小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
460 / 584
第八章 帝国との紛争

第五百五十五話 会談と悲しい事実

しおりを挟む
 そして、ブラウニー伯爵とハーデスさんの予想通りに、暫くしたら帝国側に大きな動きがありました。
 ぴったり二週間後なので、本当に凄いですね。

「帝国側が会談をしたいと言ってきた。場所は、王国と帝国の国境付近に設けるという。罠の可能性もあるが、話を聞く姿勢をみせるのは良いことだ」

 今朝早く、帝国兵が書状を持ってきたらしい。
 ハーデスさんも確認したけど、内容はきちんとしたものだったらしい。
 会談予定日は二日後で、それこそ護衛も連れてきていいらしい。

「会談には、私とアイリーンが出る。ブラウニー伯爵には、何かあった際のために基地に残ってもらうことになった」
「この基地の責任者はハーデスだから、俺がしゃしゃり出るとおかしいことになる。持ち帰った話の確認は、お互いにするけどな」

 こうして、少しだけど帝国と王国で話が進むことになりました。
 もちろん僕は参加できないので、難しい話はブラウニー伯爵とハーデスさんにお任せです。
 念の為にシロちゃんとピーちゃんの偵察を続けたけど、今のところ戦闘が始まる様子はないそうです。
 とはいえまだ帝国と停戦している訳じゃないので、兵も警戒を続けます。
 そして、アイリーンさんがあるお願いをしました。

「念の為に、シロちゃんを連れていきたいの。荷物の中に隠れてもらうことになるけど、万が一に備えるってためね」

 アイリーンさんのお願いに、シロちゃんもやる気満々で答えていました。
 こうして準備を進めて、いよいよ会談が行われる日になりました。
 ハーデスさんは正装の軍服で、アイリーンさんも宮廷魔導師の制服を着ています。
 アイリーンさんはマントを羽織っているので、シロちゃんもその中に隠れることになりました。
 事務担当とともに屈強な兵が護衛につくらしく、これで安全は大丈夫ですね。

「では、行ってくる。後を任せた」
「「「はっ」」」

 ハーデスさんたちを、たくさんの兵とともに見送りました。
 こうして、王国と帝国の軍の偉い人の話し合いが始まりました。
 会談の間、僕はいつも通りレンガ作りを行っていました。

「今日一日で全てが決まるわけがない。こういうのは、素案を決めてお互いに詰めていくことになる」
「まあ、停戦だけなら直ぐに合意できるだろう。問題になるのは、捕虜の交換とかだ。捕虜の扱い一つで、再び戦闘になるだろう」

 王国兵は、最初の奇襲を受けた際に複数の捕虜が発生したという。
 それ以外は捕虜は発生していないけど、代わりに帝国兵はたくさん捕虜が発生している。
 しかし、聴取はあったけど虐待は一切行われていない。
 逆に、帝国兵の捕虜は待遇がいいと言っていました。

「逆を考えると、王国兵の捕虜がまともな待遇を受けているとは思えない」
「捕虜を優遇すれば、自分の兵の不満が爆発するからな。正規兵じゃなくて、スラム街の住民を使ったほどだ」

 兵も、捕虜のことを考えるととても気が重いという。
 僕も、無事でいてくれればと願うばかりです。
 しかし、とても残念なことが起きていたのでした。
 夕方になって会談が終わったタイミングで、急いで来てくれと呼ばれました。
 すると、治療部屋には痩せ細った人や手足を失った人が運び込まれていました。
 あまりの凄惨さに、僕だけでなく駆けつけた兵も言葉を失ってしまいました。

「取り敢えずエリアヒールで纏めて治療してから、個別に治療します」

 僕は、ユキちゃんと一緒に魔力を溜め始めました。
 ユキちゃんも、とても悲しそうな表情をしていました。

 シュイン、ぴかー!

 部屋を包み込む広範囲回復魔法が効いたのか、部屋に響いていた苦しそうなうめき声はなくなりました。
 ここからは、治療班の人とともに個別に治療していきます。
 なんとか治療はうまくいったのですけど、シロちゃんはまだ帰ってきていないので手足の再生までできません。
 シロちゃんだけでなくアイリーンさんもまだ帰ってきていない理由は、ハーデスさんが教えてくれました。

「実は、ここに連れてくるのも危険な捕虜がいて、治療してから連れて来ることになった。しかし、命があるだけまだマシなのかもしれない。半分近くが命を失っていた」
「「「そんな……」」」

 僕だけでなく、治療班も兵も絶句しちゃいました。
 捕虜が半分以上死ぬなんて、普通じゃありえないそうです。
 そして、ハーデスさんが落ち込む兵にあることを指示しました。

「あるだけ担架を持ってこい。運ばないといけないものがたくさんいる。死を悼むことも大切だが、今は目の前で苦しんでいる兵を救わないとならない」
「行くぞ! 直ぐに行くぞ」
「担架は兵舎にあるぞ。待機兵も連れて行くぞ」
「ここにも、ベッドを追加で出すぞ。手が空いているものに声をかけろ!」

 悲しさを堪えるかのように、兵が一斉に動き出しました。
 まだやることはたくさんある、そう声にしていました。
 もちろん、僕たちにもやることはたくさんあります。
 今一度、気持ちを落ち着かせて準備を進めました。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。