小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章 久々のセルカーク直轄領

第六百二十五話 アマード子爵領へ出発します

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 いよいよ、セルカーク直轄領を出発する朝となった。
 僕は、いつもよりも早めに起きて出発する準備を整えます。
 訓練も手短に終えて、泊まっていた部屋も生活魔法で綺麗にします。

「レオ様、あまりやり過ぎるとこの屋敷にいる使用人の仕事がなくなりますが……」

 ジェシカさんが僕に注意してきたけど、そういえば前にも似たような話があったっけ。
 でも、僕としては次の人に気持ちよく借りて欲しいって思いがあるんだよね。
 これで、準備完了なので朝食を食べに行きました。

「泊めて頂き、ありがとうございます」
「いやいや、礼には及ばないよ。道中気をつけて」

 代官に挨拶をしたら、僕たちは教会に向かいます。
 両親のお墓に、出発の挨拶をするためです。
 護衛としてセレンお姉さんたちも来てくれたけど、道中は言葉少なめです。
 そして、暫く歩くと無事に教会に到着しました。
 そのまま、合同墓地に向かいます。

「……」

 僕は、合同墓地の前で膝をついて手を組みます。
 両親のいい思い出はないけど、それでも僕を産んでくれてありがとうと言います。
 そして、僕は前に進みますと報告します。
 時間にして三十秒足らずだけど、それでも気持ちの切り替えは十分にできました。

「レオ君、もういいの?」

 立ち上がった僕に、セレンお姉さんがちょっと心配そうに話しかけてくれました。
 でも、僕はもう大丈夫です。

「両親のことは忘れられないと思いますけど、もう大丈夫です」
「そう、それなら良いわ」

 セレンお姉さんも、余計なことを言わずに僕の頭を撫でてくれました。
 深呼吸を一つして、うん、これで大丈夫です。
 そして、教会に寄ってシルバー司祭様に挨拶に行きました。

「いよいよ、出発か。レオ君ならきっとこの先も大丈夫じゃ、体に気をつけるのじゃよ」

 シルバー司祭様だけでなく、シスターさんとも握手をして挨拶をしました。
 共同墓地の管理をお願いしますというと、任せろと言ってくれました。
 さあ、守備隊の施設に向かいましょう。

「レオ、話は済んだか?」

 守備隊の施設に着くと、守備隊長さんが僕に話しかけてきました。
 僕が両親のお墓に行くと知っていたみたいですね。

「はい、全部終わりました」
「そうか」

 僕が短く答えると、守備隊長さんも満足そうに頷いていました。
 そして、僕は集まっている人に挨拶をしました。

「私たち、半年後に王都に研修に行く予定になったわ」
「だから、新年になったらまた会えるわ」

 マヤさんとセラさんがニコリとしながら僕に話をしてくれたけど、また会えるのはとっても嬉しいですね。
 王都で会えることを、とても楽しみにしています。

「セレンお姉さん、ナナリーお姉さん、カエラお姉さん、本当に色々お世話になりました」
「私たちも、レオ君に会えて本当に良かったわ」
「私たちも、レオ君に会えたことで成長することができたのよ」
「レオ君、元気でいてね」

 僕は、三人のお姉さんにギュッとハグをしました。
 セレンお姉さんたちに会えなければ、僕は間違いなく死んでいたと思います。
 守備隊の人たちは、間違いなく僕の命の恩人です。
 そして、僕はスキンヘッドの人に力強く宣言しました。

「今度こそ、水虫を治療出来る立派な魔法使いになります!」
「おい、その宣言はいらねーぞ!」
「「「ははは!」」」

 スキンヘッドの人が顔を真っ赤にしながら僕に文句を言っているけど、ガンドフさんの膝も治療できたし改めて新たな僕の目標となりました。
 誰に何と言われようとも、こればかりは譲れません。
 僕は、ふんすっとやる気を見せました。

「レオ、道中気を付けてな」
「また、大きな成果を楽しみにしているよ」
「レオ君、体に気を付けてな」

 ギルドマスター、ガンドフさん、シェリーさんも、見送りに駆けつけてくれました。
 握手をして、それから馬車に乗り込みました。
 すると、町の人もたくさん駆けつけてくれました。
 僕は、馬車の窓から顔を出します。

「皆さん、いってきまーす!」
「気を付けて行ってこいよ」
「元気でな!」

 たくさんの人の見送りを受けながら、僕を乗せた馬車はゆっくりと動き出しました。
 前回セルカーク直轄領を出発した時はとても慌ただしかったけど、今日は多くの人に挨拶しながらの出発です。
 またセルカーク直轄領に来るかは分からないけど、それでもここが僕の故郷だと改めて思いました。
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