小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第五章 シークレア子爵領

第三百九話 賑やかな朝の一幕

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 ピピピピ、ピピピピ。

「うーん、もう朝だ……」

 シークレア子爵領について二日目の朝、僕は懐中時計型魔導具のアラームで目が覚めました。
 今日から、いよいよ軍船作りのお手伝いが始まるね。
 シロちゃんも起きて、ふるふるとしています。
 ふわーって伸びをしてから、僕は着替え始めました。
 念の為に、今日の訓練は簡単な物にしないと駄目だね。
 訓練の後は、美味しい朝食が待っているよ。

「はい、朝食よ。いっぱい食べてね」

 訓練を終えて食堂に行くと、今日もニコニコのオリガさんが待っていてくれました。
 夕食の残りも使った朝食だけど、とっても美味しいね。
 他にも、宿に泊まっている人も朝食を食べていました。
 ちょっと顔色が悪い人は昨晩見なかったから、街の食堂で沢山お酒を飲んでいた人だね。

「あれ? ザンギエフさん達はまだ寝ているんですか?」
「あの子は、とっても朝が弱いのよ。ナディアちゃんが起こしに行ったから、そろそろ起きてくるはずよ」

 あらら、ザンギエフさん達は朝が弱いんだね。
 他の人も起きてこないから、四兄弟みんな朝が弱いんだね。

「おにーちゃん、いつまで寝ているの!」
「あたー!」

 あっ、厨房奥の住居スペースから大きな叫び声が聞こえてきたよ。
 ナディアさんは、遠慮なく兄を起こしているんだね。
 暫くすると、頭を痛そうに押さえているお兄ちゃん達に、フライパンを片手にぷりぷりしている妹がやってきたよ。

「ナディア、起こすならこの方法以外にしろって言っただろうが」
「お兄ちゃんが、いつまでも寝ているのが悪いんだよ」

 朝の起こし方で言い合いをしているけど、基本的には仲の良い兄妹なんだね。

 パンパン。

「はいはい、じゃれ合いはそこまでにして朝食を食べてね」
「「「「「ぐう……」」」」」

 そして、大人の余裕って感じでオリガさんがあっという間にこの場をおさめました。
 言い合いをしていた兄妹は、ちょっと悔しそうな顔をしながら席につきます。
 他のお客さんも特に気にしていないから、いつもこんな感じなんだね。
 そんな事を思いながら、僕とシロちゃんは朝食を食べ終えました。

「いってきまーす」
「行ってくるぞ」
「気をつけてね」

 朝食を食べ終えて準備ができた所で、僕たちはオリガさんに見送られながら軍船を作る造船所に向かいます。
 本来ならザンギエフさん兄弟の誰かが宿の仕事で残るのですが、今日は僕の仕事初日ってのもあるので皆がついてきてくれました。
 宿から造船所までは、歩いてもそんなに時間はかからないそうです。

「わあ、沢山の船が港にありますね。お魚を、沢山獲ってきていますよ」
「漁は朝早くから行うから、いま港に集まっているのは、もう海から帰ってきた船だな」

 わあ、漁って朝早くからやるんだね。
 だから、お魚を沢山積んで戻ってきたんだ。
 そして、処理をして美味しい食事になるんだね。
 そんな事を思っていたら、目的地に到着です。
 大きな門をくぐると、大きな敷地が広がっていました。

「ほら、もう着いたぞ。まずは事務所に行くか」
「わあ、とても人が多いですね。それに、色々な木材が置かれているんですね」
「ドックで船を作るための木材だ。組み立ては専門の職人が行うが、木を切る作業なんかは冒険者も良く手伝うぞ」

 大きな造船所に着いて、既に沢山の人が働いているのにビックリです。
 木材も沢山置かれていて、既に職人が木を加工していました。
 そんな大勢の人の中を、僕たちは事務所に向かって歩いて行きました。
 事務所は、レンガ造りの二階建ての建物です。

「おはようございます」
「おお、おっちゃんがいたか。レオを連れてきたぞ」
「おっ、ザンギエフ達か。話は聞いているぞ。二階の会議室に行ってくれ」

 一階にある受付にいたおじさんとも、ザンギエフさん達は知り合いなんだね。
 僕とザンギエフさん達は、階段を上がって二階の奥にある会議室に向かいました。
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