小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第八章 帝国との紛争

第五百三十八話 戦況と兵の治療

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 そして、ハーデスさんは現在の戦況を教えてくれました。

「王国と帝国の国境には盆地があって、そこが主戦場となっている。帝国側の奇襲があったが、王国側を攻め崩せなかったので一旦戦況が落ち着いている。王国側は多数の怪我人が発生したが、何とか抑えきった状況だ」

 僕たちもたくさんの人を治療したけど、きっとアイリーンさんたちもこの軍の拠点で多くの怪我人を治療したはずだ。
 それに、まだ僕とシロちゃんでないと治療できない重傷者がいるはず。
 それだけ、多くの怪我人が発生したんだ。

「この先に最前線の要塞があるが、そこも被害を受けている。先程兵から基地の補修も行って欲しいと要望があったが、私の方からもお願いしたい」
「分かりました、頑張ります。大体のレンガの大きささえ分かれば、頑丈なものを作ります」
「はは、それはとても楽しみだ。何よりも、治療班が来たということで兵の士気も高くなった。そして、これからの経験はきっとレオ君の今後にも役に立つだろう」

 とても大変な現場だけど、それだけ得られるものも多いはず。
 隣に座るアイリーンさんも、僕にニコリとしてくれました。
 そして、別の注意点を話してくれました。

「あと、この基地で実質的に一番偉いのは料理洗濯担当のおばちゃんだ。怒らせてはいけないぞ」

 アイリーンさんもうんうんと激しく同意していたけど、一体どういう人なんだろうか。
 司令官のハーデスさんが言うのだから、きっと凄い人なんだろうね。
 話はこのくらいにして、さっそく僕とシロちゃんそれにユキちゃんは重傷者の治療を行うことにしました。
 怪我人がいる部屋にアイリーンさんに案内してもらったけど、ちょうどその部屋で作業をしている中年女性がいました。
 茶髪をお団子頭にしていて、横に大きい感じですね。

「あっ、ちょうどいいところに。エラさん、レオ君を紹介するわ」
「うん? ああ、この子が例の黒髪の天使様ってわけかい」

 なんだか、アイリーンさんにも遠慮なく話すおばちゃんだね。
 でも、悪気はない気がするよ。

「初めまして、僕はレオです。このスライムがシロちゃんで、コボルトのユキちゃんです」
「アオン!」
「きちんと挨拶ができて偉いね。あたしはエラだよ。炊事と洗濯担当だ」

 あっ、もしかしなくてもこの人がハーデスさんが言っていたおばちゃんなんだ。
 僕は全然怖くないし、ユキちゃんも普通に接しているよ。
 ちょうどエラさんのいるベッドに右足を膝下から切断した兵がいるし、隣のベッドにも右腕を肩から切断している人がいるよ。
 薬か何かで寝ているけど、時折苦しい表情をしていて痛々しいです。
 良いタイミングなので、全員治療しちゃいましょう。
 僕とシロちゃんは、魔力を集め始めました。

 シュイン、シュイン、シュイン。

「な、なんだいこの魔法陣の数は!」
「ふふふ。エラさん、これから凄いことが起きますよ」

 魔法陣の数にエラさんはビックリしていたけど、アイリーンさんが言うほど凄いことじゃない気がするよ。
 軍でも理論は解明していて、実践研究中らしいし。
 僕はそんなことを思いながら、シロちゃんと一緒に回復魔法と聖魔法の合体魔法を放ちました。

 シュイン、シュイン、ぴかー!

「な、な、なっ! なくなった足が生えちまったよ!」
「これが、レオ君とシロちゃんの合体魔法なの。四肢の切断なら、直ぐに治るわ」
「アン!」

 何だかアイリーンさんとユキちゃんがドヤ顔でエラさんに説明していたけど、初めて見ると誰でもビックリするよね。
 隣のベッドに寝ている兵も治療して、ついでに他の部屋にいた重傷者を全て治療しました。

「アイリーンさん、他に重傷者はいますか?」
「いま治療した人で最後よ。軽傷者が結構いるから、明日以降はその人たちを治療しましょう」

 うーん、まだまだ魔力があるから全然大丈夫なんだけどなあ。
 僕もシロちゃんも、日々の訓練のお陰で魔力消費量が減ったんだね。
 ちょうど夕食の時間なので、食堂に移動しました。
 今日はエラさんが重傷者の看病をしていたので、他の人が夕食を作っているそうです。
 その中には、ケイトさん、カーラさん、マイアさんの姿もありました。
 あっ、この場にたくさんの兵がいるし、ハーデスさんもいるからちょっと聞いてみよう。

「ハーデスさん、いま食堂にいる人をまとめて治療しちゃってもいいですか?」
「はっ? ああ、それは助かるがまとめて治療する?」

 ハーデスさんと一緒に着いて来たエラさんも良く分からない表情でいるけど、実際に見て貰った方が良いですね。
 夕食を食べている兵にも治療すると伝えて貰ったけど、兵も不思議そうな表情で僕のことを見ていました。
 では、さっそく治療を始めましょう。

 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!

「うお、なんだこの魔法陣の数は」
「食堂全体を照らしているぞ!」
「すげー、切り傷が治っていく!」

 ふう、流石に魔力も少なくなったけど良い感じで治療出来ました。
 夕食を食べていた兵は、怪我が治ってもの凄くビックリしていました。

「ハーデスさん、この食堂にいる人は全て治療しました。中等症くらいの怪我までは治っているはずです」
「あ、ああ、分かった。流石は宮廷魔術師になるだけの力だな」
「「「うおー!」」」

 ハーデスさんは唖然としていたけど、兵は全身の悪いところが全部治って大歓声をあげていました。
 そして、もりもりと夕食を食べ始めました。
 うんうん、みんな元気になって良かったです。
 頑張ったご褒美として、僕とシロちゃんの夕食はちょっぴり豪華なものになりました。
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