小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百八十一話 花祭りが始まりました

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 遂に花祭りの当日になりました。
 今日から一週間、周辺の街からも数多くの観光客がサンダーランド辺境伯領にやってきます。
 街もとても活気に満ちていて、何だかとっても明るい雰囲気です。

 あみあみあみ、ポチポチポチ。

「リース二つ下さい。あと、お花のピンブローチも一つ下さい」
「はい、おつりです。ありがとうございます」
「お次の方、どうぞ」

 そんな中、僕とフレアさんとミシャさんが担当する出店は、予想以上の人が押し寄せています。
 余りにもお客さんが凄いので、ミシャさんの商会で手が空いている人に列の整理をして貰っています。
 僕もシロちゃんも、店頭で一生懸命リースとピンブローチを作っています。
 もうね、作っても作っても直ぐに売れちゃうんだよ。
 フレアさんとミシャさんもリースを作ってくれるけど、それも直ぐに売れちゃいます。

「本当に凄い人の列ですね」
「多分、初日だからだと思うわ。先にレオ君とシロちゃんが作った物を買おうとしているのね」
「売り切れちゃうと思っているのかな。材料は沢山あるから、売り切れる事はないと思うわ」

 フレアさんとミシャさんがリースを作りながら話してくれたけど、他の出店よりも圧倒的に僕の出店に人が集まっています。
 リースやピンブローチを買った人は、今度はフレアさんとミシャさんの出店に入って行きます。
 と、ここでミシャさんのお父さんが僕達の出店にやってきました。

「ははは、これは凄いね。さすが黒髪の天使様の出店だ」
「あっ、もしかして周りの出店やお店に迷惑をかけちゃっています?」
「それは大丈夫だよ。それよりも、ついでにこいつを配ってくれないかな」

 ミシャさんのお父さんが持ってきたのは、大量の会場案内図の紙だった。
 僕の出店に沢山の人が集まっているから、ついでに他の出店やお店の宣伝をしちゃおうって事なんだね。

「はい、会場図案内図ですよ。他にも沢山のお店がありますよ!」
「あら、わざわざありがとうね」
「へえ、こんな店もあるんだ」

 僕とシロちゃんは、手の空いたタイミングでリースやピンブローチを買ってくれた人に会場案内図を配ります。
 そして買い物を終えたお客さんは、会場案内図を手にとって他のお店にも行っています。
 ミシャさんのお父さんの読み通り、色々なお店にお客さんが行きました。

「でも、まだまだ沢山のお客さんが並んでいますね」
「こればかりはしょうがないだろう。なんせ、黒髪の天使様が自ら商品を作っているのだからな」

 ミシャさんのお父さんからも、今回ばかりは仕方ないって言われちゃったよ。
 僕もシロちゃんも、休憩を挟みながらリースとピンブローチを作って行きます。

「ふう、ようやく人が少なくなりましたね」
「そうだね。昼食の時間になったのもあるわね」
「私達も昼食にしましょう。その間は、お店も休憩中にしましょう」

 昼食時になって、ようやくお客さんが途切れました。
 売上金などは直ぐにミシャさんの商会に運んでいるし、安全対策をしています。
 休憩中もミシャさんの商会の人が出店に居てくれるそうなので、僕達はミシャさんのお家で昼食を食べます。

「正直な所、予想以上の売上だわ。半日だけど、一週間分の売上でもおかしくないわね」
「でも、レオ君の作ったリースとピンブローチが欲しい人はまだまだいるわ。午後も頑張らないとね」

 お金の事は分からないけど、沢山のリースとピンブローチが売れたのは僕とシロちゃんも分かります。
 フレアさんとミシャさんもまだまだこれからって言ってるし、僕もシロちゃんも頑張ってリースとピンブローチを作らないとね。
 僕とシロちゃんが作った物で買った人が喜んでくれるのは、僕とシロちゃんにとってもとても嬉しいんだよね。
 気合を入れて、午後も頑張っちゃいます。

 あみあみあみ、ポチポチポチ。

「ふう、午後も沢山の人でいっぱいだね。おや? あれはなんだろう?」
「何だかざわざわしているけど、トラブルでもあったのかな?」

 再びフレアさんとミシャさんと一緒にリースとピンブローチを作っていたら、広場の方がざわざわとしているのに気が付きました。
 フレアさんも、なんだろうって思っています。
 すると、ミシャさんが何かに気が付きました。

「あっ、窃盗だわ。こっちに犯人が向かっているわよ」
「人の多さにつけこんで、犯罪を犯したんだね。ひい、ふう、みい、よう、全員で五人だね」

 なんと、広場からこちらに向かって走ってくるのは、如何にも怪しい服装をした集団窃盗犯でした。
 フレアさんとミシャさんだけでなく、僕とシロちゃんも出店から通りに出ました。

「ちっ、邪魔だ邪魔だ。どきやがれ!」
「おら! 刺されたくなければ、道を開けろ!」
「きゃあ!」
「ぐっ……」

 あー!
 窃盗か刃物を振り回して逃げるから、怪我をしちゃった人もいるよ。
 こんな事をしちゃ駄目なんだよ。
 僕とシロちゃんは、魔力を溜めました。

 シュイン、シュイン、シュイン。

「えーい!」

 バキッ、ずさー。

「がっ、何だこれは?」
「痛っ、ちっ全く動けねーぞ!」

 僕とシロちゃんは、五人の窃盗犯をバインドで拘束します。
 突然バインドで拘束されたので、窃盗犯は派手に転んじゃいました。
 おお、顔面から転んじゃった犯人もいるね。

「全く、酷いことをするわね」
「大人しくしなさい」
「ぐっ、くそ」
「離しやがれ!」

 すかさずフレアさんとミシャさんが、窃盗犯を縄で拘束しました。
 フレアさんとミシャさんも、口調から察するにかなり怒っていますね。
 もうこれで大丈夫だと思って、僕はバインドを解除します。

「よっと、これで逃げられないですよ」

 がきーん。

「な、何だこれは!」
「魔法の檻かよ」

 逃げられたら困るので、窃盗犯を出店の前に集めてダークゲージで作った檻の中に入って貰います。
 これで、窃盗犯は大丈夫ですね。

「怪我をした人は、こちらに来て下さい」
「治療を行います」

 その間に、シロちゃんを抱いたフレアさんとミシャさんが、窃盗犯に切られて怪我をした人の治療を行います。
 幸いにして全員軽傷だったので、直ぐに治療は終わりました。

「出せ! ここから出しやがれ!」

 窃盗犯は後ろ手に拘束されて動けない上にダークゲージの中に入っていて、それでもまだギャーギャー騒いでいます。
 うーん、ちょっとうるさいなあ。

「レオ君、コイツ等うるさいから黙らせて」
「黙らせたら、出店を再開しましょう」

 フレアさんとミシャさんからもお願いされたので、僕は魔力を溜めました。
 周りの人も、うるさそうに窃盗犯を見ていますね。

 シュイン。

「いきまーす、えーい」

 バリバリバリ!

「「「「「ギャー!」」」」」

 ちょっと出力の高いエリアスタンを放つと、窃盗犯は叫び声を上げた後静かになりました。
 これで出店も再開できるね。

「じゃあ、やりましょうか」
「すみません、お待たせしました」
「「「「「あがががが……」」」」」

 こうして、窃盗犯は守備隊が引き取りに来るまでの間、出店前のオブジェになっていました。
 そして、午後も午前中と同じくらい忙しかったです。
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