小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百九十一話 お世話になった人への挨拶

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 僕は急遽決まった出発の挨拶をする為に、色々な所をまわっています。
 最初は教会に行きます。

「そうか、とうとう出発するのか。多くの人を救って貰い、儂も感謝する。奇跡を目の当たりにしたのは、一生忘れないぞ」
「レオ君のおかけで、この街もとても良くなったわ」
「会えないのは寂しいけど、レオ君の武勇伝は直ぐに伝わるでしょう」

 ちょうどブラッドリーさんが教会にいたので、治療院でお世話になったシスターさんも含めて挨拶をします。
 そういえばすっかり忘れちゃっていたけど、僕の噂って直ぐに色々な所に伝わるんだよね。
 次は、守備隊の詰め所です。
 村を襲ったオークの件で、守備隊の人にもお世話になったもんね。

「世話になったのは俺達の方だ。怪我人を何人も治して貰ったしな」
「それに、オークキングも結局レオ君と二つ名を持つ冒険者が倒したもんな」
「俺等もまだまだだと、改めて思ったぞ。訓練も激しさを増している」
「黒髪の魔術師は剣技も凄いって事だけど、本職の俺達が負けちゃいけねーな」

 守備隊の人が、次々と僕の頭を撫でていきました。
 僕も、守備隊の人に負けないように剣の練習を頑張らないとね。
 勿論、シロちゃんもやる気満々です。
 商店街の人にも挨拶をしていきます。

「レオ君、この前はありがとうね。あのお母さんもすっかり元気になってね、来週には職場復帰できそうよ。このパンを持って行って、道中で食べてね」
「レオ君のおかげで、アクセサリーも沢山売れたわ。黒髪の天使様お墨付きって効果は絶大ね」
「またこの街に来いよ。皆で歓迎してやるよ」

 商店街の人も、僕の事にお土産を持たせてくれたりととっても親切にしてくれました。
 個人的には、パン屋さんであの女の子のお母さんが元気になったと聞けたのがとっても嬉しいです。
 さてさて、午前中はこのくらいにして午後からはお屋敷に行かないといけないですね。
 僕はミシャさんのお家に戻って、昼食を食べに行きました。

「やあ、良く来たね。座ってくれ」

 昼食を食べてから、僕とシロちゃんはボーガン様のお屋敷に向かいました。
 直ぐに応接室に案内してもらい、応接室には既にサンダーランド辺境伯家の面々とマリアナさんがいました。
 早速僕とシロちゃんは、マリアナさんに昨夜作ったピンブローチを手渡しました。

「僕とシロちゃんが一生懸命に作ったピンブローチです。先生、色々な事を教えてくれてありがとうございます」
「まあ、幸せが訪れるという黒髪の天使様が作ったピンブローチを頂けるなんて。私こそ、レオ君に色々な事を教えて貰ったわ。本当にありがとうね」

 マリアナさんは、とっても嬉しそうにピンブローチを受け取ってくれました。
 僕もシロちゃんも、このピンブローチは中々の出来だと思うよ。
 マリアナさんには、礼儀作法とか歴史や地理とか色々な事を教えて貰ったね。
 教わった事は、冒険者活動にとっても役に立ちそうだよ。

「私達も、明日は用事があって見送りができない。シークレア子爵宛の手紙と我がサンダーランド辺境伯家の紋章が刻まれたメダルは、今のうちにレオ君に渡しておこう」
「ありがとうございます。大切にお預かりします」
「レオ君が我が領に来てくれて、怪我人の事といい村の事といい本当に助かった。我が領は帝国と国境を接しているので、今後もレオ君の力を借りる事は十分にありそうだ」

 僕も、何となくサンダーランド辺境伯領にはまた来る可能性があるなって思っているよ。
 王国が帝国と紛争を起こさない事が一番良いんだけど、シークレア子爵領で軍船を作るのを考えるとそう上手く行かないんじゃないかなって思っています。
 国同士の関係って、本当に難しいですね。

「もしレオ君が辺境伯領にまた来るのでしたら、その頃は孫も元気よく走り回っていそうですわね」
「そうですね。こんなにも元気に大きくなっていますし、僕もアンソニーちゃんと遊んであげたいです」
「ええ、そうしてあげてね。きっとアンソニーも喜ぶと思うわ」
「もしまた我が家に来る事があれば、その時は我が家をあげてレオ君の事を歓迎しよう」

 僕とシロちゃんは、チェルシーさん、スーザンさん、マシューさんとも握手をします。
 残念ながら、アンソニーちゃんはお昼寝中だそうです。
 でも、次は大きくなった姿で会えるかもね。
 ボーガン様達はこの後用事があるそうで、僕も早めにお屋敷を後にしました。
 
「ただいま戻りました」
「おかえり、レオ君。皆に挨拶出来たかな?」
「今日の夕食は、フレアの家族も一緒に食べる事になったわ」

 ミシャさんのお家に戻ると、フレアさんとミシャさんが僕を出迎えてくれました。
 わざわざフレアさんの家族が夕食に来てくれるなんて、とっても嬉しいです。
 直ぐに夕食だそうなので、部屋に行って後片付けをして食堂に移動しました。
 食堂にはミシャさんのお父さんお母さんに、フレアさんのお父さんお母さんが席に座っていました。

「すみません、遅くなりました」
「いやいや、こちらが早く夕食を準備したから何も問題ないぞ」

 ミシャさんのお父さんがお酒の入ったグラスを持ちながら、ニコリとして話しかけてくれました。

「ごほん。では、明日に迫ったレオ君の新しい門出を祝って乾杯とする。乾杯!」
「「「乾杯!」」」

 皆がグラスを持った所で、ミシャさんのお父さんが乾杯の音頭を取りました。
 そして、とっても美味しい夕食が出てきました。

「わあ、とっても美味しそうですね。どれから食べればいいか、凄く迷っちゃいます」
「それは良かった。慌てなくても良いから、ゆっくり食べると良い」

 僕とシロちゃんは、一つ一つの料理を味わって食べています。
 うん、今までで一番なくらいとっても美味しいですね。

「ははは、こう見るとレオもまだまだ子どもだな」
「ええ、そうですね。奇跡を起こす黒髪の天使様も、目の前の料理に夢中ですね」

 フレアさんのお父さんとお母さんは、お酒を飲みながら僕とシロちゃんが食べている様子を見てニコニコとしていました。
 美味しいものは、やっぱり美味しいもんね。

「レオ君が来てから、フレアもミシャも良い事だらけだわ。ミシャの病気は、教会では治らないかもと言われていたのよ」
「えっ、そうなんですか? でも、確かに普通のポーションとかでは難しかったかもしれないですね」
「ええ、そうなのよ。ミシャの病気を治すどころか手足の欠損まで再生するなんて、やっぱりレオ君は凄いと思ったわ」

 ミシャさんのお母さんは、やっぱりミシャさんの病気の事で悩んでいたんだね。
 僕も治療が上手くいって、ミシャさんが元気になったのはとっても嬉しいです。

「私達も二つ名を持っているけど、やっぱりレオ君は遥かに凄いって実感したわ」
「でも、僕はオーク退治でもフレアさんとミシャさんの指示に従っていただけですよ」
「勿論、レオ君がやりすぎない様に様子をみていたわ。レオ君に足りないのは、経験と周りを見て判断する能力ね」

 フレアさんとミシャさんとは村でのオーク退治の話をしていたけど、確かに僕は経験と周りをみる事が不足している。
 フレアさんとミシャさんは、そんな僕の欠点を補う様に対応してくれていたんだね。
 もっともっと、冒険者として経験を積まないと駄目だね。
 こうして、遅くまで楽しい夕食は続いていきました。
 サンダーランド辺境伯領最後の夜は、とっても楽しかったね。
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