小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
247 / 584
第五章 シークレア子爵領

第三百四十二話 今日は重症者の治療をします

しおりを挟む
 ビクターさんが実際に僕とシロちゃんがどんな治療をしているか見てみたいそうなので、翌日午後の軍の施設での治療はビクターさんが施設に到着してから行います。
 僕は昼食を食べ終えたら、シロちゃんと一緒に軍の施設に向かいます。

「はい、お願いします」
「確認しました。どうぞ中に入って下さい」

 僕とシロちゃんは、冒険者カードを門兵さんに確認して貰って軍の施設の中に入って行きます。
 今日も沢山の海軍の人が忙しそうにしているのを横目で見ながら、僕は治療施設に入ります。

「レオ君、こんにちは」
「こんにちは、宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくね。総司令官は、まだこちらに来ていないわ」

 昨日僕とシロちゃんと治療施設内で一緒だった、治療担当の女性が僕を出迎えてくれました。
 ビクターさんはまだ来ていないので、玄関から見える大部屋を覗き込みます。

「もう新しい人が入院しているんですね」
「ここのところの帝国との小競り合いで、寮内で療養している人も多いのよ。ベッドが午前中に全て空いたから、寮内で療養していた人が入ってきたのよ」

 うーん、こんなに怪我人が多いのはちょっと問題だよね。
 ポーションとかの供給は、十分なんだろうか?

「レオ、良い所に気がついたな。怪我人が多くて、船に積んであるポーションが一時的に不足した。今は、だいぶ供給が追いついてきたがな」

 僕の後ろから、ビクターさんが部下を引き連れながら声をかけてきました。
 一時的にポーションの需要が増えちゃったから、怪我人の治療が追いつかなくなっちゃったんだ。
 今は改善しているって事なので、ひとまず安心です。
 人が揃ったので、僕たちは三階の個室から治療する事になりました。
 治療対象のリストに書いてあるけど、今日は三階の個室に入院している五名を治療します。
 まずは、左腕を肘先から欠損している人です。
 どうも、相手の剣で受けた傷が原因で切断しないとならなかったそうです。
 昨日の治療施設全体にかけたエリアヒールで、欠損部以外の怪我は治っています。

「じゃあ、治療を始めます。魔力を溜め始めますね」

 シュイン、シュイン、シュイン。

 ベッドに横たわっている人を中心に、複数の魔法陣が展開しました。
 ビクターさんたちが、何だか汗をかきながらビックリしていた。

「何だ、こ、この魔法陣の数は。とんでもないが、今まで見た魔法なんて比じゃないぞ」

 どうも、僕とシロちゃんが魔力を溜めている時に発動した魔法陣の数にビックリしているんだね。
 でも、昨日のエリアヒールの方が魔法陣の数は多かったんだよなあ。

「では、回復魔法をかけますね」

 ぴかー!

 怪我をしている人を中心に、眩しい光が個室を包み込みます。
 魔法も手応えがあったけど、果たしてどうかな。

「そ、そんな馬鹿な。腕が生えているぞ」
「自分の生命力を複製して相手に与える聖魔法の特徴と、患者さん自身の回復力を高める回復魔法の特徴を上手く組み合わせてみました。聖魔法の力が必要なので、シロちゃんに助けて貰っています」
「原理は分かったが、そう簡単に目の前で実現されてしまうと戸惑うものがある」

 ビクターさんだけでなく、部下の人も付き添いの女性もまだ目の前で起きたことを飲み込めていなかった。
 でも、まだまだ治療しないといけないひとが沢山いるから、今度は隣の個室に向かいます。

「あっ、この人は右手の手首から先が無いんですね」
「この方も剣で受けた傷が元です」

 船の戦いでも、剣で切り合うんだ。
 だから、大怪我をしちゃうんだ。
 とはいっても、さっきの人ほど魔力は使わないので、サクッと治療しちゃいましょう。

 シュイン、シュイン、ぴかー!

「はい、これで大丈夫です。リハビリをしっかりとしないと駄目ですね」
「はっ、はい。伝えておきます」

 うん、やっぱり身体能力強化の魔法の特訓のお陰で、魔力制御が上がっているよ。
 この人も、以前より少ない魔力で治療できました。
 こんな感じで、残りの人も治療していきました。
 三十分で、三階の個室に入院していた重症者は全員治療完了です。
 僕たちは、再び玄関に移動しました。

「こんな感じで、サンダーランド辺境伯領やディフェンダーズ伯爵領で兵の治療していました。無理をしないように、重症者は数人ずつですけど」
「帝国との前線が急に盛り返したと聞いていたが、これだけの治癒師がいれば納得だ。人に無理をさせなくて済むし、何よりも士気が違う」

 僕もシロちゃんも無理をしないで治療していたけど、このくらいなら余裕で出来る様になりました。
 やっぱり、怪我は早く治した方が良いよね。

「今週あと二日は、重症者の治療を進めます。来週初めに、また大部屋の人の治療を行います」
「その方針で問題ない。ははは、これだけの魔法使いだ、相手にしたくないな」

 ビクターさんが僕の頭をポンポンとしていたけど、僕もあまり攻撃魔法は使いたくないんだよね。
 やっぱり笑顔になって欲しいから、回復魔法や生活魔法とかを使うのが僕は好きだよ。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。