上 下
382 / 484
第七章 王都

第四百三十四話 元気になったヒルダさん

しおりを挟む
 ギルバートさんがお仕事をしている間、僕は魔法の本を読んで過ごしていました。
 商務大臣だけあって本当に忙しく働いていて、常に沢山の部下に指示を出していました。
 そして、日もどっぷりと暮れた頃、ギルバートさんが僕に話しかけました。

「レオ君、待たせてすまなかった。そろそろ行こうか」

 ギルバートさんが今日のお仕事を終えて、帰り支度を始めました。
 僕も、魔法の本を魔法袋にしまって立ち上がったタイミングでした。

 ガチャ。

「おお、ここにおったか。私も一緒に屋敷に行っても良いかな」
「もちろんですとも。奥様のご様子を見ないとなりませんぞ」

 チャーリーさんが執務室に入ってきて、僕たちに声をかけました。
 ヒルダさんは、チャーリーさんの奥さんだから心配で堪らないよね。
 さっそく馬車に乗り込んで、屋敷に向かいます。
 王城から屋敷が近いので、あっという間に到着しました。
 屋敷に帰るとみんな食事中だというので、僕たちも食堂に向かいました。

 ガチャ。

「あら、お帰りなさい。あなたも一緒だったのね」
「おかえりー」
「アオン」

 そこには、もりもりと夕食を食べているヒルダさんの姿がありました。
 ユキちゃんと一緒にクリスちゃんたちも夕食を食べているけど、僕もギルバートさんも、もちろんチャーリーさんも思わずポカーンとしちゃいました。

「ヒルダ、もう調子はいいのかね?」
「ええ、すっかり良くなりましたわ。目が覚めたらお腹も空いてしまって、恥ずかしながらこの通りですわ」
「そ、そうか。それは良かった……」

 ヒルダさんの元気な姿を見て、チャーリーさんは思わず力が抜けちゃいました。
 そりゃ、一時意識不明って話を聞いていたもんね。
 僕も、とっても安心しました。
 もう食べ終わるそうなので、応接室に行って話をすることになりました。
 クリスちゃんたちも、一緒についてくるそうです。

「まずは、レオ君にお礼を申し上げます。命を救って頂き、本当にありがとう」

 応接室に集まって、開口一番ヒルダさんが僕にお礼を言いました。
 その姿は、貴族当主夫人そのものでした。

「僕もヒルダさんを治療できて、本当によかったです。やっぱり、元気になった方が良いですね」
「ここ数日の体の不調も良くなり、食事も美味しく食べられましたわ。これも、レオ君のおかげね」

 ヒルダさんも、体の調子が良くなってとっても良い笑顔になっています。
 でも、治ったばかりなので、今夜はこのまま屋敷に残るそうです。
 僕としても、そっちの方が良いと思います。
 そして、チャーリーさんが今後について話をしました。

「主犯のヴァイス子爵を捕まえたが、子飼いの貴族がまだ残っている。レオ君も、冒険者として依頼を受ける際は十分に気をつけるように」
「忠告ありがとうございます。明日は軍の治療施設で活動しますけど、特に行き帰りは気をつけるようにします」

 チャーリーさんの言うことはもっともだし、バーボルト伯爵領では軍の施設内で襲われちゃったもんね。
 何があるかまだ分からないから、十分に気をつけないと。
 すると、今度はギルバートさんが僕に話しかけてきました。

「レオ君は王都の軍の施設に初めて行くから、馬車で移動する方が良いだろう」

 ここは、素直にギルバートさんの提案を受け入れよう。
 確かに、僕は王都の軍の施設の位置が分からないもんね。
 その他にも色々な話をして、チャーリーさんは屋敷に帰って行きました。
 ふう、今日は色々あったから疲れちゃった。

「おにいさま、ヘロヘロ?」
「うん、流石に疲れちゃったよ。最後のヴァイス子爵を捕まえた時に、沢山魔法を使っちゃったんだ」
「ねーねー、どうやって悪い貴族を捕まえたの?」
「あっ、私も聞きたいな。悪の貴族を華麗に倒すレオ君の活躍を知りたいわ」
「僕も、話を聞きたいよ。きっと凄いことが起きているはずだよ」

 ここで、クリスちゃんを始めとするヴァイス子爵を捕まえた状況を知らない面々が、興味津々で僕に聞いてきました。
 僕は、夕食の準備ができるまでの間、ヴァイス子爵をどうやって捕まえたかを簡単に話しました。
 やっぱり、二階のバルコニーに大ジャンプしたところは、他の人もとっても驚いていました。
 でも、僕は空を飛べるからそれくらい普通だねってことで、うんうんと頷いていました。
 そんな中、ヒルダさんは僕の話をニコニコしながら聞いていました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

何でも欲しがる妹が、私が愛している人を奪うと言い出しました。でもその方を愛しているのは、私ではなく怖い侯爵令嬢様ですよ?

柚木ゆず
ファンタジー
「ふ~ん。レナエルはオーガスティン様を愛していて、しかもわたくし達に内緒で交際をしていましたのね」  姉レナエルのものを何でも欲しがる、ニーザリア子爵家の次女ザラ。彼女はレナエルのとある寝言を聞いたことによりそう確信し、今まで興味がなかったテデファリゼ侯爵家の嫡男オーガスティンに好意を抱くようになりました。 「ふふ。貴方が好きな人は、もらいますわ」  そのためザラは自身を溺愛する両親に頼み、レナエルを自室に軟禁した上でアプローチを始めるのですが――。そういった事実はなく、それは大きな勘違いでした。  オーガスティンを愛しているのは姉レナエルではなく、恐ろしい性質を持った侯爵令嬢マリーで――。 ※全体で見た場合恋愛シーンよりもその他のシーンが多いため、2月11日に恋愛ジャンルからファンタジージャンルへの変更を行わせていただきました(内容に変更はございません)。

身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「おい、アドレーラ。死んだか?」 私の婚約者であるルーパート様は、私を井戸の底へと突き落としてから、そう問いかけてきました。……ルーパート様は、長い間、私を虐待していた事実が明るみになるのを恐れ、私を殺し、すべてを隠ぺいしようとしたのです。 井戸に落ちたショックで、私は正気を失い、実家に戻ることになりました。心も体も元には戻らず、ただ、涙を流し続ける悲しい日々。そんなある日のこと、私の幼馴染であるランディスが、私の体に残っていた『虐待の痕跡』に気がつき、ルーパート様を厳しく問い詰めました。 ルーパート様は知らぬ存ぜぬを貫くだけでしたが、ランディスは虐待があったという確信を持ち、決定的な証拠をつかむため、特殊な方法を使う決意をしたのです。 そして、すべてが白日の下にさらされた時。 ルーパート様は、とてつもなく恐ろしい目にあうことになるのでした……

娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します

古里@電子書籍化『王子に婚約破棄された』
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。 「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。 元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・ しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・ 怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。 そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」 シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。 下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記 皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません! https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952 小説家になろう カクヨムでも記載中です

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。