小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百七十二話 今日は個室に入院している人の治療をします

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 翌朝、僕達は朝食を食べたらハルカさんと一緒に馬車に乗って治療院に向かう予定でした。
 でも、急遽追加の参加者が現れました。

「お母様、私も治療院に行きたいです!」
「そうね、一緒に行きましょうね。ヒカリ」

 赤髪のセミロングヘアの元気いっぱいの女の子が、僕達と一緒に同行する事になりました。
 ヒカリさんっていって、マゼラン様とハルカさんの子どもで今年十歳になるそうです。

「わあ、有名な紅のフレアさんと双剣のミシャさんがいるわ! 凄い凄い! あ、あの握手して下さい!」
「「ど、どうも……」」

 そしてヒカリさんはフレアさんとミシャさんのファンだったみたいで、物凄くテンション高くフレアさんとミシャさんと握手していました。
 テンションの高いヒカリさんの迫力に、フレアさんとミシャさんは完全に押されちゃっていますね。
 さあ、馬車に乗って治療院に向かいます。

 ガヤガヤガヤ。

「わあ、もう大部屋に怪我した人が入院しているんですね」
「レオ君が、沢山の人を治療してくれたからよ。もしかしたら、明日はまた大部屋に入院した人の治療をしてもらうかもよ」

 多くのシスターさんが忙しく働いているけど、まだまだ治療が必要な人がいるんだね。
 でも、この人達の準備が整っていないから、ハルカさんの言う通り明日じゃないと治療が出来ないね。
 さて、僕達は今日治療する個室に入ります。

「う、うう……」
「あっ、凄い怪我です……」

 複数箇所に怪我を負って包帯ぐるぐる巻きになっている怪我人を見て、ヒカリさんは思わずビックリしてハルカさんの服の裾を掴んでいました。

「ヒカリ、貴方は将来のディフェンダーズ伯爵家を背負うものです。目の前の現実を、しっかりと受け止めないとなりません」
「はっ、はい!」

 ここで、ハルカさんからのちょっと厳しめの激励が入って、ヒカリさんも少し表情を引き締めました。
 とはいっても、僕としては合体魔法を使わずに治せそうですね。

「では、早速治療しますね」

 シュイン、ピカー!

「ううぅ……。すうすう」
「はい、これで治療完了です。もう大丈夫ですよ」
「えっ、も、もう治療が終わったの?」

 僕が直ぐに治療を終えると、ヒカリさんは目を丸くする程ビックリしていました。
 付き添ってくれたシスターさんもビックリして思わず動けなかったので、代わりにフレアさんとミシャさんが怪我をした人の包帯を外していました。

「うん、傷は全て治っているわ」
「じゃあ、次の部屋に向かいましょう」

 流石は、フレアさんとミシャさんです。
 僕と一緒に何回も治療を手伝ってくれたので、とっても手早く対応してくれました。
 直ぐに次の部屋に移ります。

「こ、今度は両足を骨折していますわ。とっても辛そうです」

 次の部屋の人は、両足を骨折していて足を固定されていました。
 次は僕の番だと、シロちゃんがピョンと怪我した人の体の上に飛び乗りました。

 シュイン、きらー!

「えっ、えっ? す、スライムが回復魔法を使いましたわ」

 今度はシロちゃんが回復魔法を使ったので、またもやヒカリさんは目を丸くする程ビックリしちゃいました。
 正確には、シロちゃんの使うのは聖魔法なんだけどね。
 無事に両足の骨折も治ったので、今度は次の個室に移動します。

「あっ、て、手が無い……」

 今度の怪我人は、左手首から先を失っていました。
 ヒカリさんは、思わず絶句して口に手を当てていました。

「じゃあ、シロちゃん頑張ってやろうね!」

 僕とシロちゃんは、魔力を溜め始めます。
 流石に欠損部の再生は、合体魔法が必要だもんね。

 シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。

「な、なんですの? ま、魔法陣が沢山現れましたわ」

 合体魔法に加えて僕とシロちゃんの全力魔法なので、怪我人を中心にして沢山の魔法陣が現れました。
 僕としてはいつもの事なんだけど、ヒカリさんはとんでもなくビックリしちゃいましたね。

「いきまーす、えーい!」

 キラリーン!

 個室の中が、回復魔法の青っぽい光と聖魔法の黄色っぽい光で包まれました。
 直ぐに光は消えて、そして怪我人の手首から先も再生できていました。

「ふう、手首の再生だけでなくお腹の怪我も治しましたよ」
「流石に噂で聞くのと実際に目で見るのとでは、受け止め方が変わるわね」
「う、う、うそ。そんな、手首が再生しています……」
「あ、ああ、奇跡が、奇跡が起きましたわ……」

 流石に手首から先の再生は、ハルカさんもとっても驚いていました。
 ヒカリさんは信じられないものを見たって表情をしていて、シスターさんは床に膝をついて手を組んで祈りだしちゃったよ。

「レオ君、流石に大魔法を使ったから、ちょっと休みましょう」
「魔力が尽きて、倒れちゃわない様にね」

 フレアさんとミシャさんは、直ぐに僕とシロちゃんの事を気遣ってくれました。
 落ち着いて話をする為に、治療院の控室に移動しました。

「アマード子爵領で、司祭さんから合体魔法のヒントを貰ったんです。回復魔法は怪我人の回復力を高めて、聖魔法は魔法使いの生命力をコピーして怪我人の怪我の治療を行います。両方の魔法の良い所を、合体魔法で行っています」
「理論的にも裏付けされているけど、それを実現できる力と技術があるのがレオ君の凄い所だわ」
「でも、僕一人だと聖魔法の魔力が足りないので、シロちゃんにも聖魔法をかけて貰っています」

 お菓子とお茶を飲みながら、僕はハルカさんと話をしました。
 ハルカさんは、奇跡じゃなくてキチンとした魔法だって理解してくれました。

「うーん、でも、普通はそこまで魔法を使える人はいないですよ」
「まさに、黒髪の天使様のお力なんですわ」

 一方で、ヒカリさんとシスターさんは、完全には理解できていないみたいです。
 とはいえ、僕だって完全には理屈が分かっていないけどね。

「まあ、今の所レオ君以外はできない能力だという事です」
「私達も、そうやって納得しています」

 フレアさんとミシャさんは冒険者として理解度が高いので、僕の合体魔法は直ぐに分かって貰えました。
 ヒカリさんには、今日の治療を通じて慣れてくれればいいね。
 こうして、僕とシロちゃんはこの後の治療も張り切って行って、夕方までには個室に入院している人の治療が全て終わりました。
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