小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
337 / 584
第七章 王都

第四百三十二話 あっという間の制圧

しおりを挟む
 王城から出て数分もすれば、目的地のヴァイス子爵家に到着しました。
 既に敷地内に軍が入っているけど、まだ屋敷内には入れないみたいです。
 ブランドルさんが、現場の指揮官に状況を確認します。

「屋敷はどうなっている?」
「はっ。玄関は固く閉ざされており、中に入る事が出来ません」
「くそ、面倒くさいことをしやがる」

 報告を聞いたブランドルさんが少し悔しそうな表情をしているけど、僕はちょっと気になったことがあります。
 現場の指揮官に質問しました。

「すみません、屋敷の裏口は確認しましたか?」
「そちらも確認しております。残念ながら、施錠されておりました」
「うーん、となると窓のあるところを破って入るか、別の方法を取るかですね」

 籠城していて、中々面倒くさいことになっています。
 すると、バルコニーからこちらを覗いている人物が。
 小太りで、金髪の髪で脳天が禿げているけど、多分ヴァイス子爵で間違いなさそうです。
 ヴァイス子爵は、僕たちを挑発するような視線を見せています。

「ははは、如何に軍務大臣といえども屋敷に入れなければ意味がない。貴族の中の貴族たる私を捕まえようなんて、百年早いわ。早々に立ち去れ!」

 いきなり上司のブランドルさんを罵倒する辺り、まともな人じゃなさそうです。  とはいえ、ヴァイス子爵を捕まえる方法は沢山あります。
 すると、ヴァイス子爵は僕の存在に気が付きました。

「そこのちびがレオ君か。貧乏くさい顔をして軍に取り入ろうとするなんて、図々しいガキがいるもんだな。平民のくせして生意気だ!」

 何だろうか。
 当人としては皮肉たっぷりに言ったつもりなんだけど、大した迫力も無いし全く怖くありません。
 怒るどころか、呆れちゃいました。

「ブランドルさん、あれで貴族主義のトップを気取っているんですか?」
「レオ君も直ぐに気がついたのか。口だけが上手いただの小物だ」
「貴様ら、揃いも揃って俺を馬鹿にしたな!」

 激昂しやすいし、本当に大した人物ではなさそうです。
 僕は、ブランドルさんと顔を見合わせて溜息をついちゃいました。
 では、うるさい人はさっさと退場してもらいましょう。
 僕は、足に身体能力強化の魔法をかけました。

 シュイーン、ぴょーん。
 すたっ。

「はっ?」

 僕は二階のバルコニーに一気にジャンプして飛び乗り、ヴァイス子爵と護衛の目の前に降り立ちました。
 ヴァイス子爵はいきなり目の前に僕が現れたので、何が何だか分からないみたいです。
 そして、今度は手に溜めておいた魔力を開放します。

 シュイーン、バリバリバリ!

「「「ギャー!」」」

 バタリ。

 僕はヴァイス子爵と護衛を目掛けてエリアスタンを放って、一気に痺れさせます。
 うーん、呆気なく倒れちゃったよ。
 護衛も、剣を抜くことすらできなかったみたいです。

「あばばば……」

 ヴァイス子爵は体が痺れてまともに会話できないけど、放置で良いでしょう。
 僕は、バルコニーから屋敷の中に入りました。

「ど、どこから入って……」

 シュイーン、バリバリ。

「ガアッ!」

 途中で僕の事を襲ってくる兵がいるけど、サンダーバレットで痺れて貰います。
 そのまま一階に降りて玄関に向かっていき、玄関の鍵を開けました。

 ガチャ、ギィィィ。

「ブランドルさん、後は宜しくお願いします。うーん、護衛の兵も大して強くなかったです」
「奴の護衛が務まれば良いレベルだからな。では、レオ君もついてきてくれ。他のものは、奴らを拘束して軍の牢屋にぶち込め」
「「「はっ」」」

 僕が痺れさせた人は兵に任せて、僕とブランドルさんはヴァイス子爵の執務室に向かいます。
 というか、僕たちの前に立ちはだかる人がまだいるんですね。
 一階の廊下にも、複数の護衛の兵が剣を抜いて構えていました。

「おい、ここは通さな……」

 シュイーン、バリバリ!

「「「ギャー!」」」

 すぐさま、サンダーバレットで護衛の兵を痺れさせていきます。
 そのため、僕たちは全くの無傷で進んで屋敷内を行きます。

「いやあ、一撃で戦闘不能か。レオ君の魔法は、相変わらず凄いな」
「これでも、魔力を抑えています。あんまり魔力が残っていないので」
「まあ、護衛なら適当に痺れさせておけば十分だ。おっ、ここが執務室だな」

 ガチャ。

 執務室は全くの手付かずだったのか、ぱっと見で変わったところはありません。
 というか、鍵すらかかっていません。
 さっそく多くの兵が、執務室の中を捜索し始めました。

「ブランドルさん、こんな状況になったら普通は証拠隠滅しそうですけど。本当に何にもしていないですね」
「自分は捕まることはないと、変な自信があったのだろう。だからこそ、バルコニーから我々を見下しながら馬鹿にしていたのだろうな」

 うーん、どうやったら捕まらないという自信が持てるのだろうか。
 自分に相当の自信があったんですね。
 なので、次々と重要な書類が見つかりました。

「不正なポーション関連の書類が見つかりました。年明けから、不正なポーションの製造に着手した模様です」
「こちらは、ブランフォード子爵家への襲撃指示に関する書類です。また、攻撃対象貴族をリストアップした書類も出てきました」
「賄賂に関する書類もあります。どうやら、多数の貴族や官僚に賄賂工作を仕掛けていたみたいです」
「ここまで証拠が出れば、罪状としては十分だろう。私とレオ君は、王城に戻って陛下に報告する。引き続き、捜索と屋敷の保存をするように」
「「「はっ」」」

 こうして屋敷の敷地に入って僅か三十分で、当初の目的を果たすことができました。
 往復で一時間もかかっていないけど、首謀者を捕まえて多数の証拠を抑えました。
 こちら側は殆ど怪我人も出てないし、上々の成果でしょう。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。