小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第六章 バーボルド伯爵領

第三百七十七話 バーボルド伯爵家の跡取り夫婦

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 僕とシロちゃんは、準備が終わると侍従の人に連れられてパーティー会場を行う広間に行きました。
 大きいテーブルが並んでいて、どうやら立食形式のパーティーになるみたいですね。
 コバルトブルーレイク直轄領で勲章の授与式があった際も立食形式のパーティーだったよなあ。
 因みに僕の身長だと辛うじてテーブルにどんな料理が置かれているかは分かるけど、実際に料理を取るのは不可能そうです。
 料理は、侍従の人に僕が食べたいものを取ってもらうしかなさそうですね。

「それでは、お時間までこちらにておくつろぎ下さいませ」

 僕は広間の壁際に置かれているソファーに案内され、サイドテーブルに置いてくれたジュースを口にします。
 はあ、何だか始まる前から緊張していたからジュースがとっても美味しいよ。
 準備も佳境になっているみたいなんだけど、会場を見回してもまだ来賓客は来ていないみたい。
 と、ここで広間にキチンとした服を着た人が入ってきました。
 結構背の高い男性と女性で、男性は短めの茶髪をキッチリとセットしていて女性は胸が大きくて薄い緑色のウェーブのかかったロングヘアです。
 僕とシロちゃんは、ジュースをサイドテーブルに置いてソファーから立ち上がりました。
 男性の方は、何となくネストさんに感じが似ているのは気のせいかな?
 そんな事を思っていたら、男性の方から僕に話しかけてきました。

「やあ、君がレオ君だね。私はダンビル・バーボルド、伯爵家の嫡男だ。横にいるのは妻のシャンティだ」
「レオ君、初めまして。ダンビルの妻のシャンティよ。本当に可愛らしい男の子なのね」

 僕とシロちゃんは、ニコリとしながら挨拶をしてきたダンビルさんとシャンティさんと握手をしました。
 ダンビルさんがネストさんに似ていたのは、ネストさんの息子さんだったからなんだね。

「父上と母上は、来賓が到着したのでそちらの対応にまわっている。その間は、私と妻でレオ君をエスコートするよ」
「かの有名な黒髪の天使様とお話できるなんて、私もとても楽しみにしていたんですよ」

 という事で、僕はダンビルさんとシャンティさんとお話をしながら時間を潰す事になりました。
 ソファーに座ってジュースを飲みながら、二人と色々話をします。

「レオ君の逸話は数多く聞いているが、さっき父上から軍の訓練場の土を均したと聞いたよ。あんなに興奮して話す父上は、何だか久々に見た気がするよ」
「お義父様の話しぶりから察するに、レオ君の魔法は私達の想像を超えているのでしょうね。教会から聞いた数多くの逸話は、私はきっと本物だと確信しましたわ」

 おおう、ダンビルさんもシャンティもキラキラした眼差しで僕の事を熱弁しているよ。
 二人の圧力に押されちゃって、何だか僕もシロちゃんも少し体を反っちゃった。
 そして、来賓も段々と会場内に入り始めた時でした。

 バキッ、パリーン。

「きゃっ!」

 女性の短い悲鳴が聞こえてきたのでみんなで声の方を向いたら、一人の侍従の人が手を押さえていました。
 どうもグラスが何らかの原因で割れちゃって、指先を切っちゃったみたいです。
 すぐさまダンビルさんとシャンティさんがソファーから立ち上がり、怪我をした侍従の元に歩み寄っていました。
二人のとても素早い動きに感心しつつ、僕とシロちゃんも二人の後をついていきます。
 既に別の侍従の人が割れたガラスを片づけているけど、テーブルクロスの上にも少し血がついちゃっている。

「わ、若様、若奥様、申し訳ございません」
「そなたがわざとグラスを割った訳ではない、気にする事はない」
「そうね、グラスの割れ方を見るともう割れる寸前だったのかもしれませんね」

 顔面蒼白で謝罪する侍従の人を、逆にダンビルさんとシャンティさんが慰めていました。
 とりあえず、怪我をしちゃった侍従の人を治療して血で汚れちゃったテーブルクロスを綺麗にしないとね。
 僕が侍従の人のところにいくと、シロちゃんがぴょんとテーブルの上にジャンプしました。

「じゃあ、直ぐに怪我をしたところを治療しますね」
「えっ?」

 シュイン、ぴかー!

 ここで侍従の人に治療すると確認したら断ってきそうな気がしたので、僕は侍従の人が返答する前に治療をしちゃいます。
 シロちゃんも、既にテーブルクロスを生活魔法で綺麗にしていました。

「はい、これで怪我をしたところもテーブルクロスも大丈夫ですよ」
「レオ様、本当にありがとうございます」

 侍従の人が僕とシロちゃんにお礼を言ったけど、このくらいは何も問題ないし大怪我じゃなくて本当に良かった。
 これで、無事に歓迎会を開けそうですね。

「レオ君、私からも礼を言う。侍従の事だけでなく血の汚れまで気にかけてくれて、本当に助かった」
「レオ君だけでなく、シロちゃんも凄腕の魔法使いなのですね。本当にありがとうございます」

 僕とシロちゃんにお礼を言ってきたダンビルさんとシャンティさんは、何だかホッとした表情をみせていました。
 やっぱり歓迎会前に起きた事だから、二人とも気を張っていたんだね。
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