小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第七章 王都

第五百十五話 何とか落ち着きました

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 みんなで門のところまで来ると、横転した馬車が確認できた。
 馬は何とか無事みたいだけど、御者は地面に投げ出されていて頭から血を流していた。
 そして、馬車は車軸が破断したのか片方の車輪が取れていて横倒しになっていた。
 僕とシロちゃん、そしてユキちゃんは、軍人貴族の人と一緒に馬車に駆け寄りました。

「馬車内に人がいるぞ。引っ張り出すぞ!」
「「「せーの」」」

 駆けつけた守備隊員の手によって、馬車内に取り残された人を救出しています。
 その間に、僕とシロちゃんで御者を、ユキちゃんが馬を治療します。

 シュイン、ぴかー。

「これで、大丈夫です。気を失っているだけですよ」
「アオン!」
「それでは、馬と合わせて守備隊の施設に搬送します」

 そして、今度は引っ張り出された人を治療しようとしたら、僕たちの背後から声がかかりました。

「お、お父様!」
「ふむ、やはりか」
「そうとしか考えられないな」

 声をかけたのは、あの男爵令嬢でした。
 たまたま屋敷に着いたマイスター師団長さんと、屋敷から出てきたビクターさんも声を揃えていました。
 それよりも、ちょっと問題発生です。

 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!

 シロちゃんと合体魔法をかけても、怪我は良くなったんだけど混乱のステータスが良くなりません。
 状態異常解除の魔法を使っても駄目です。

「レオ君、そこまで治療してくれれば良いよ。恐らく、男爵は精神的に駄目になってしまったのだろう。御者から話を聞くしかないよ」
「レオ君の回復魔法で治らないのなら、この国のどの魔法使いでも治せないだろう。恐らく、国からの追加通知が来た際に気をやってしまったのだろう」

 暴れる可能性が高いので、厳重に拘束されて護送されていきました。
 鎮静作用のある生薬があるので、それがどこまで効くか次第だそうです。
 壊れた馬車は道を塞いで邪魔なので、シロちゃんのアイテムボックスに収納しました。
 男爵令嬢が惨状と父親の症状を聞いて項垂れちゃったけど、情報を整理する為にもう一度屋敷の応接室に集まりました。

「皆さま、この度は父が大変な事をしてしまい本当に申し訳ありません。深く謝罪いたします」

 男爵令嬢が深く頭を下げているけど、まだ状況を上手く飲み込めていないみたいです。
 ヒルダさんが、優しく男爵令嬢に寄り添っていました。
 その間に、軍の偉い人がどんどんと通信用魔導具で王城に連絡を入れていました。

「取り敢えず、特別警戒態勢は解除だ。本人も確保できたわけだからな。ただし、男爵領の害獣駆除は当面継続になる。事情を聞くために、軍も駐留することになった」
「その辺は、全て王城経由でお兄さんにいくから大丈夫だよ。男爵も、精神的異常が元の暴走として処理されるだろう。後は、薬がどれだけ効くかだけだね」
「はい、ぐすっ、ありがとうございます」

 ビクターさんとマイスター師団長さんの報告を聞いて、男爵令嬢は涙を拭きながら再び頭を下げました。
 この状況では男爵に領地統治は不可能だから、このままお兄さんが当主になるだろうね。

「幸いにして、シークレア子爵領自体には被害はありません。特に賠償を求めることもないので、ご安心下さい」
「あ、ありがとうございます……」

 アンジェラさんも男爵令嬢の手を取って優しく語りかけていたけど、結局馬車が暴走しただけで人的被害も物質的被害もないんだよね。
 ある意味、自爆で済んで良かったです。
 そして、シロちゃんが回収した壊れた馬車は修復可能らしく、後で男爵領に寄った際に届けることになりました。
 これで、一連の騒動も終わりですね。

「結婚式が悲しいものになっては良くないだろう。せっかくことが済んだんだ、明日は笑って参加するように」
「はい、ありがとうございます」

 中々気持ちを切り替えるのは大変だけど、マイスター師団長さんの言う通り明日は結婚式を楽しんで欲しいですね。
 なお、シークレア子爵領内は結婚式が終わるまでは念の為に警戒態勢を継続するそうです。
 何かあっても、ザンギエフさんたちがいるから大丈夫ですね。
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