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第五章 シークレア子爵領

第三百三十六話 オリジナルスタンプを作ります

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 ザンギエフさん達に色々とあったけど、僕は僕でやらないといけない事があります。
 それは、お手紙をいっぱい書く事です。
 今日は安息日で何もやる事がないので、ちょうど良いタイミングです。

「えーっと、まずはお手紙をくれたフランソワーズ公爵家の人たちに書かないといけないね」

 フランソワーズ公爵様とターニャさん、もちろんクリスちゃんにもお手紙を書かないと駄目だね。
 書きたいことがいっぱいあって、何を書けばいいか迷っちゃうなあ。
 シロちゃんも、どんな手紙を書けばいいか悩んでいるみたいです。

「えーっと、僕もお世話になった事と、クリスちゃんが王都に帰ってからの事を書けば良いかな。よーし、頑張って書いてみよう!」

 かきかきかきかき。

 僕は、何となく書くことが決まったので手紙にどんどんと書いていきます。
 シロちゃんも書くことが決まったみたいで、物凄い勢いで書いていました。

 かきかきかきかき。
 かきかきかきかき。

「できた!」

 ちょっと間違っちゃったところもあったけど、僕もシロちゃんもお手紙が書けました。
 封筒に宛先を書いて、書いた手紙を入れて。

「あれ? どうやって封筒を閉じれば良いんだろう?」

 確かフランソワーズ公爵家から僕宛の封筒には、ロウで閉じてあったような。
 こういう時は、大人に聞いてみよう。
 便せんを魔法袋に入れて、宿の住居エリアに向かいます。

「あっ、ユリスさん。ちょっと聞きたい事があるんですけど良いですか?」
「おう、俺で分かることなら良いぞ」

 外から宿の中に入ってきたユリスさんに、さっきの事を質問してみよう。
 因みに、ザンギエフさん達はダリアさん達と一緒にシーツとかのお洗濯をしているんだって。
 仲良しになって、とっても良いですね。

「あの、フランソワーズ公爵家から僕宛の封筒にはロウで蓋をしてあったんですけど、どうすれば封筒にロウで蓋をすれば良いんですか?」
「蝋封の事だな。誰かが手紙を見ないようにする為の対策でもある。熱いロウを垂らして、貴族などは紋章入りのスタンプをするぞ」

 確かにフランソワーズ公爵家から貰った封筒には、紋章みたいなのが押してあったね。
 僕だと、どんなスタンプにすれば良いのかな?

「必要な物は、全て商会で揃うぞ。そうだな、昼食は息子が作るみたいだし俺がついていくか」

 おお、今日の昼食はザンギエフさん達が作ってくれるんだ。
 昼食も、とっても楽しみになったよ。

「おーい、レオと一緒に商会に行ってくるぞ」
「あっあなた、ついでにこれも買ってきてね」

 ユリスさんは外にいたオリガさんに声をかけると、お買い物を頼まれたみたいです。
 いざ、商会へ出発です。

「わあ、前よりも沢山の人が市場にいますね」
「荒波一家が壊滅した影響が、徐々に出てきている。前はもっと人が多かったから、これからもっと増えるぞ」

 とっても賑やかな市場を眺めながら、僕はユリスさんと手を繋いで歩いています。
 シロちゃんは、定位置の僕の頭の上です。
 時折、ユリスさんに声をかける市場の人もいますね。
 宿から少し歩けば、目的地の商会に到着です。

「ユリスさん、いらっしゃいませ。孫を連れてきたのかと思いました」
「はは、そういう年だからな。孫は、早くても数年先だろうな」

 商会に着くと、僕がユリスさんの孫って思われちゃったね。
 確かに、ザンギエフさん達は成人をとっくに過ぎているから、子どもがいてもおかしくないんだ。

「オリガからの頼まれものだ。あと、レオからも頼みがある」
「あの、封蝋する為の道具を下さい」
「畏まりました。準備しますので、ソファーに座って待って下さい」

 店員さんはユリスさんが手渡したメモと僕の封蝋を探しに、店の奥に入って行きました。
 そして、応接セットに座った僕たちに、別の店員さんがお茶を出してくれました。

「しかし、もう手紙を書いたのか。関心だ」
「僕もシロちゃんも、まだフランソワーズ公爵家宛の手紙しか書いていません。他の方々へはまだなんです」
「書くだけ上等だ。息子も娘も、文字を書くのが嫌いだから書くことはないぞ」

 宿もお店だから、売上計算や税金を納める為に帳簿をつけないと駄目なんだって。
 でも、ザンギエフさん達は読み書き計算はできるそうです。

「お待たせしました。まず、ユリスさんの品物になります」
「おう、ありがとさん。領収書も預かるぞ」

 ユリスさんに、沢山の商品が詰まった大きな袋が手渡されました。
 そして、僕の前にも綺麗な箱に入った蝋封セットが置かれました。
 更に、蝋封に使う色付けされたロウも予備として準備してくれました。
 ここで、店員さんがとある事を提案しました。

「レオ君はとても有名だから、偽物の手紙が出回るかもしれないわ。オリジナルのスタンプを作った方が良いわ」
「俺もその意見に賛成だ。レオ本人と分かるスタンプを作ったほうが良いだろう」

 ユリスさんも、店員さんの意見に賛成しています。
 でも、オリジナルのスタンプってどんなデザインにすれば良いのかな。
 僕は貴族みたいな紋章は無いし、かといってセットにあるみたいに本やペンみたいなものじゃ直ぐにコピーされちゃいます。
 すると、シロちゃんがアイテムボックスから紙とペンを取りだして、何か書き始めました。

 かきかきかきかき。

「わあ、シロちゃんのデザイン凄いね!」
「これなら、直ぐにレオ君と分かりますね」
「ははは、中々面白いデザインだな」

 シロちゃんが考えたのは、魔法使いの帽子を被ったスライムでした。
 とっても分かりやすいし、スライムを連れている魔法使いって僕だけだろうね。

「では、このイラストを元にスタンプを製作します。紋章に似せるように、もう少し手直ししますね。それまでは、別の紙などでスタンプを押す練習をしていた方が良いでしょう」

 僕は商会の人にお金を払って、スタンプ作製をお願いしました。
 ふふふ、僕もシロちゃんもどんなスタンプが出来上がるかとっても楽しみです。
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