小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百九十二話 急ぎで治療します

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 旅も七日目です。
 今日は、道中の中継点でもある子爵領に到着する予定です。
 でも、子爵への挨拶は部隊長さんがするので僕は何もしなくていいそうです。
 僕は要請があった時だけでいいので、その辺は気楽ですね。

「ですので、レオ様は他のことを気にすることなく勉学にお励み下さいませ」

 ジェシカさんが、ここぞと言わんばかりに僕に勉強するように言ってきました。
 主に意見できる侍従って貴重だよと部隊長さんが言ったけど、僕はジェシカさんの意見に反対したことってないと思うよ。
 そんなことを思いながら、今日も勉強を続けます。

「ワフワフ……」
「ピィ」

 今日は周囲の危険も少ないので、シロちゃんたちも馬車の中で勉強中です。
 本当にシロちゃんは、みんなに勉強を教えるのが得意ですね。
 ちょっとユキちゃんとピーちゃんが羨ましいなと思いながら、冒険者学校入学試験用の本を読みます。
 そして、最初に勉強した時よりも二回目の方が頭に入りやすいですね。
 繰り返し勉強するのって、とっても大切です。
 こんな感じで、今日も夕方前には宿に無事に到着しました。

「うーん、勉強ばっかりしていてちょっと疲れたなあ」
「ワフー」
「ピー」

 ちょっと背伸びをすると、勉強していた面々も思い思いにストレッチしていました。
 シロちゃんもくねくね動いていて可愛いなと思っていたら、子爵家の屋敷に行っていた部隊長さんが戻って来ました。
 何かあったのかなと思ったら、僕に用事があるそうです。

「子爵から、高齢の母親を治療して欲しいと言われた。もちろん、タダではなくキチンと指名依頼として処理するそうだ」

 おっと、これは急ぎの依頼ですね。
 風邪みたいな症状が長引いていて、あまり良くないそうです。
 僕たちは、ぱぱっと準備を整えて部隊長さんと一緒に馬車に乗り込みました。
 子爵の屋敷に着くと既に話が通っているので、真っ先に子爵のお母さんの部屋に案内されました。
 すると、白髪の多い痩せている女性がベッドで寝込んでいました。
 でも、ちょっと部屋の中が汚れていて空気も良くないですね。
 ジェシカさんも、直ぐにその事に気が付きました。

「じゃあ、先ずは部屋の中を生活魔法で浄化しますね」
「レオ様、宜しくお願いします。私は、窓を開けて部屋の中を掃除します」

 シュイン、ぴかー。

 ここは分担して動かないと。
 部屋の中を浄化し終えた僕たちは、そのままお婆さんの治療を始めます。
 その間に、ジェシカさんが気になったところを掃除していきます。
 桶にユキちゃんの水魔法で作った水を入れて、拭き掃除を始めました。
 では、僕とシロちゃんはお婆さんの治療をしちゃいましょう。

 シュイン、ぴかー!

「ふう、これで大丈夫です。胸のあたりだけじゃなくて、お腹も悪かったです。じゃあ、僕もお掃除のお手伝いをします」
「では、私が子爵を呼んでこよう」

 部隊長さんが子爵を呼んでくる間に、僕たちは部屋をピカピカにしました。
 国境にいる際に、環境が悪いところにいると病気が増えるって教わったもんね。
 そして部隊長さんが中年男性を連れていたけど、この人が子爵なんだ。

「やはりそうか。軍でも清潔にすることを勧めているのか。私もそんなことを思っていたが、母は別に関係ないと言っていたので最低限の清掃にしていたのだ」

 子爵は少し悔いていたけど、当のお母さんが言っていたのなら強く言えないもんね。
 でも、軍も清潔にすることを勧めているということが分かれば、説明するのも問題ないですね。
 今は呼吸も安定していてぐっすりと寝ているから、明日起きた時に詳しく説明するそうです。

「レオ君も国境で清潔にしていたという話をすれば、母も納得するだろう。なにせ、母はレオ君のファンだからな」
「えっ、そうなんですか? ファンって言ってくれて、とても嬉しいです」
「小さいのに頑張っているところが凄いと、常日頃言っていた。実際に会うと、可愛らしい小さな男の子だがな」

 子爵が豪快に笑っているけど、褒めてくれたのはとっても嬉しいね。
 すると、ジェシカさんがこんなことを言っていました。

「レオ様、期待に応えるためにも勉学に励まないとなりませんと」
「ジェシカさん、僕、今の勉強で精一杯です……」
「レオ様なら大丈夫です。きっと、もっと難しい勉強もこなせます」

 うん、これ以上頑張るのは流石に無理ですよ。
 部隊長さんが僕が上級官僚試験レベルの勉強をしていると子爵に言うと、それは凄いと言われちゃいました。
 実際に本を見せると、これは領地統治にも使えるからと子爵に言われちゃいました。
 そもそも、僕は法衣男爵で領地経営しているわけじゃないもんね。
 こうして無事に治療を終えた僕たちは、馬車に乗って宿に戻りました。
 そういえば、部隊長さんが兵に掃除をもっとやらせると言っていたような。
 僕も、掃除はまだまだ上手くできないですよ。
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