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第六章 バーボルド伯爵領

第三百九十七話 午後はゆっくりする事に

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 そして、今度はブランドルさんが捕縛した三人組について話してくれました。

「この前不名誉除隊になった魔法使いは、今までの素行不良もあったがあくまでも訓練中の魔法暴発がトドメを刺した形だった。だが、今回は公共の場である食堂で剣を抜いて軍の協力者に一方的に攻撃を加えた。やった事は、普通に殺人未遂だ。三人は本日付けで本部付きにして、ある程度尋問が終わったら王都に護送する。正式な処罰は、軍法会議にて決定する」

 僕も、あの三人がやった事は許されないと思っています。
 そして、ブランドルさんの口調から察するに、あの三人には相当厳しい処分が待っていそうです。
 更に、驚くべき事も話してくれました。

「そして、あの馬鹿が親を呼べと言ったから、この駐屯地まで出頭命令を出した。軍の護衛付きだから、あと二時間もあれば着くだろう」
「えっ、あの三人組の親が、ですか?」
「そうだ。ただ、レオ君に直接合わせる事はしない。奴らにも贈収賄の疑惑があるから、あくまでも我々が捜査対象として行う」

 うん、またもやブランドルさん達の怒りのバロメーターが、ズゴゴゴって上がっていったよ。
 しかし、ここでバッツさんがとある事を話してきた。

「ブランドルよ、王都の本部にも貴族上がりの馬鹿な奴はいるのか?」
「大馬鹿野郎がいるぞ。実力もないのに近衛騎士にしろとか将軍にしろとか、どの面下げて言っているんだと思った。理由がはっきりとしたから、これから一気に対処する」
「はあ、やっぱりか。こういうのは、一気に徹底的にやった方が良いだろうな」

 王都にある軍本部でも、色々と大変な事が起きているんだ。
 あっ、バッツさんで思い出しちゃった。

「バッツさん、午後の予定はどうしますか?」
「中止だ、中止。元々ブランドルと面会してから作業予定だったし、空っぽの魔石も残り少ないんだ。だから、今日はゆっくりしていろ」

 バッツさんは、当たり前だって感じで僕に話してきました。
 でも、確かに今日は集中して作業できなさそうだし、ここはお言葉に甘えちゃおう。

「しかし、二週間で何百人を治療したのだろうか。そして、魔導具の修理にも大貢献し、更に訓練にも付き合っていると。海軍でも貢献しているし、レオ君が王都に着いたら勲章を授与する手続きをしないとならないな」
「あの、僕はもう沢山の勲章を頂いていますよ?」
「ははは、これだけの勲章を得る者は殆どいない。後でフランソワーズ公爵家とマリアージュ侯爵家にも連絡しないとならないな」

 あの、また勲章を貰うとなると、もう服に勲章を付けるスペースが無くなりそうですよ。
 でもブランドルさんが上機嫌で話をするので、ほぼ決定っぽいです。
 王都にはあと少しで向かう事になりそうだけど、何だか凄いことになりそうです。

 コンコン。

「失礼します、バーボルド伯爵様がおいでになりました」

 ここで、まさかのネストさんの登場です。
 しかも、かなり慌てた様子で部屋に入ってきました。

「失礼します。おお、これはこれは軍務大臣殿ではありませんか」
「バーボルド卿、うちの馬鹿が迷惑をかけた。レオ君は、この通り無事だ」
「軍務大臣殿、恐れ入ります。しかし、レオ君が殺人未遂にあったと聞いた時は、流石に肝を冷やしましたぞ」

 あっ、そうか。
 ネストさんは僕が事件に巻き込まれたと知って、慌てて駆けつけてくれたんだ。
 それにブランドルさんとも知り合いで、ある程度情報は知っているみたいです。

「レオ君は、今日はゆっくりと休んでね。もし調子が悪かったら、明日も無理せず休む事だよ」
「分かりました。色々とご迷惑をおかけしました」
「迷惑をかけたのは私達の方だから、謝らなくて良いんだよ」

 僕達はマイスター師団長さん達に見送られながら、ネストさんと共に帰路に着きました。
 師団長執務室の扉が閉まった瞬間、中からとても不穏な雰囲気が溢れ出たのは気にしないでおこう。

「しかし、レオ君が無事で良かった。剣で切りつけられたと聞いた時は、何がなんだか分からなかったぞ」
「僕も、もちろんシロちゃんもユキちゃんも、まさかあんな事になるとは思いませんでした。久々に、とても怖い思いをしました」
「誰だって、いきなり剣で斬りつけられれば恐怖を感じるさ。それが、大の大人が寄って集って小さい子に斬りつけたんだ。到底許されることでは無いだろう」

 ネストさんも、僕に切りつけた三人組に憤慨していました。
 常識を持っている者なら、少し考えれば分かるはず。
 でも、あの三人組が持ち合わせている常識は、きっと普通と違うんだ。
 そして、馬車は足早にバーボルド伯爵家の屋敷に到着しました。
 僕たちが玄関に姿を現すと、イストワールさんとシャンティさんが僕に駆け寄ってきました。

「レオ君無事なの? シロちゃんとユキちゃんも大丈夫?」
「連絡を受けた時は、本当に心配したのよ。今日は、ゆっくりと休んでね」

 イストワールさんとシャンティさんは、僕達の事を抱きしめてくれたり、頭を撫でてくれました。
 何だか、僕たちも思わずホッとしちゃいました。
 心配してくれる人がいるのって、こんなにも嬉しいことなんだ。
 あっ、そうだ。
 汚れた服の洗濯を頼まないと。

「すみません、今日着ていた服が凄く汚れちゃいました。洗濯をお願いできますか?」
「そのくらい全然構わないわ。って、これはちょっと酷いわね……」
「うーん、これじゃあ汚れは落ちないかも。そうだわ、今度の安息日に新しい冒険者服を買いましょう!」
「それが良いわね。服は予備があっても構わないわ」

 目の前で張り切っている二人を見て、予備の服はまだあるとは言い出せませんでした。
 そして部屋に戻ると緊張の糸が切れたのか、直ぐにみんな固まってお昼寝をしちゃいました。
 思っていたよりも、ずっと疲れていたみたいです。
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