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第六章 バーボルド伯爵領

第三百八十三話 午後も治療を頑張ります

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 美味しい昼食後は、再び治療施設で大部屋に入院している人の治療を行います。
 実は午前中に治療した大部屋では退院手続きと新たな入院手続きが行われているそうで、明日にはまた別の人が入院するそうです。
 入院を待っている人がいるのなら、頑張って病室のベッドを空けないと駄目だね。
 ということで、僕とシロちゃんは気合を入れて治療を再開します。

 シュイン、ぴかー!

「これで、右腕の骨折は良くなりましたよ。後は、リハビリを頑張って下さいね」
「おお、流石だな。頑張って、腕の筋力を回復させないとな」

 この部屋に入院している人は、利き手を怪我した人が多いみたいですね。
 頑張って、また剣を振れる様になって欲しいです。
 こんな感じでシロちゃんと手分けしながら治療を続けていき、三時頃には全ての大部屋に入院している人の治療を終えました。
 うーん、どうしよう。
 まだ夕方まで時間もあるし、魔力もたっぷり残っています。

「コレットさん、まだ魔力も沢山あるので何人か重症者を治療しますか?」
「うーん、そうですね。それでは、部隊指揮官の治療をお願いします」

 コレットさんは僕の体調を気にしてくれたみたいで、優先的に治療して欲しい人をあげてくれました。
 部隊指揮官さんだから、早めに治療した方が良さそうですね。
 僕とシロちゃんは、コレットさんと秘書さんの後をついていきながら二階に上がります。
 そして、とある個室の前に着きました。

 こんこん。

「部隊長、コレットです」
「おお、入ってくれ」

 中から男性の声が聞こえてきて、僕達は部屋の中に入りました。
 すると、左腕の肘から先を失っている男性が僕達を出迎えてくれました。
 腕だけじゃなくて、頭や体にも大きな傷ができていました。
 ひと目見て、かなりの重症だと分かります。

「君が例の黒髪の魔術師か。ははは、この姿を見てビックリしただろう」
「あの、実は四肢を欠損している人の治療をした事があるので、全然大丈夫です!」
「おっ、見た目は女の子みたいに可愛いのに、中々肝が座っているな」

 部隊指揮官さんは豪快に笑っているけど、流石に女の子って言われると複雑な気分です。
 でも、傷を見てちょっと気になった事があるんだよね。

「あの、傷が剣とかで切られた傷じゃないと思ったのですが……」
「流石は黒髪の魔術師だ。直ぐに見破ったな。実は、この傷はうちの魔法使いの魔法が暴発したからだよ」
「ちょっ、部隊長!」
「良いんだよ。どうせあの馬鹿の怪我も治療するんだろう? だったら、正しい情報を伝えておいた方が良いだろう」

 うーん、これは中々複雑な問題が起きているみたいです。
 魔法を暴発させるなんて、一体何があったのかな?
 とにかく、まずは目の前の怪我人を治療しないと。
 僕とシロちゃんは、最初から全力で魔力を溜め始めました。

 シュイン、シュイン、シュイン。

「な、何という魔法陣の数。これが黒髪の魔術師の本気の魔法……」
「ほう、キチンと魔力を制御しているな」

 沢山現れた魔法陣にみんなは驚いているけど、全力の魔法だとやっぱり少し派手になっちゃうね。
 では、やっちゃいましょう。

 シュイーン、ぴかー!

「「わっ、眩しい!」」

 部隊指揮官さんを中心にして、回復魔法と聖魔法の眩しい光が個室を照らします。
 コレットさんと秘書さんは、光を手で防いでいました。
 僕とシロちゃん的には、バッチリと治療できた手応えがありました。
 さてさて、結果はどうでしょうか。

「あっ、うそ、失った腕が!」
「そ、そんな。奇跡が!」
「おいおい、お前らが驚いてどうするんだよ。しかし、話には聞いていたが確かにすげー魔法だな」

 部隊指揮官さんの左腕がうまく再生し、部隊指揮官さんよりもコレットさんと秘書さんの方が大騒ぎしていました。
 どうも部隊指揮官さんは僕とシロちゃんの合体魔法で組織の再生ができるのを知っていたみたいですね。

「どうですか? 体の怪我も全部治療しました。あと、ちょっとお酒を飲み過ぎかもしれないですよ」
「おっと、そこまで分かっちまったか。まあ、程々にしておくぞ」

 内臓の治療も無事に終わり、これで大丈夫ですね。
 部隊指揮官さんは、今夜はゆっくり休んで明日退院するそうです。
 流石に魔力が少なくなってこれ以上の治療は無理なので、治療施設から事務等に戻る事になりました。
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