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第七章 王都

第五百二十話 披露宴の始まり

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 今度は教会から屋敷に移動するけど、馬車に乗る人と歩いて行く人に分かれています。
 軍人貴族は訓練だと、普通に歩いて屋敷に向かっていますね。
 下り坂しかないので、僕たちも歩いて屋敷に向かいます。

「うーん、マヤちゃんはとっても可愛いわね」
「えっと、かわいいの」
「可愛いわよ、まるでお人形さんみたいね」

 マヤちゃんは、いつの間にかナディアさんに抱っこされていました。
 既に何回も顔を合わせているし、結婚式を盛り上げた仲間同士ということで気があったみたいです。
 ナディアさんは、ニコリとしながらマヤちゃんに頬ずりしています。

「ははは、ナディア、ブーケをゲットしたら直ぐに子持ちかよ」
「へへーん、良いでしょう。お兄ちゃんにはあげないわよ」
「いらないよ。お前の場合はかーちゃんの血を継いでいるから、婿探しの方が大変だ」

 マヤちゃんが兄妹のじゃれ合いを不思議そうに見ていたけど、基本的にザンギエフさんたちは仲が良いんだよね。
 このくらいの軽口なら、いつもしているし。
 モニカさんとヒルダさんも、この兄妹の関係にはすぐ気がついていた。
 なので、ニコニコしているだけで特に何も言わなかった。
 そして、無事に屋敷に到着して、庭に設けられた披露宴会場の席に案内されました。
 屋敷から海が見える好立地なので、せっかくだからと庭に設置しました。
 ちなみに、領地によっては新しい夫婦のお披露目を兼ねてパレードもするらしいけど、既にライサさんはシークレア子爵領に来て町の人と触れ合っているので何も問題ないそうです。
 そして、他の人たちも席について行きました。
 アンジェラさんやイレーネさん、ブランフォード子爵家の面々も席に座った。
 和やかに談笑していると、アナウンスが入った。

「皆さま、お待たせしました。それでは、新郎新婦の入場です。大きな拍手で迎えて下さい」
「「「わぁ!」」」

 お色直しを済ませたセルゲイさんとライサさんが、屋敷から披露宴会場に姿を現しました。
 セルゲイさんはグレーのスーツで、ライサさんは華やかなピンクのドレスです。
 二人揃って一礼して、それから新郎新婦の席に向かいました。
 うん、クリスちゃんとマヤちゃん、それにユキちゃんの視線が目の前に置かれた料理に釘付けだけど、もう少し我慢しようね。

「それでは、ブランフォード子爵様より乾杯のご挨拶を頂戴いたします」

 司会の合図で、ブランフォード子爵がグラスを持って立ち上がりました。
 全員の視線が、ブランフォード子爵に注がれています。

「えー、ごほん。それでは、僭越ながらご指名ということで乾杯の挨拶をさせて頂きます。実は、先代シークレア子爵がご存命の頃より二人の婚姻は決まっておりました。そんな中、先代シークレア子爵が急病で亡くなり、その間若いながらもセルゲイ殿は一生懸命民の為の統治をしておりました。そんなセルゲイ殿に私の娘が嫁げることを、誇りに思っております」

 ブランフォード子爵の話を聞いて、イレーネさんは思わず目尻をハンカチで押さえていました。
 きっと、今まで色々な苦労を思い出したんだね。

「そんな若い夫婦ですので、どうぞ皆さまご指導のほどよろしくお願いします。それでは、二人の将来とここにいる皆さまのご健勝を祈願して乾杯といたします。乾杯!」
「「「乾杯!」」」

 ブランフォード子爵の乾杯の合図で、一斉に声が上がりました。
 披露宴の始まりです。
 ここから、爵位順に二人に挨拶に行きます。
 僕たちは纏まっている上に、公爵家という一番上の爵位なので一番先に挨拶に行きます。
 クリスちゃんとマヤちゃん、それにユキちゃんも、美味しそうな食事が食べられなくて残念そうな表情をしないの。

「それでは、おめでとうって言いましょうね」
「「「おめでとうございます!」」」
「アオン!」
「ふふふ、みんなありがとうね。立派に結婚式を手伝ってくれたわね」

 モニカさんの合図で元気よく挨拶をすると、ライサさんが僕たちの頭をニコリとしながら撫でていました。
 シロちゃんも、僕の頭の上でお辞儀をしています。
 ヒルダさんは、セルゲイさんと何か話をしていますね。

「さあ、次の貴族の挨拶があるから席に戻りましょうね」
「「「はーい」」」
「オン!」

 僕たちもセルゲイさんと少し話したけど、後が待っているので直ぐに席に戻りました。
 そして、直ぐに美味しそうな料理を食べ始めました。

「「とってもおいしーね」」
「そうだね、いっぱい食べていいんだよ」

 クリスちゃんとマヤちゃんは、美味しそうなお肉を口一杯に頬張ってご機嫌です。
 ちらりとセルゲイさんとライサさんのところを見ると、挨拶をする人の長い列ができていました。
 アンジェラさんとイレーネさん、ブランフォード子爵家の面々も挨拶にまわっていますね。
 貴族の結婚式って本当に大変だなって思いながら、僕もお肉を頬張りました。
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