小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第五章 シークレア子爵領

第三百二十四話 スラム街での治療を始めます

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 予定通り、翌日はスラム街での無料治療を行います。
 僕とシロちゃんは、朝食を食べたらザンギエフさんと一緒にスラム街に向かいます。

 ざっ、ざっ。

「何だか、街の人の表情も明るくなっていますね」
「荒海一家が壊滅して、街の人も喜んでいるだろう。犯罪行為の大半が、荒海一家のせいだといわれていたからな」

 早朝の街中を歩いているけど、市場の人も商店街の人もニコニコしています。
 ザンギエフさん曰く、窃盗や強盗なども荒海一家は行っていたそうです。
 荒海一家がそんな酷い事をしていたなら、街の人も嫌だっただろうね。
 そしてスラム街についても、その話が続きました。

「荒海一家は人の弱みに付け込むのが上手くてね、貧しい人たちを上手く利用していたんだよ」

 男の子のお家に行ってお母さんの体調を見た時に、お母さんがしみじみと話してくれました。
 因みに、男の子たちはもう造船所に行っています。
 荒海一家は特にスラム街の人たちを使っていたらしく、協力を断って殺されちゃった人もいるそうです。

「守備隊の巡回も増やしてくれるそうだし、領主様が新たな仕事を作ってくれる。これから、この辺りも良い方向に向かって行きそうだよ」
「当分は、何よりも治安維持と正しい仕事だな。キチンとした仕事をしないと、また悪の誘いが忍び寄ってくるってもんだ」

 お母さんも苦労しているし、ザンギエフさんも冒険者活動と宿のお仕事の二つを頑張っている。
 犯罪を生業にしないで済む環境造りが大事だね。
 こんな事をみんなで話していたら、僕たちにお客さんがやってきたよ。

「レオ君、お待たせ。こちらの準備もできたよ」

 男の子のお家に入って僕に声をかけてきたのは、守備隊長のマックスさんでした。
 守備隊の準備もできたらしいので、僕たちはお家の外に出ました。

「あっ、ちょっと大きめなテントができていますね」
「あのテントの中で、レオ君とシロちゃんに治療をしてもらう。中には簡易ベッドが二つあるから、それぞれが診察できるようにしてあるよ」

 具合の悪い人とかは、ベッドに寝てもらった方が良いよね。
 簡易ベッドがあった方が良い場合もあるから、今度商会に行って診察用に二つ買っておこう。

「教会からシスターも派遣して貰った。何かあったら、シスターか護衛につく守備隊員に報告してくれ」
「あっ、もしかして元々教会で無料治療をする予定だったから、シスターさんが来てくれたんですか?」
「それも理由としてあるが、レオ君の起こす奇跡を目の当たりにしたいらしいよ」

 うーん、そんなに奇跡を起こした事はなかったと思うけどなあ。
 こういう時は、普通に治療をすれば良いはずだ。

「ザンギエフは、予定通り空き家の撤去作業をお願いする。後ほど、作業員と屋敷からの担当者が来る予定だ」
「おう、任せてくれ。解体って、意外と頭を使うんだよなあ」

 ザンギエフさん曰く、ただ壊せばいいってわけじゃないんだって。
 先に色々な物を取り外してから、解体するそうです。
 僕の魔法だと大雑把にしか壊せないから、ここはザンギエフさんにお任せですね。

「悪いが、レオ君にはさっそく治療をしてもらいたい。ちょっと具合の悪い老人が、既にテントの中にいるんだよ」

 ええ、それは大変です。
 一刻も早く治療しないと。

「ザンギエフさん、マックスさん、僕とシロちゃんはテントの中に入りますね」
「こっちは気にするな。レオはレオの仕事をすれば良いからな」
「私も、解体の件でザンギエフと話がある。すまんが頼んだぞ」

 僕とシロちゃんは、二人に手を振ってから走ってテントの中に入りました。
 テントの中には、護衛をしてくれる守備隊の人が二人にシスターさんが二人いました。
 そして、簡易ベッドにはとても具合の悪そうな白髪のおじいさんが寝ていました。
 おじいさんは痩せ細っていて、とても具合が悪そうです。

「おはようございます。僕はレオで、このスライムはシロちゃんです。さっそくおじいさんの治療をします」
「来て早々で悪いわね。レオ君、頼むよ」

 年配のシスターさんが祈りながら僕に話しかけてきたけど、ここはスピード命です。

 シュイン。

 さっそく僕は、おじいさんに軽く魔法を流して体調を確認しました。
 あっ、これはまずいかも。

「おじいさんの体中に淀みがあります。シロちゃん、一緒に魔法を使おう」

 僕とシロちゃんは、魔力を溜め始めました。
 今回は欠損部分の再生をするくらいに、全力で魔法を使わないと駄目だ。

 シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。

「な、何という魔法なのだろうか。こんなにもの魔法陣が現れるとは……」
「まだ魔法を発動していないのに、凄い力が集まっています」

 護衛の守備隊の人がおじいさんを中心にして現れた複数の魔法陣にビックリしているけど、今はそんな事を気にする余裕はありません。

「いっきまーす!」

 シュイン、ぴかー!

 十分に魔力が溜まったところで、僕とシロちゃんは回復魔法をおじいさんにかけます。
 テントの中が、回復系の青っぽい光と聖魔法系の黄色っぽい光で包まれました。
 守備隊の人とシスターさんが眩しい光を手で遮っているけど、僕とシロちゃんはおじいさんを見ながら魔法を放ち続けます。
 そして、僕とシロちゃんが放った魔法が落ち着くと、テントの中は普通の明るさに戻りました。

「すう、すう、すう……」
「ふう、これで大丈夫ですけどだいぶ体力を失っていますね。ちゃんと食事をしないと」
「あっ、はい、分かりました……」
「そ、そんな。天に召される間近の状態だったのに……」

 僕が年配のシスターさんと若いシスターさんにおじいさんの事を伝えたんだけど、二人とも信じられない表情をしているよ。

「すみません、おじいさんはもう少し寝ていると思うのですけど、どうすれば良いですか?」
「あっ、我々がこの方を担架に乗せて家まで運びます」
「レオ君とシロちゃんは、少し休んでてくれ」

 直ぐに守備隊の人がおじいさんを担架に乗せて、お家まで運んでくれました。
 これなら一安心だね。
 流石に大魔法を使った後なので、僕とシロちゃんは守備隊の人が戻ってくるまで簡易ベッドに座って休む事にしました。
 でも、おじいさんの病気を治せてとても良かったです。
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