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第七章 王都

第四百九十四話 さっそく奉仕作業開始です

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 ウェンディさんたちは、奉仕作業に慣れているライサさんから何をするか聞いています。
 ちなみに、クリスちゃんとマヤちゃんがいるのでユキちゃんが張り切って護衛についています。
 まずは、前回と同じく炊き出し用の野菜を切っていきます。

 トントントン。

「ふふ、レオ様は相変わらず包丁さばきが素晴らしいですわ」
「そうですか? まだ、皆さんのように手早く切ることはできないですよ」
「そんなことはありませんよ。レオ様の年齢でこうして野菜を切ることができるのは、ほんの一握りかと」

 うーん、何だかジーナさんに褒められるとくすぐったいなあ。
 でも、最初の頃よりも上手くなったんだよね。
 それに、ジーナさんにも笑顔が戻ってきて良かったと思っています。
 でも、実際にはシロちゃんの方が沢山の野菜を切っているんですよね。
 しかも、芋の皮むきまでお手の物です。
 三十分くらい経つと、沢山の野菜が切れました。
 ここからは、料理担当の出番ですね。
 僕は、ジーナさんに挨拶をしてから無料治療のところに向かいました。

「スカラさん、お待たせしました」
「レオ君とシロちゃんは炊き出しのお手伝いをしていたのだから、全然構わないわ。レオ君の包丁さばき、とても良かったわよ」

 おお、主婦でもあるスカラさんに包丁さばきを褒められちゃいました。
 新人兵の数人も、カッコよかったと褒めてくれます。
 何だか照れくさいですね。
 じゃあ、今度は本職の治療を頑張らないと。
 すると、何故かユキちゃんと一緒にクリスちゃんとマヤちゃんが椅子にちょこんと座っていた。
 何でだろうかと思ったら、クリスちゃんと一緒にいたジェシカさんが理由を教えてくれた。

「流石に熱いものを配膳するのは危険だとの、ヒルダ様とターニャ様のご采配になります。私も、お二人についておりますので」
「アオン!」

 ユキちゃんも、任せろと元気よくひと鳴きしていました。
 クリスちゃんは治療施設での治療経験があるから、きっと大丈夫ですね。
 すると、マキシムさんが何故か固い表情で話しかけてきた。

「その、レオ様はとても凄い人とお知り合いなのですね。天上にいるような人ですよ……」
「えっ、そうですか。皆さんとても良い人ですし、全く問題ないですよ」
「そうでしょうか。先ほどはヒルダ様がとても立派な訓示をされていましたし、とてもお近くには行けないです……」

 おおう、マキシムさんの呟きに他の新人兵もうんうんと頷いていました。
 ヒルダさんの訓示が凄いと、口々に言っていました。
 うーん、やっぱり公私の使い分けが凄いからなのかな?
 ともかく、僕たちは目の前で困っている人を助けないとね。
 では、今日の治療開始です。

 シュイーン、ぴかー。

「これで、腰の痛みは良くなったはずです。おじいさん、どうですか?」
「おお、すごく良くなったよ。やはり、黒髪の天使様は凄いのう」

 まだ朝方なので、治療に列んでいる人はご老人が大半です。
 穏やかな人が多いので、新人治療兵も問題なく対応していた。
 マキシムさんも普通に対応していたけど、これも昨日軍の治療施設で実践を積んだおかげです。
 ウェンディさんは配膳を手伝っていて、周囲を新人兵が警備しています。
 クリスちゃんとマヤちゃんも、ユキちゃんとジェシカさんとともに治療を頑張っていました。
 特に問題なく治療と炊き出しが進んでいたけど、お昼前になるとちょっとしたトラブルが起きてしまいました。

「テメー、割り込みやがったな!」
「そっちこそ、割り込んできたじゃないか!」

 何と、炊き出しの列に入ろうとして喧嘩が始まってしまったのです。
 でも、僕から見ると両方とも無理に列に割り込んだ気がするよ。
 すると、実践訓練と言わんばかりにバッツさんが新人兵を連れて行きました。

「コラー、お前ら何やっている! 同時に列に割り込んだのを確認したぞ!」
「「げっ」」

 あーあ、一番見つかってはいけない人に見つかっちゃった。
 二人とも、あえなく御用となりました。
 この後、訓練兼ねてのお説教タイムが待っていますね。
 一方、無料治療には、ある患者が運び込まれてきました。

「ぎゃー、ぎゃー!」
「ど、どなたか息子を診て頂けませんか?」

 マヤちゃんと同じくらいの男の子を抱いたお母さんが、血相を変えて僕たちのところに来た。
 急患なので、列んでいる人に断りを入れて新人兵を連れて親子のところに向かいました。

「あーん、あーん!」

 相当痛いのか、男の子は涙が止まりません。
 それもそのはず、男の子の左手が血まみれになっていました。

「その、私が目を離した隙にドアに手を挟んでしまって。ああ、なんてことを……」

 お母さんも少し混乱していて、これ以上詳しい話を聞くことができません。
 ここは僕が治療をするということで、男の子に軽く魔力を流します。

 シュイン。

「あー、あー!」
「これは、指だけじゃなくて手のひらの骨も折れています」
「そ、そんな……」

 結構な重傷で、お母さんだけでなく集まった兵も思わず顔が青くなりました。
 でも、このくらいの怪我なら全然大丈夫です。
 僕は、魔力を溜め始めました。

 シュイン、シュイン、ぴかー!

「こ、これは……」
「凄い、複数の魔法陣が現れている」
「これが、黒髪の魔術師の回復魔法……」

 回復魔法と聖魔法の合体魔法で、男の子を治療します。
 良い感じに治療できた反応があったけど、果たしてどうでしょうか。

「あっ、痛くないよ!」
「ああ、良かった、本当に良かった」

 頬に涙の跡が残る男の子がニコリとしたら、今度はお母さんが男の子を抱きしめて嗚咽していました。
 緊張と心配から解放されたから、こればっかりは仕方ないですね。

「今のは、回復魔法と聖魔法の両方の特性を生かした治療方法です。皆さんも、回復魔法と聖魔法を二人が同時に放つことで似たような治療ができます。色々な治療方法があるので、頑張って覚えて下さい」
「「「はい!」」」

 合体魔法は僕の得意技だけど、このくらいならある程度の技量がある治癒師ならできます。
 理論も確立されているし、そんなに難しくないんだよね。
 新人治療兵は、目の前で起きたことが自分でもできるかもしれないとやる気になっていました。
 うんうん、良い傾向ですね。
 お母さんはシスターに任せて、僕たちは再び治療するところに戻りました。
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