小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
420 / 584
第七章 王都

第五百十五話 何とか落ち着きました

しおりを挟む
 みんなで門のところまで来ると、横転した馬車が確認できた。
 馬は何とか無事みたいだけど、御者は地面に投げ出されていて頭から血を流していた。
 そして、馬車は車軸が破断したのか片方の車輪が取れていて横倒しになっていた。
 僕とシロちゃん、そしてユキちゃんは、軍人貴族の人と一緒に馬車に駆け寄りました。

「馬車内に人がいるぞ。引っ張り出すぞ!」
「「「せーの」」」

 駆けつけた守備隊員の手によって、馬車内に取り残された人を救出しています。
 その間に、僕とシロちゃんで御者を、ユキちゃんが馬を治療します。

 シュイン、ぴかー。

「これで、大丈夫です。気を失っているだけですよ」
「アオン!」
「それでは、馬と合わせて守備隊の施設に搬送します」

 そして、今度は引っ張り出された人を治療しようとしたら、僕たちの背後から声がかかりました。

「お、お父様!」
「ふむ、やはりか」
「そうとしか考えられないな」

 声をかけたのは、あの男爵令嬢でした。
 たまたま屋敷に着いたマイスター師団長さんと、屋敷から出てきたビクターさんも声を揃えていました。
 それよりも、ちょっと問題発生です。

 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!

 シロちゃんと合体魔法をかけても、怪我は良くなったんだけど混乱のステータスが良くなりません。
 状態異常解除の魔法を使っても駄目です。

「レオ君、そこまで治療してくれれば良いよ。恐らく、男爵は精神的に駄目になってしまったのだろう。御者から話を聞くしかないよ」
「レオ君の回復魔法で治らないのなら、この国のどの魔法使いでも治せないだろう。恐らく、国からの追加通知が来た際に気をやってしまったのだろう」

 暴れる可能性が高いので、厳重に拘束されて護送されていきました。
 鎮静作用のある生薬があるので、それがどこまで効くか次第だそうです。
 壊れた馬車は道を塞いで邪魔なので、シロちゃんのアイテムボックスに収納しました。
 男爵令嬢が惨状と父親の症状を聞いて項垂れちゃったけど、情報を整理する為にもう一度屋敷の応接室に集まりました。

「皆さま、この度は父が大変な事をしてしまい本当に申し訳ありません。深く謝罪いたします」

 男爵令嬢が深く頭を下げているけど、まだ状況を上手く飲み込めていないみたいです。
 ヒルダさんが、優しく男爵令嬢に寄り添っていました。
 その間に、軍の偉い人がどんどんと通信用魔導具で王城に連絡を入れていました。

「取り敢えず、特別警戒態勢は解除だ。本人も確保できたわけだからな。ただし、男爵領の害獣駆除は当面継続になる。事情を聞くために、軍も駐留することになった」
「その辺は、全て王城経由でお兄さんにいくから大丈夫だよ。男爵も、精神的異常が元の暴走として処理されるだろう。後は、薬がどれだけ効くかだけだね」
「はい、ぐすっ、ありがとうございます」

 ビクターさんとマイスター師団長さんの報告を聞いて、男爵令嬢は涙を拭きながら再び頭を下げました。
 この状況では男爵に領地統治は不可能だから、このままお兄さんが当主になるだろうね。

「幸いにして、シークレア子爵領自体には被害はありません。特に賠償を求めることもないので、ご安心下さい」
「あ、ありがとうございます……」

 アンジェラさんも男爵令嬢の手を取って優しく語りかけていたけど、結局馬車が暴走しただけで人的被害も物質的被害もないんだよね。
 ある意味、自爆で済んで良かったです。
 そして、シロちゃんが回収した壊れた馬車は修復可能らしく、後で男爵領に寄った際に届けることになりました。
 これで、一連の騒動も終わりですね。

「結婚式が悲しいものになっては良くないだろう。せっかくことが済んだんだ、明日は笑って参加するように」
「はい、ありがとうございます」

 中々気持ちを切り替えるのは大変だけど、マイスター師団長さんの言う通り明日は結婚式を楽しんで欲しいですね。
 なお、シークレア子爵領内は結婚式が終わるまでは念の為に警戒態勢を継続するそうです。
 何かあっても、ザンギエフさんたちがいるから大丈夫ですね。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。