小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百六十四話 新年の挨拶に行きます

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 村でのオーク騒動が一段落すると、直ぐに新年になりました。
 僕とフレアさんとミシャさんはボーガン様の新年の挨拶に招かれたので、キチンとした服を着て屋敷に向かいます。

「村を救った英雄を招待したいなんて、ちょっとビックリですね」
「まあ、ちょっと大袈裟だよね」
「そうね。オークを倒すのに専念できたのは、多くの人のお陰だったのは間違いないわ」

 今日はフレアさんもミシャさんも、髪色に合わせたとっても綺麗なドレスを着ています。
 僕もキチンとした所なので、コバルトブルーレイク直轄領で作った服を着て勲章も着けています。
 どうも僕達の事を、もてなしたいという雰囲気がありますね。
 まあ、どんな感じかは行ってみないと分からないね。
 という事で、無事に屋敷に到着しました。

「皆様、お待ちしておりました。会場にご案内します」

 いつも僕が屋敷に行くと対応してくれる侍従の人が、僕達を会場に案内してくれました。
 うん、何だかいつもよりもピシッとしていてカッコいいね。
 二階のホールが会場らしいので、そのまま二階に上がります。

「あら、皆来てくれたのね。新年おめでとう」
「「「おめでとうございます」」」

 会場に着くと、直ぐにチェルシーさんが僕達を出迎えてくれました。
 そして、僕達を案内してくれた侍従の人がそのまま席まで案内してくれました。

「皆様の席はこちらになります。お飲み物をお持ちしますので、少々お待ち下さい」
「えっ、ここで良いんですか? 一番前ですよ?」
「はい、こちらにて間違いありません」

 僕達が案内されたのは、会場の一番前の席でした。
 侍従の人に確認しても、この席で間違いないみたいです。
 僕とフレアさんとミシャさんは、恐る恐る席に座りました。
 うん、周りにいる人も、チラチラと僕達を見ているよ。
 どうしようと思っていたら、ボーガン様が会場に入ってきたよ。
 これでちょっと一安心だね。

「それでは、これより新年の挨拶を行う。昨年は帝国との小競り合いから始まり、災害による街道封鎖やオークの襲撃もあった。しかし、皆の力を結集して困難を乗り切る事ができた。皆に深く感謝をする」

 会場内から拍手が起きました。
 そういえば、街道が土砂崩れで道を塞いだのもあったっけ。
 オークが村を襲ったのもあったから、すっかり忘れちゃったよ。

「そこで挨拶に先立ち、街道の災害対策、多数の民の治療、オーク襲撃撃破の功績を称えて、サンダーランド辺境伯家からレオ君に勲章を授ける」

 パチパチパチ!

 えー、勲章を貰う話なんて聞いていないよ。
 周りから大きな拍手が起きているけど、僕はちょっと混乱しちゃったよ。

「なるほどね、だから私達が一番前の席だったのね」
「私達はオーク討伐だけだし、レオ君は他にも沢山の事をやっているもんね」

 フレアさんとミシャさんも、納得した表情をしながら僕に拍手を送っていました。
 沢山の拍手の中、僕は席を立ってボーガン様の所に向かった。

「ボーガン様、黙っているなんて酷いですよ」
「ははは、憮然とした表情だな。黙っていて悪かったな。まあでも、それだけの功績をレオ君は残したんだ。素直に勲章を受け取ってくれ。これはサンダーランド辺境伯家としてという所もあるぞ」

 ボーガン様から服に勲章を着けて貰うと、再び大きな拍手がおきました。
 そして前に出たまま、僕にもジュースが入ったグラスが配られました。

「それでは、新しい年を祝って乾杯する。乾杯!」
「「「乾杯!」」」

 僕もボーガン様の真似をして、グラスを高く上げました。
 ふう、やっと終わったと思ったら、まだまだ僕は前にいる事になってしまった。

「辺境伯様、新年おめでとうございます」
「うむ、おめでとう。昨年は世話になったな」
「いえいえ、こちらこそお世話になりました。レオ君も、勲章授与おめでとう」
「あ、ありがとうございます……」

 直ぐに来賓からボーガン様への新年の挨拶タイムになってしまい、僕も巻き込まれる形でずっと前に残っています。
 うう、前から席に戻るタイミングを完全に失敗してしまったよ……
 フレアさんとミシャさんは気の毒そうな表情をしながらも美味しそうなお肉を食べていたし、シロちゃんに至っては僕の事を全く気にする素振りもせずに料理を堪能していました。

「ううう、疲れたよ……」
「お疲れ様。立派に挨拶出来ていたよ」
「レオ君は、こういう所での挨拶に慣れているんだね」

 ようやく挨拶が終わって、僕はやっと席に戻れました。
 疲れちゃった僕の頭を、フレアさんとミシャさんが撫で撫でしていました。
 シロちゃんも、お疲れって感じで触手を振っていました。

「それにしても、レオ君の服は大小様々な勲章が付いているね」
「もう勲章が一つ二つ追加されても、全然分からないね」

 僕の服の左胸には、沢山の勲章が付いています。
 パッと見ると、服に虫が付いているみたいだね。

「レオ君、お疲れ。中々立派だったぞ」
「ふふ、そうね。堂々と受け答えしていたし、コバルトブルーレイク直轄領での経験が生きていたのね」

 僕がぐんにゃりとしている所に、ボーガン様とチェルシーさんがやってきました。
 二人はニコニコとしていたけど、僕はもう元気がゼロですよ。

「正直な所、フレアとミシャにも勲章をやろうとしたが、それだとレオ君の功績を過小評価する事になるからな」
「「いえいえいえ、勲章は大丈夫ですよ」」

 ボーガン様は、フレアさんとミシャさんにも勲章を渡す予定だったんだね。
 フレアさんとミシャさんは、全力で否定していた。
 僕としては、一緒に勲章を貰って欲しかったなって思っています。
 こうして、緊張ばかりの新年の挨拶は何とか終わりました。
 あっ、冷めていても料理はとっても美味しかったよ。
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