上 下
267 / 515
第五章 シークレア子爵領

第三百六十二話 オリガさんの秘密

しおりを挟む
 冬になって寒くなっても、僕は安息日には薬草採取をしています。
 造船場での作業をずっと続けていたから、薬草採取をしていると冒険者活動をしている気持ちになれるね。

「よしっ、沢山採れたからこの辺にしておこう」

 シロちゃんと一緒に、防壁の門の前の原っぱで沢山の薬草と毒消し草を採りました。
 今日は、午後から沢山のポーションと毒消しポーションを作る予定です。
 最近あんまりポーションを作っていなかったので、特に毒消しポーションの在庫が不足ぎみなんだよね。
 午後の予定を立てながら宿に戻ると、ちょうど昼食ができていました。
 そのまま昼食を食べていると、ダリアさんが僕に質問をしてきました。

「レオ君は回復魔法が使えるのに、何でわざわざポーションを作っているの?」

 どうも、魔法使いなのにポーションを作っているのが不思議みたいです。
 薬草の採り方とポーション作りを教えた時は新しい事を覚える楽しさがあったみたいなんだけど、慣れてきたのもあってふと思ったみたいです。

「前にゴブリンの群れと戦った時に、魔力が尽きて治療できない時があったんです。その時は、怪我した人を手持ちのポーションで治療しました。あと、単純にポーション作りが好きなんです」
「そっか、レオ君も魔力が無くなると普通の小さい男の子になっちゃうもんね。そういう時に、ポーションを持っていると確かに役に立つわね」

 ゴブリンの群れと戦った時はシロちゃんも回復魔法が使えなかったから、魔法袋にポーションが入っていないと怪我人の治療ができなかった。
 それに、ポーションなら僕やシロちゃんじゃなくても怪我人の治療ができます。
 だから、僕とシロちゃんは常にポーションをある程度持っています。

「レオ君はゴブリンやオークを倒していたって、ちょうど忘れていたよ。造船場の作業と治療ばっかり見ていたから、魔物と戦っている姿が想像できなかったわ」
「シークレア子爵領に来てからは、ずっと作業と治療をしていましたから。でも、今でも毎朝訓練していますよ」
「そういう毎日の訓練の積み重ねがあったから、レオ君はとっても強くなったのね」

 毎朝の訓練は、基本部屋でやっています。
 でも、一年前よりも魔力制御とか上達した気もするよ。
 そんな事を話していたら、この方が話に参加してきました。

「うふふ、良かったらダリアちゃん達に指導してあげても良いわ」

 そうです、食器を片付けおえたオリガさんがニコニコしながら話に参加してきました。
 僕とシロちゃんはオリガさんの鬼神の様な強さを知っているので、思わずブルっとしちゃいました。

「私も父にだいぶ鍛えられたのよ。まだこの宿を父と母がやっていて、空いた時間に色々と教えて貰ったのよ」

 オリガさんに武術を教えたお父さんって、オリガさん以上に強かったのかも。
 というか、もっと驚いた発言があったよ。
 ダリアさん達も、オリガさんの話を聞いて気がついたみたいです。

「えっと、オリガさんがこの宿にお嫁さんに来たのではなくて、ユリスさんが婿に来たんですか?」
「あら、話していたかったかしら? ちょっと冒険者活動していた時に、旦那と知り合ったのよ。両親が病気で亡くなった時に、婿に来て宿を手伝ってくれたのよ」

 おお、何だか凄い話を聞いちゃった。
 ずっと、オリガさんはお嫁に来たと思っていたよ。
 しかも、ちょっと冒険者活動をしているレベルじゃないよね。
 なので、ちょっとどんな冒険者活動をしていたのか聞いてみよう。

「えっと、オリガさんが倒した事のある一番強いものって何ですか?」
「うーんとね、体長三メートルを超えるビッグベアだったかな? でも、背後から首の骨をへし折ってあっという間に終わったわよ」

 オリガさんは顎に指を当てて当時の事を思い出しながらどんな事があったかを教えてくれたけど、ビッグベアの首を背後からへし折るって……
 僕とシロちゃんだけでなく、ダリアさん達も思わず固まっちゃいました。
 うん、間違いなく今まで聞いた色々な人のエピソードの中でも、最上位に入る衝撃度です。
 そんなオリガさんに、ダリアさん達は鍛えられる事になりました。
 ダリアさん達が、とんでもなく強くなりそうな気がします。

「あっ、ダリアちゃん達を鍛える時はザンちゃん達も一緒ね」
「「「「げっ!」」」」
「ふふふ、逃げないでね」

 そして、食堂からこっそりと逃げようとしたザンギエフさん達を、オリガさんは見逃しません。
 オリガさんにロックオンされたら、絶対に逃げ切れない気がしました。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。