小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章 久々のセルカーク直轄領

第六百十三話 まとめて治療します

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 午後も僕たちは、列に並んでいる人たちの治療をします。
 シロちゃんたちも、頑張って治療しています。
 すると、治療を再開してから一時間経ったタイミングで出張治療に行っていた面々が教会に戻ってきました。

「ジェシカさん、ユキちゃん、ピーちゃん、おかえりなさい」
「ただいま戻りました」
「アオン!」
「ピィ!」

 みんなとてもいい表情をしているのが、いい成果の証拠ですね。
 昼食を食べていないかなと思ったら、実は治療した先で簡単なものを頂いたそうです。
 ちなみに、レオの侍従は美人でいいなあと言われたところもあったそうです。
 ジェシカさんはとっても美人だから、町の人に褒められるのは当然だよね。
 そして、ジェシカさんと息ぴったりのユキちゃんの治療もバッチリで、ピーちゃんもみんなをしっかり護衛したそうです。
 少し休憩してもらってから、治療に加わって貰いました。

「僕たちの魔力はまだあるんですけど、今日はいつまで治療を続けますか?」

 ちょうどシルバ司祭様が近くを通ったので、今日の予定を聞いてみました。
 すると、シルバ司祭様は目の前の人の列を見てある提案をしました。

「うーん、このままではいつになっても治療を終えることができぬ。レオ君の負担になるかもじゃが、広範囲回復魔法を使って一気に治療したほうがよさそうじゃのう」

 実は、まだまだ外には人がたくさん並んでいます。
 でも、僕のエリアヒールなら中等症まで一気に治療しちゃいます。
 重症患者はいないみたいなので、さっそくシルバ司祭様の提案を受けることになりました。

「はい、順に入って下さい」
「長椅子に座って下さいね」
「慌てなくても大丈夫ですよ」

 セレンお姉さんたちにも手伝って貰いながら、どんどんと教会内に人が入っていきます。
 先ずは長椅子に座れるだけだというけど、壁際に立っている人もいますね。
 でも、このくらいなら全然大丈夫です。
 既に魔力を溜めているので、さっそくエリアヒールを使います。

 シュイン、シュイン、シュイン。

「おお、黒髪の天使様の周囲にたくさんの魔法陣が……」
「いったい、どんな魔法を使われるのだろうか……」

 教会内にいる人がざわざわとしているけど、僕としては普通に魔法発動の準備をしているだけです。
 範囲指定も問題ないし、エリアヒールを使いましょう。

 シュイン、シュイン、ぴかー!

「な、なんという光なのだろうか……」
「黒髪の天使様が、輝いているぞ」

 教会内を照らす回復魔法の光に、またもや多くの人がざわざわとしていました。
 手応えはバッチリだったけど、治療はうまくいったかな。

「ふう、これでこの教会内にいる人は全員治療しました」
「おお、これがレオ君の広範囲回復魔法なのか! 儂の腰痛まで治ってしまったぞ!」

 えっと、何故かシルバ司祭様まで僕の肩を掴みながら大興奮しているけど、取り敢えず効果はあったみたいですね。
 一方で教会内にいる人は、自身に起きた変化に驚きを隠せませんでした。

「ほ、本当に体の不調が治ったぞ!」
「まさか、本当この教会内にいる人を全員治療したのか……」
「黒髪の天使様の魔法は、とんでもないものだぞ……」

 次のエリアヒールの準備をしないといけないけど、奇跡だといって僕のことを拝んでいる年配の人が多数いました。
 え、えっと、僕は普通にエリアヒールを使っただけですよ。
 すると、セレンお姉さんが呆れた表情で僕に話しかけてきました。

「あのね、レオ君の魔力がとんでもないだけで、普通エリアヒールって周囲にいる十人も治療できればいいのよ」
「えっ、そうなんですか?! 僕、普通にこのくらいの人数の治療をしていました。治療施設丸ごとエリアヒールを使ったこともありましたけど……」
「報告は聞いていたけど、本当にやったのね。まあ、レオ君だからってことにしておきましょう」

 何だか呆れるような表情を、ナナリーお姉さんとカエラお姉さんもしています。
 聖職者の皆さんは、信じられないものを見たといった表情ですね。
 でも、エリアヒールならシロちゃんとユキちゃんもできるから、僕にとっては普通かなって思っていました。
 そして、涙を流しながら僕と握手をしている人もいました。
 だから、僕は普通の魔法使いですよ。
 天使様に出会えたって、そんなことはないですよ。
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