小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第八章 帝国との紛争

第五百五十一話 国境の基地での新年

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 そして、国境の軍事施設で新年を迎えることになった。
 ここに来た時に若干覚悟していたとはいえ、本当に新年を超えるとは思わなかった。
 せっかくなので、エラさんが新年仕様の少し豪華な料理を作ってくれた。

「こうして、皆と無事に新年を迎えられたことを感謝する。帝国側の襲撃から始まった一連の戦闘だが、いつ停戦になるかはまだ不透明だ。緊張が続く任務だが、諸君らの働きがあったからこそ国民は平穏に暮らせるのだ」

 警戒している兵を除いた面々が食堂に集まり、ブラウニー伯爵の念頭の挨拶を聞いています。
 この後戦闘があるかもしれないので、お酒は手にしていません。
 それでも、新年だからか和やかな雰囲気になっています。

「それでは、乾杯とする。乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」

 ジュースでの乾杯だけど、兵はとても良い笑顔です。
 美味しい料理も出てきていて、一斉に頬張っています。
 捕虜にも、ささやかながら新年の料理が出されるそうです。
 僕も、治療班の人と一緒に料理を堪能しています。

「エラさんは、本当に料理が上手ですよね!」
「おばちゃんは、普通の料理人よりも上手だよ。だから、この前線基地を胃袋から支えているのよ」

 アイリーンさん曰く、美味しい料理があるのも戦意維持の秘訣らしいです。
 確かに、キツイ現場でマズい料理だけ出てくるとやる気がなくなるよね。
 だからこそ、エラさんの影響力は大きいんだ。
 当のエラさんは偉い人の席に混じっていて、逆に偉い人の方が緊張しているよ。
 ブラウニー伯爵なんかは、何でエラさんがここにいるのって表情をしています。

「みんなも、料理美味しい?」
「アン!」
「ピィ!」

 シロちゃん、ユキちゃん、ピーちゃんにも、美味しい料理を出してくれました。
 普段とっても活躍しているご褒美だそうです。
 間違いなくこの基地が平和なのも、みんなのお陰だもんね。
 そんなワイワイとした時間もあっという間に過ぎていったんだけど、ここでちょっとした事件が発生しました。

 ちょんちょん。

「うん? シロちゃん、どうしたの?」

 片付けをしようとしたら、シロちゃんが触手で僕のことをちょんちょんとしてきました。
 何かなって話を聞いたら、びっくりすることが。

「えっ? 偵察に来ているのがいるって!?」

 ガタッ。

 思わず僕が大きな声を出しちゃったので、兵が一斉に立ち上がりました。
 まさか、新年から偵察にくるなんてと思っていたみたいです。
 僕も、直ぐに探索魔法を使いました。

 シュイーン、ぴかー。

「あっ、建物の周囲に四人潜んでいます」
「新年最初のお客様って訳だな」
「じゃあ、さっさと捕まえるか」

 僕が大体の場所を教えると、美味しい料理を食べてやる気満々の兵が一斉に向かいました。
 そして、僅か五分で全員捕まえました。
 念の為に、もう一回探索魔法をかけても大丈夫でした。
 すると、エラさんは四人分の料理を準備しました。

「ほら、キチンと供述したなら食べさせてやりな。今日は新年だからな」
「ははは、これはいいな。流石はおばちゃんだ」
「目の前に美味しい料理を置いて聴取するなんて、相手はたまったもんじゃないな」

 エラさんは、帝国兵にも配慮しているんだね。
 今日が新年ってのもあるけど、こういう日くらいはゆっくりとさせてあげたいはずだ。
 逆に言うと、それだけ帝国側が追い詰められている証拠です。
 こうして、それ以外は特にトラブルもなく新年は過ぎていきました。
 しかし、新年が過ぎたタイミングで残念なことが判明してしまいました。
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