小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百八十四話 ジェシカさん大激怒

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 無事に昼食も終わり、全員で後片付けをして旅を再開します。
 ちょっと調子を落としていた兵も、美味しいご飯を食べて元気になりました。
 お馬さんたちも、ユキちゃんの治療もあってかとてもご機嫌です。

「ふしゅー、ふしゅー」

 そのユキちゃんは、お腹がいっぱいになったのでジェシカさんの膝を借りてお昼寝をしています。
 ピーちゃんも反対の膝を借りてお昼寝しているけど、今日は日差しがとっても気持ちいいですね。
 僕は、周囲の探索を続けながら冒険者学校に入るための勉強を続けています。
 久々に集中して勉強できるので、教科書も随分と進みました。
 シロちゃんも、別の本を読んでいますね。
 道中は何事もなく、夕方前に無事に男爵領にある軍の小さな駐屯地に到着しました。
 小さなお屋敷って感じの建物ですね。
 すると、何故か駐屯地内がドタバタしていました。
 何があったのかなと、部隊長さんが聞いてみました。

「おい、何が起きている?」
「その、料理担当がお腹を壊しまして。治療と今夜の夕食をどうするか対応していまして……」

 えー!
 まさかの料理担当が腹痛だなんて。
 でも、ここは僕の出番だよ。
 ジェシカさんとシロちゃんが厨房に向かったんだけど、その間に僕は医務室に向かいました。

 シュイン、ぴかー。

「これで良くなりましたよ。病気で腹痛じゃなくて、悪いものを食べて腹痛になっていましたよ」
「その、食材がちょっと傷んでいたのかもしれません……」

 医務室で、料理担当の兵が理由を話してくれました。
 料理担当は当番制で、この日は腹痛を起こしていた兵が担当だったそうです。
 食材からなんか変な臭いがしたので試食したら、たちまちお腹が痛くなったそうです。
 となると、今晩の食事は僕たちが持っている食料で作った方が良さそうだね。
 食料はたくさん持ってきたし、使っても全然大丈夫です。
 ということで、みんなで厨房兼食堂に向かいました。
 そこには、一見するととてもいい笑顔だけど、実際には怒気を垂れ流しているジェシカさんの姿がありました。

「ふふふ、こんなに汚れていればお腹を壊すのも当たり前です。いったい食料管理はどうなっているのでしょうか? そして、そんな状況で作った食事をレオ様に食べさせようとしたのですね……」
「「「ヒィィィ……」」」

 なんというか、原因が分かりました。
 厨房もそうだけど、食堂も結構汚れていました。
 食料管理も適当だったみたいです。
 ここの駐屯地の指揮官がジェシカさんにペコペコしつつ、兵全員で大清掃をしていました。
 そして、料理は何故かシロちゃんが作ってくれました。
 部隊長さん曰く、これでは怒られても仕方ないレベルだそうです。
 最近なにも事件が起きていなかったので、完全に気が緩んでいました。
 そして、僕が生活魔法で駐屯地を綺麗にしようとしたら、ジェシカさんがニコリとして駄目ですよと言ってきました。
 はい、絶対に逆らいません。

「健全な環境、適切な食事、適度な訓練、これがなければ健全な体は作れません。国を守るべき軍がこの体たらくでは駄目です」
「全くもって、仰る通りで……」
「レオ様も、国境にいる際に兵の士気を高めるのに適切な環境が必要だったと言っておられました。ここは、いったいどうなっているのでしょうか?」
「あの、その……」

 ジェシカさんがニコリとしながら正座している駐屯地の指揮官を説教しているけど、部隊長さんはいい機会だからそのままにしておけと言っていました。
 だらけると駄目になる典型例だそうです。
 そして、姿が見えないユキちゃんとピーちゃんは、一緒に来た部隊兵とともに生活魔法でシーツとかを綺麗にしているそうです。
 部隊長さんからありのままを伝えていいと言われたので、僕は通信用魔導具でありのままを一斉送信しました。
 すると、軍務大臣のブランドルさんを始めとする面々が大激怒していました。
 直ぐに対応すると返信があったけど、下手をすれば明日第一師団の施設から兵がやってくるかもね。
 部隊長さんから見てもこれは駄目だそうで、しかもこの駐屯地の指揮官よりも部隊長さんの方が立場が上だそうです。
 そして、おもむろに部隊長さんもジェシカさんの隣に移動しました。

「各駐屯地は、有事の際には直ぐに動かなければならない。ただ、惰性的に日々の任務をこなしていれば良いわけではない。それなのに、最低限の管理もできていないとはいったいどういうことだ!」
「弁解の余地もございません……」

 こうして、更に説教が続くことになりました。
 その横で誰も喋ることなくシーンとしながらシロちゃんの作ってくれた夕食を食べたけど、あまりにも気まずくて味が良く分かりませんでした。
 食堂内では、食器のカチャカチャとする音と説教が聞こえていました。
 そして、お風呂のタイミングでようやくジェシカさんが戻ってきましたけど、僕は声をかけることができませんでした。
 寝る時も一緒だったけど、説教で疲れちゃったのかジェシカさんは直ぐに寝ちゃいました。
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