上 下
358 / 515
第七章 王都

第四百五十三話 まさかの冒険者

しおりを挟む
 翌朝、フランソワーズ公爵家の庭には昨日と同じマリアージュ侯爵家の馬車が停まっていました。
 もちろん、ヒルダさんが馬車から出てきました。
 僕は現地集合だと思っていたので、凄いビックリしちゃいました。

「今日は、モニカもターニャもパーティーの準備で動けないわ。だから、私が代わりに孫の面倒をみるのよ」

 ヒルダさんがチャーミングにウインクしてきたけど、確かに今日はモニカさんもターニャさんも更に嫡男のアレックスさんも忙しいので動けません。
 ウェンディさんとクリスちゃんは一緒に行くそうなので、ヒルダさんが引率する形になります。

「お母様、病み上がりなのだから気を付けて下さい」
「ふふ、大丈夫よ。レオ君の治療でバッチリ治っているわ」

 モニカさんが母親であるヒルダさんに釘をさしたけど、当のヒルダさんはワクワクって感じですね。
 今日はジェシカさん以外にも侍従がついていくそうで、みんな馬車の中に乗り込みました。

「行ってきます!」
「いってきまーす」
「気を付けてね」

 ウェンディさんとクリスちゃんが馬車の窓からターニャさんに手を振って、馬車は冒険者ギルドに向かいました。
 いつも通りに冒険者ギルドの馬車停留所に馬車を停めて、受付の手続きに行こうとしたときでした。

「さあ、みんなも降りるわよ。冒険者ギルドがどんなものか、実際に見てみましょう」
「「はい!」」

 おお、ウェンディさんとクリスちゃんもとっても良い返事をしています。
 二人とも、前から冒険者というものに興味があったそうです。
 ウキウキしている三人と共に、冒険者ギルドの中に入りました。

 ガヤガヤガヤ。

「わあ、多くの冒険者がいるわ。とっても活気があります!」
「凄いです! 凄いです!」

 早朝で多くの冒険者が詰めかけている光景を見て、ウェンディさんとクリスちゃんは大はしゃぎです。
 二人とも貴族令嬢だから、中々ない体験ですね。
 そして、ヒルダさんも普通に受付の列に並んでいます。
 えーっと、豪華なドレスを着た令嬢が三人も並んでいるので、冒険者がちょっとざわざわとしています。
 更に、僕もびっくりすることが起きました。

「すみません、受付をお願いします」
「私も、一緒にお願いしますわ」
「えっ、ひ、ヒルダ様?!」

 なんと、ヒルダさんも冒険者カードを取り出して受付に出してきました。
 これには、受付のお姉さんだけでなく、僕やウェンディさんやクリスちゃんもびっくりしています。

「ヒルダさんって、冒険者だったんですか?」
「ええ、そうよ。王女の時に、よく奉仕活動や魔物の駆除をしていたのよ」

 ヒルダさんはあっさりと答えているけど、一体どんな王女時代を過ごしていたんだろうか。
 そして、さらりとウェンディさんとクリスちゃんも冒険者登録しています。
 今日は、一種の非日常の体験だと思えばいいですね。
 すると、受付の奥からシシーさんが顔を覗かせました。

「これはこれは、ヒルダ様ではありませんか。今日は、黒髪の魔術師と一緒ですか?」
「ええ、そうよ。孫の面倒も見ようと思っておりますわ」
「随分と楽しみにしておりますね。お気をつけて下さいませ」

 シシーさんもニコリとして対応していたけど、どうもヒルダさんが冒険者だって知っていたみたいですね。
 何だか、凄いことになってきちゃいました。

「では、大教会に行くわよ。多くの人を治療しないとならないわ」
「「「はい!」」」
「アオン!」

 思わずみんな返事をしちゃったけど、もう完全にヒルダさんのペースになっちゃいました。
 この辺りは、元王族って感じかもしれません。
 僕たちは冒険者ギルドを出て、馬車に乗って大教会に向かいました。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。