小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
163 / 584
第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百五十八話 援軍が到着しました

しおりを挟む
 ドドドド。

 水を飲んだり簡単な物を食べたりと少し休んでいたら、街道の方から馬の足音が聞こえてきたよ。
 増援の人達を乗せた馬車が、村にやってきたみたいです。

「マシュー様、お待たせして申し訳ありません」
「いやいや、突然の招集でご苦労だ。村の中の襲撃もあるので、手分けして被害者の救出と周囲の警戒にあたってくれ」
「「「はっ」」」

 兵は、直ぐに手分けして村の中に入ったり周囲の警戒にあたった。

「おい、三人ともどうした。大丈夫か?」
「ああ、大丈夫よ。ちょっと疲れたから休んでいるだけよ」
「流石に、五十頭以上のオークを相手にするのは疲れたわ」
「僕も、初めての身体能力強化の魔法を使った戦闘だったので……」
「五十頭って、そりゃすげー数だな……」

 マシューさんの側で休んでいた僕達の事を、冒険者が心配そうに見ていました。
 二つ名持ち三人がヘロヘロになっちゃったので、今回の事件はそれ程大変な事だと理解したみたいです。

「よっと。マシュー様、私達も村の中に入ります」
「やらないといけない事が沢山ありますわ」
「僕も、魔力はまだ沢山あります」
「分かった。でも、無理をしない様に」

 僕達も、マシューさんに許可を貰って冒険者と共に村の中に入ります。
 シロちゃんは引き続きマシューさんの護衛を頑張るみたいで、マシューさんの肩の上から僕に触手をふりふりとしていました。

 ダッダッダッ。

「うわあ、お家が壊れちゃっていますね」
「オークは力持ちだから、家の壁なんか簡単に壊すわ」
「体当たりも強力なのよ。うーん、この壊れ方を見ると食料を狙ったぽいね」

 走りながら壊された家を見たけど、確かにミシャさんの言う通り食料が食い荒らされています。
 他の壊れた家でも同じく食料が荒らされていたので、オークが何らかの影響で飢えていた可能性がありそうです。
 そんな時、一人の冒険者が僕達に話しかけてきました。

「ミシャ、フレア、オークの血抜きはしてあるって言ったよな。仮定を確かめるのと住民への食料にする為に、解体して胃の中を確認しよう」
「分かったわ。レオ君、後で数頭出してね」

 僕の魔法袋の中には五十頭以上のシロちゃんが血抜きしたオークが入っているし、数頭くらいなら全然問題ありません。
 でも、まずは目の前の困っている人への対応が先決です。
 僕達は人々が避難している村の教会に向かいました。

「おーい、こっちにもポーションを渡してくれ!」
「人手が足りないぞ!」

 教会に着くと、怪我をした人の対応や炊き出しなどの対応でてんやわんやでした。
 でも、兵や冒険者が駆けつけたから、少しずつ混乱は収まっていきました。
 僕は炊き出し用に、魔法袋から一頭のオークを取り出しました。

 ドーン。

「「「ひぃ……」」」
「すげーな。見事に首だけ切り落とされている。しかも断面も鋭いぞ」
「あっ、このオークは僕が倒しました。何とか上手く倒せて良かったです」
「なる程、黒髪の魔術師様は剣技もできる様になってきたか」

 首のない大きなオークが現れて村人は怖がっていたけど、冒険者はふむふむと関心していました。
 オークの解体は冒険者に任せて、僕は怪我人の治療を始めます。

 シュイン、きらー!

「はい、これで大丈夫ですよ」
「おお、これは凄い。膝の怪我だけでなく腰の痛みも取れたぞ」

 膝を怪我したおじいさんの治療をすると、他の所も良くなったと喜んでいました。
 順番に怪我人を治療していき、ついでという事で他に病気や怪我をした人も治していきます。

「となると、オークの襲撃は突然だったんですね」
「ああ、今まではオークを見つけてもいきなり儂らを襲う事はなかった。こんな大多数で襲ってくるなんて、生まれて初めてだ」
「そう、それは大変でしたね」

 フレアさんとミシャさんは、兵と共に村人への聞き込みをしていました。
 うーん、何らかの原因で食料が少なくなったのかな?
 すると、大体の怪我人を治療し終えた所で、オークの解体をしていた冒険者が何かを見つけたみたいです。

「あっ、やっぱり胃の中が空っぽだ。となると、食料がなくなって村を襲った可能性が高いな」

 やっぱり、オークの胃の中は空っぽでした。
 オークは食欲旺盛なので、胃の中が空っぽって事はほぼないそうです。
 と、ここでずっと通信用魔導具で外部と連絡のやり取りをしていたマシューさんが合流しました。

「レオ君、もう二頭オークを出してくれ。解体して仮説を確信に変えたいのだよ。後は、ここにいる冒険者や兵の為の食料にする」
「分かりました。直ぐに用意します」
「今、冒険者と兵に周囲の偵察に行かせているが、もし仮説が正しければさらなるオークの襲撃の危険性がある」

 僕もオークの群れがまだいるなら、村を襲撃する可能性があると思います。
 そして、もう二頭のオークを解体しても、結果は同じだった。

「コイツラも胃の中が空っぽだ。やはり、群れで飢えていたんだ」
「ありがとう。後は偵察の結果次第だが、その間に村の防衛力を上げよう」

 マシューさんは直ぐに動いて、兵と冒険者にあれこれ指示を出しました。

「マシューさん、僕も何かお手伝いします」
「いや、フレア、ミシャ、レオ君は休んでくれ。何かあった際の切り札になるからな」
「そうだぜ。ここは俺達に任せときな」

 おお、マシューさんだけでなく冒険者もとてもカッコいいよ。
 という事で、村を囲む柵の修理や強化は兵と冒険者に任せる事になりました。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。