上 下
245 / 515
第五章 シークレア子爵領

第三百四十話 今日の昼食は大好物です

しおりを挟む
 お手紙を出し終えた翌日、僕はいつも通り造船場に向かいます。
 今日は、ザンギエフさんが宿のお仕事で不在です。
 モゾロフさん達とダリアさん達と一緒に、宿から造船場に歩いていきます。

「レオ、確か午後から軍の施設で軍人の治療をするんだってな」
「はい。前からビクターさんに頼まれていた件です。昼食を食べ終わる辺りで、お迎えがくるそうです」
「帝国との緊張もあって、軍も緊張状態だからな。怪我人も複数出ているだろう。確か会場でも小競り合いがあったって、この前かわら版に書いてあったぞ」

 モゾロフさんと歩きながらお喋りしていたけど、帝国と領海を巡って小競り合いがあったんだって。
 サンダーランド辺境伯領とディフェンダーズ伯爵領でも小競り合いは続いているみたいだし、色々なところでまだまだ争いが続きそうだよ。

「ああ、その話は俺も聞いたぞ。今は帝国と船の力でも互角だから、戦力が拮抗した状態らしいな」
「俺達が作った船がないと、帝国から俺達を守る事ができない。人殺しの道具って言われてもしょうがないがな」
「難しいな。俺達がやらないと、子どもが帝国に殺されてしまうんだ」

 休憩時間に、職人さんが溜息を漏らしながら話をしていました。
 答えが見つからない難しい問題だけど、職人さん達が頑張らないと人も街も国も守れないって思っている。

「レオ、こういうのは大人が責任を取ればいい。目の前の仕事に集中して、少しでも国が良い方向に向かえば良いんだよ」
「おっ、モゾロフも良い事を言ったな」
「レオと接して、モゾロフも少しばかり成長したな」
「レオは年齢以上に大人びてるから、モゾロフにはちょうどいいのかもしれないな」

 モゾロフさんが真面目な事を言って、他の職人さんに茶化されていました。
 でも、モゾロフさんの言う通り、僕は目の前の仕事に集中すれば良いんだ。
 そう気持ちを切り替えて、僕は午前中のお仕事を終えました。

「はいよ、今日はトマトパスタだ」
「わあ、良い匂いです! 僕、トマトパスタ大好きなんです」
「黒髪の天使様はトマトパスタが大好きって、有名な話だからな。沢山食べな」

 今日の日替わり定食は、僕の大好物でした。
 思わず、僕もシロちゃんもテンションが上がっちゃいました。

「レオも、好物の前ではテンション高いな」
「ははは、そうだな。子どもらしい反応だ」
「こう見ると、黒髪の魔術師も小さな子どもって訳だな」

 トマトパスタを夢中で食べる僕とシロちゃんの事を、職人さんもニコリとしながら見ていました。
 うん、トマトの味だけじゃなくてお肉もとっても美味しいよ。
 食堂のおばちゃんの腕も凄いけど、お手伝いのダリアさん達の料理の腕もとっても良いよ。
 ちょっと色々な事を考えちゃっていたけど、一気に色々な事が吹き飛んじゃった。

「「「ニヤニヤ」」」
「おい、お前ら。強面ズラがデレデレになると、気味が悪くてしょうがないぞ」
「「「ニヤニヤ」」」

 僕とシロちゃんは、周囲の事を全く気にしないでトマトパスタを食べていました。
 そんな僕とシロちゃんの事を職人さんが顔をデレデレにして見ていて、食堂のおばちゃんがツッコミを入れていました。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。