小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第七章 王都

第四百五十九話 謁見の終了

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「レオは、剣を脇に置くように」

 チャーリーさんの声で、僕は剣を脇に置きました。
 何もなければ、これで僕の叙勲は終わりです。
 チャーリーさんにチラッと視線を向けると、チャーリーさんもうんと軽く頷きました。
 そして、陛下が集まった貴族に言葉を発しようとした瞬間でした。

「陛下、お待ち下さいませ」

 急に僕の後ろに並んでいる貴族が、大きな声を出してきました。
 そして、一番前に並んでいた、物凄い肥満体の頭頂部に髪の毛がない貴族がもっさりと一歩前に歩み出ます。
 僕みたいに片膝を着いているけど、宰相であるチャーリーさんよりも豪華な服を着ている。
 そして、一瞬だけ僕を睨んでから陛下に顔を向けた。

「陛下、確かにこの少年は多大なる功績を上げましたが、まだこのような幼年です。名誉とはいえ、爵位を授けるのはいかがなものかと存じ……」
「ゴルゴン侯爵、黙れ!」

 おお、陛下は玉座から立ち上がって激怒しながらこのゴルゴン侯爵の言葉を遮りながら一喝しました。
 その瞬間、謁見の間にいる貴族がシーンと静まり返り、物凄い緊張感に包まれました。
 心なしか、閣僚もゴルゴン侯爵に怒っているように見えます。

「本件は、正式な手続きを経て決定したものだ。過去にも、十歳で騎士爵を叙勲した者もいる。功績的には、騎士爵どころか準男爵でもおかしくないのだぞ」
「うっ、それは……」
「それに、ゴルゴン侯爵は事ある事に国の決定に歯向かっている。よもや、帝国の差し金ではないか?」
「いえいえいえ、そんな滅相もございません」

 何だか滑稽な劇を見ているけど、顔を下げたゴルゴン侯爵が歯ぎしりをしながら僕を睨んでいるのがとても気になります。
 そして、陛下はゴルゴン侯爵を気にせずに話を続けます。

「現在、我が国は帝国と緊張状態にある。国内の貴族、そして国民が一丸となり、この国難に立ち向かわないとならない。しかし、最近自己の利益ばかり主張する愚かな貴族が増えている。先日捕まったヴァイス子爵一派が良い例だ」
「うぐっ……」

 陛下の話を聞いてゴルゴン侯爵が汗をダラダラと垂らしているけど、まさに自分のことを言われていると思っているはずです。
 しかし、陛下は引き続きゴルゴン侯爵を無視して話を続けます。

「我々の政治の先には、国が、そして国民がいる。そのことを忘れずに、今後の正字にあたるように。不正には、厳しい態度で対応する。皆も、不正を起こさぬよう日々の業務に当たるように」
「「「畏まりました」」」

 全員が陛下に対し臣下の礼をとり、そして陛下が袖口に歩いていきます。
 陛下の表情は厳しいものがあり、真っ直ぐに視線を向けていた。
 そして陛下の後を追うように、閣僚も袖口へと歩いていった。

「これにて、本日は終了となります。皆さま、ご退席下さいませ」

 そして、係の人のアナウンスが謁見の間に広まると、一気に緊張状態が解れました。
 しかし、ゴルゴン侯爵はこの瞬間を狙っていたみたいです。
 ゴルゴン侯爵の仲間と思われる貴族も、立ち上がったゴルゴン侯爵の後ろに集りました。

「レオ、貴様何様のつもりだ! どうせ、宰相や商務大臣に取り入ろうとしただけだろう!」
「「「そうだそうだ!」」」

 謁見の間は、異様な雰囲気に包まれました。
 遠巻きから僕たちを眺めている貴族もいれば、巻き込まれたくない為に足早に部屋から出ていく貴族もいます。
 そんな中、僕は頂いた剣を手にしながら立ち上がり、視線をゴルゴン侯爵に向けました。
 もしかしたらゴルゴン侯爵は僕に圧力をかけているのかもしれないけど、僕も今まで盗賊や不良な人と対峙をしてきたのでこのくらいはへっちゃらです。
 ゴルゴン侯爵は僕がへっちゃらな態度をしているので、逆に僕は自分の思いを口にしました。

「僕は、目の前で困っている人を助けたい。その一心で、今までやってきました。誰かに取り入ろうと思ったことは、一度もありません」
「このチビが、俺様に逆らうきか!」
「「「そうだそうだ」」」

 ゴルゴン侯爵は僕が反論すると思っていなかったみたいで、顔を真っ赤にしながら僕に歩みよってきました。
 でも、僕は全く態度を変えるつもりはないし、更に僕に歩み寄ってくる貴族もいます。

「ゴルゴン卿、何をしているのか?」
「先ほど、陛下に言われたことを理解していないようだな」
「この場に残ったレオ君が、仲間もなく一人きりだと思っているのか? 軍部はレオ君の味方だ。ついでに言うと、教会もだな」
「「「うっ……」」」

 僕の周りには、軍の重鎮であるマイスター師団長さん、海軍総司令官のビクターさん、ナンシー侯爵が僕の後ろにきました。
 更に、バーボルド伯爵とブランフォード子爵も、他の貴族を引き連れて僕のところにやってきました。
 これだけの人が集まったので、ゴルゴン侯爵と取り巻きはかなり怯んでいます。
 そして、ビクターさんが一歩前に出ました。

「で、このあとどうするのかね? ゴルゴン侯爵?」
「くっ、くそー!」

 ゴルゴン侯爵は、捨て台詞を吐いて取り巻きを引き連れながら僕たちの前から離れていきました。
 僕の前からゴルゴン侯爵たちが逃げていく光景に、集まった貴族はやれやれといった表情を見せていました。

「うーん、一体何だったのでしょうか? 不良冒険者みたいでしたよ」
「まあ、スケールが違うだけでやっている事は変わらんな。あんなの、ただの自分に都合の良い脅迫だ」

 僕の呟きに、ビクターさんが腕を組んでうんうんと頷いていました。
 そして、あんなものどうでもいいと話題を変えました。

「しかし、レオ君も堂々と言い返していたな。大貴族の当主が七歳に言い返される姿は、ある意味傑作だったぞ」
「うんうん、やっぱりレオ君は勇気がある。臆せず自分の意見を主張できるのは、とても良い事だよ」
「謁見の間に残っていた貴族も、レオ君のことを凄いと思っているようだ。これは、この後のパーティーがとても楽しみだな」

 マイスター師団長さんとバーボルド伯爵に言われて周囲を見渡すと、多くの貴族が僕のことを見ていました。
 えーっと、パーティーが楽しみって一体どういうことなのだろうか。
 とても面倒な事になりそうなのだけは、僕も何となく分かりました。
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