ」
「レオには、色々と世話になったからな。このくらいやって当然だって、みんな思っているぞ」

　職人さんが口々に色々なことを教えてくれたけど、既に色々準備をしてくれていたなんてとっても嬉しいですね。
　そんなことを思っていたら、もう一人お世話になった人が姿を現しました。

「おや、レオじゃないか。随分大きくなったねえ」
「あぶー」

　フローネさんが、小さな赤ちゃんを抱きながら僕のところにやってきました。
　髪色を見ると、ドモンさんと同じ色に見えるね。
　えーっと、もしかして。

「フローネさん、この赤ちゃんはもしかしてドモンさんとアクアさんの子どもですか？」
「そうだよ、可愛い女の子だよ」
「ぶぶー」

　おお、ケリーちゃんに妹ができていたんだね。
　とっても元気そうな赤ちゃんだけど、ちょっと疑問に思うことが。

「アクアさん、赤ちゃんの子育ての間ってどうしていたんですか？」
「あっ、やっぱりレオ君も気になるのね。大丈夫よ、代わりの魔法使いが頑張ってくれているのよ」

　うーん、なんだかアクアさんだけじゃなく他の人もニヤニヤとしているよ。
　アクアさんの言う代わりの魔法使いって誰だろうって思ったら、僕も思いがけない人が姿を現しました。

「あっ、ナナさん！　ナナさんが、工房のお手伝いをしていたんですね」
「レオ君、久しぶりね。随分とおおきくなったわね」

　コバルトブルーレイク直轄領で出会った、僕の初めての魔法使いの弟子のナナさんがひょっこりと姿を現しました。
　更に、ユマさんとハナさんも一緒にいますね。

「私たち、あれからアマード子爵領を拠点にして活動しているのよ。その流れで、工房の手伝いをしているの」
「ナナさんはレオ君が指導しただけあって、基礎がしっかりとしていたわ。私から見ても、とてもいい魔法使いだと思うわ」

　おお、ナナさんもアクアさんから高評価をもらっていたんですね。
　僕と別れた後もずっと修行していたみたいだし、今じゃ凄い魔法使いになっているかもしれないね。

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