上 下
273 / 506
第六章 バーボルド伯爵領

第三百六十八話 マックスさんの娘さん?

しおりを挟む
 シークレア子爵領からバーボルド伯爵領までは、馬車便で四日間の旅です。
 途中、二つの貴族領がありそうです。
 今日は、シークレア子爵領にある村に泊まる予定です。

 パカパカパカ。

「日中は少し暖かいけど、朝はまだ寒いね」

 季節はまだ寒い時期なので、朝はとっても寒いです。
 なので、僕はしっかりと厚着をして冬に薬草採取の時に使う携帯用の暖かい魔導具を使っています。
 シロちゃんも、僕の服の中に潜り込んでぬくぬくとしています。
 同乗している人達も、服を着込んで寒くない様にしています。
 そんな僕達の乗っている馬車の隣を、騎馬隊が並走していました。

「ちょうどマックスさんも、この先にある村に行くんですね」
「巡回のタイミングなんだ。村に駐在している部隊がいるから、何か問題が起きていないか話を聞くんだ」

 シークレア子爵領の村々をまわらないといけないから、守備隊の人は本当に大変だね。
 でも、守備隊の人が村に来てくれるから、村の人も安心して過ごせるはずです。
 そんな時、僕の探索魔法に何かが引っかかりました。

「あっ、前方に何かが現れます。数は八です」
「レオ君、ありがとう。レオ君は、念の為に馬車の乗客を守ってくれ」

 前方の茂みがガサガサとしているので、僕たちは警戒モードに入ります。
 守備隊の人も、馬を降りて剣を抜きました。
 僕とシロちゃんも、いつでも魔法を放てる準備をします。

「「「グルルル……」」」
「オオカミだな。冬は獲物が少ないから、目がギラついている。全員、要注意だぞ」

 茂みから姿を現したのは、少し痩せているオオカミの群れでした。
 こちらを襲ってくる気満々なので、ここは僕も手助けをする事にしました。

「マックスさん、オオカミをバインドで拘束します」
「分かった。他の者も、手早くとどめを刺すぞ」
「「「はい!」」」

 マックスさんも部下に指示を出したので、僕とシロちゃんはオオカミに拘束魔法を放ちます。

「いきます、えーい!」

 シュイン、バシッ。

「「「ギャイン!」」」

 上手い具合に、全てのオオカミを拘束する事ができました。
 守備隊の人も、その瞬間を逃しません。

「「「とう」」」

 ザシュ!

 守備隊の人は綺麗にオオカミの首を切りつけて、あっという間に全頭倒しました。
 すかさず、シロちゃんがオオカミの血抜きを行います。

「マックスさん、倒したオオカミはどうしますか?」
「村にいる守備隊員の中に、解体のプロがいる。そいつにやって貰おう」

 守備隊の人の中に、解体のプロがいるんだ。
 きっと、オオカミなんかあっという間に解体しちゃいそうだよ。
 なので、血抜きを終えたシロちゃんがそのままアイテムボックスにオオカミをしまいました。
 その後は襲撃とかもなく、お昼過ぎに無事に村に到着しました。
 村といっているけど、結構大きくて人も沢山います。
 確かに、この規模なら守備隊の詰め所があっても不思議じゃないね。

「レオ君、すまないが守備隊の詰め所まで来てくれないか? その代わりに、昼食は奢ろう」

 道中倒したオオカミを解体しないといけないので、僕とシロちゃんはマックスさんの後をついてきました。
 そして、厩舎のある守備隊の詰め所に到着です。
 僕は、マックスさんの後をついていきながら詰め所の奥に進んでいきました。

「えーっと、どこにいるかな? あっ、いたいた。おーい、ちょっと来てくれ」
「隊長、どうかしたんですか?」

 マックスさんが声をかけたのは、背の小さな女性隊員でした。
 えっ、もしかしてこの人が解体のプロなの?
 僕もシロちゃんも、あれってなっちゃいました。

「道中、オオカミを倒した。血抜きを済ませているから、いつも通り解体してくれないか。レオ君、彼女について行ってくれ」
「隊長、分かりました。直ぐに行います」

 ということで、マックスさんと共に背の小さな女性隊員の後をついていきます。
 そして、指定されたところでシロちゃんがアイテムボックスにしまっていたオオカミを取り出しました。

 ドサドサ。

「わあ、完璧な血抜きです。レオ君の連れているスライムって、本当に凄いです」

 女性隊員に血抜きを褒められて、シロちゃんはぷるぷるしながら嬉しがっていました。
 そして、さっそくエプロンをつけた女性隊員による解体が始まりました。

 シュパッ、シュパパパ。

 目にも止まらない速度で解体が進んでいき、あっという間に一頭分の解体が終わりました。
 この早業には、僕もシロちゃんもかなりビックリしました。

「わあ、お姉さん凄いです。あっという間に、解体が終わっちゃいました!」
「ふふふ、レオ君ありがとうね。血抜きが丁寧にしてあるから、余計な手間が殆どなかったのよ」

 女性隊員はニコリとしながら次々とオオカミの解体をしていき、本当にあっという間に八頭のオオカミの解体が終わりました。
 後片付けも手際良く済ませていきます。
 そして、驚愕の事実が判明しました。

「レオ君、この隊員は私の娘だ」
「ええー! マックスさんの娘さんなんですか?!」
「ふふ。レオ君、いつも父がお世話になっています」

 マックスさんが話した内容に、僕もシロちゃんもとってもビックリしちゃいました。
 マックスさんは茶髪なのに、娘さんは赤髪だから全然分からなかったよ。
 でも、マックスさんの娘さんだからこそ解体のプロなのかもしれません。
 そして、昼食もマックスさんの娘さんが作ってくれたけど、とっても美味しいお肉料理でした。
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた! 〜仲間と一緒に難題を解決します!〜

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 異世界転生した主人公が、仲間と共に難題に巻き込まれていき、頑張って解決していきます 詳細説明 ブラック企業に勤めているサトーは、仕事帰りにお酒を飲んで帰宅中に道端の段ボールに入っていた白い子犬と三毛の子猫を撫でていたところ、近くで事故を起こした車に突っ込まれてしまった 白い子犬と三毛の子猫は神の使いで、サトーは天界に行きそこから異世界に転生する事になった。 魂の輪廻転生から外れてしまった為の措置となる。 そして異世界に転生したその日の内に、サトーは悪徳貴族と闇組織の争いに巻き込まれる事に 果たしてサトーは、のんびりとした異世界ライフをする事が出来るのか 王道ファンタジーを目指して書いていきます 本作品は、作者が以前に投稿しました「【完結済】異世界転生したので、のんびり冒険したい!」のリメイク作品となります 登場人物やストーリーに変更が発生しております 20230205、「異世界に転生したので、ゆっくりのんびりしたい」から「異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた!」に題名を変更しました 小説家になろう様にも投稿しています

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。