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第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百八十三話 いよいよ出発

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 翌朝、僕たちは軍の迎えの馬車に乗るためにバーボルド伯爵家の屋敷の玄関前に集まりました。
 ネストさんとイストワールさんが、僕たちを見送ってくれます。

「一晩お世話になりました」
「気をつけてな、帰りにまた会おう」
「どんなことがあったか、話を聞くのを楽しみにしているわ」

 僕たちは、ネストさんとイストワールさんと握手して馬車に乗り込みました。
 お互いに姿が見えなくなるまで手を振っていたけど、あっという間に軍の基地に到着しました。
 出発する面々がグラウンドで待っているので、僕たちも事務棟前で馬車を降りてグラウンドに向かいました。

「マイスター師団長さん、遅くなってごめんなさい」
「いやいや、まだ出発前だから気にしなくていいよ」

 ちょうどこれから出発部隊に訓示を行うところで、僕も出発部隊のところに並びました。
 そうしたら、僕はここだとマイスター師団長さんが自分の隣を指さしています。
 うーん、僕は兵の隣でいいのになって一瞬思っちゃいました。

「セルカーク直轄領に向かう諸君、道中は何があるかわからないので細心の注意を払うように。体調不良になったら、遠慮なくレオ君に言うように。我慢して悪化してからでは遅いぞ」

 普通は治療班が同行するけど、今回は僕がいるから大丈夫です。
 シロちゃんとユキちゃんもいるし、何かあっても大丈夫です。
 ピーちゃんも、道中は周囲の監視をしてくれます。

「今回は、レオ君に通信用魔導具を持たせている。何かあったら、直ぐに連絡するように」
「「「はっ」」」

 昨晩、念の為に通信用魔導具の使い方を教えて貰ったんだよね。
 テスト通信も行ったけど、ギルバートさんに連絡したらクリスちゃんとマヤちゃんが寂しがっているって返信があったっけ。
 テストもバッチリだったし、ピーちゃんが魔石に魔力充填もしています。
 そして、準備ができたので騎馬隊と馬車に乗り込む面々に分かれます。
 僕は馬車だけど別の馬車にも乗り込む兵がいて、十二人くらいが騎馬隊です。

「それでは、行ってまいります」
「うむ、気をつけてな」

 騎馬に乗っている今回の部隊長さんが、ヘンリーさんに挨拶をしました。
 でも、立場的には宮廷魔導師の方が上なんだって。
 うーん、軍の階級ってよく分からないなあ。
 なにはともあれ、いよいよ出発です。
 僕たちも、マイスター師団長さんやバッツさんたちに手を振ります。
 あっ、そうだ。
 無事出発したって、関係各所に連絡しないと。
 ぼちぼちっと。

 ポチッ。

「あっ、やっちゃった……」

 あー!
 間違えて、連絡先に乗っている人全員に送る「一斉送信」を押しちゃったよ!
 慌てて、間違えて一斉送信を押しちゃったと謝りの連絡を送りました。
 すると、ポコポコと返信がありました。
 全く問題ないとか、気をつけてとか、とても優しい返信ばかりでした。
 しかも、最新の通信用魔導具テストも兼ねているからと、何と陛下から定時連絡は一斉送信でいいと言われちゃいました。
 ということで、朝と夕方の定時連絡は一斉送信で送ることになりました。
 さて、連絡も終わったので、僕は魔法袋から本を取り出して冒険者学校の入学テスト勉強を始めます。
 ユキちゃんとピーちゃんには、シロちゃんとジェシカさんが勉強を教えています。
 二匹とも、とっても真剣に聞いていますね。
 因みに、主要街道なので軍が定期的に害獣駆除をしているらしく、周囲に森がないのもあってかとても安全に進んでいます。
 時々探索魔法を使ったりピーちゃんが偵察してくれるけど、周囲に危険はありません。
 無事に、昼食を作る予定の野営地に到着しました。
 街道には野営ができる場所が所々にあって、歩いている人はここでテントを建てて泊まるそうです。

「アオン!」
「ヒヒーン」

 ユキちゃんが、騎馬や馬車を引く馬に挨拶しつつ怪我の治療をしています。
 お馬さんとお話出来るって凄いよね。
 その間に、僕は水魔法を使って作った水を桶に入れます。
 馬に飲ませる用と、兵が飲むようです。
 兵が馬に飼い葉を食べさせたり足元のチェックをしている間に、僕とシロちゃんとジェシカさんで料理を作ります。
 今日は、簡単に野菜炒めとスープにします。
 魔法袋から、道具と食材を取り出してっと。

 トントントン。

「凄い、レオ君は料理も上手いんだ」
「俺たちも手伝うぞ、何もしない訳には行かないぞ」

 シロちゃんは魔法で野菜を切るけど、僕とジェシカさんは普通に包丁で野菜とお肉を切ります。
 うん、意外とジェシカさんは鬼教官ですね。
 兵に、料理の作り方をビシバシと指導しています。
 ジェシカさんは、やる時はやる出来るメイドさんですね。
 とってもカッコいいです!
 出来上がったら、順に食べていきます。

「お、美味しい……」
「俺にこんな料理ができるのかな……」

 あれ?
 何故か、僕たちの作った料理を食べた兵が落ち込んでいるよ。
 僕でも料理ができるんだから、きっと大丈夫ですよ。
 見守っていた部隊長さんも、思わずため息をついちゃったよ。

「レオ様、お任せ下さい。マイスター師団長様より、兵をビシバシ指導してくれて頼まれておりますので」

 おお、ジェシカさんはやる気満々だよ。
 昨日のパーティーの時に、マイスター師団長さんから料理を教えてと頼まれたんだって。
 それに比例して、兵の表情が青くなったよ。
 大丈夫、きっと大丈夫ですよ。
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