小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百五十六話 年末に発生した緊急事態

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 もうそろそろ年の瀬になるのだけど、毎朝の訓練は勿論続けます。

 カンカン、カンカン。

「はあ、えい! やあ!」
「良い感じよ、どんどんと打ち込んできてね」

 身体能力強化の魔法もそこそこ使える様になったので、僕とシロちゃんは身体能力強化の魔法を使った状態でフレアさんとミシャさんに木剣を打ち込みます。
 身体能力強化の魔法の習熟度も剣技のレベルもフレアさんとミシャさんとは雲泥の差があるので、とにかく頑張って訓練します。

「はあはあはあ、うーん、全然かなわないよ……」
「そりゃそうよ。これでも、小さい頃から結構訓練していたのよ」
「とはいっても、最初の頃に比べれば良い感じよ。レオ君は天才だけど、流石に簡単に抜かれる訳にはいかないわ」

 僕とシロちゃんが悔しがっていると、ちょっと得意気なフレアさんとミシャさんの姿がありました。
 乗り越えないといけない山は、まだまだとっても大きいね。
 さて、今日はどんな依頼をしようかなと思って、汗を拭いてからフレアさんとミシャさんと一緒に冒険者ギルドに向かいました。

 ガヤガヤガヤ。

「あれ? 何だか冒険者ギルドが騒がしいですね。何かあったのかな?」
「うーん、依頼掲示板の前に人が集まっているわね。特殊な依頼でもあったのかな?」
「取り敢えず確認しに行きましょう」

 僕達も、人がいっぱいいる掲示板の前に向かいました。
 うーん、僕の身長じゃ何が何だか全く分からないよ。
 ぴょんぴょんジャンプしても見えなかったので、他の人に聞くことにしました。

「すみません、何かあったんですか?」
「ああ、どうも街の近くの村でオークの群れが現れたようだ。腕におぼえのある冒険者は、是非とも参加して欲しいそうだぞ」

 剣を背負ったスキンヘッドの大男が何があったかを教えてくれたけど、とっても大変な事が起きていたよ。
 フレアさんとミシャさんもビックリして、思わず顔を見合わせちゃったよ。
 すると、僕達の所に頭をポリポリとしながらホークスターさんがやってきました。

「お、早速集まっているな。実は軍も巻き込んでの大騒ぎになってな、どうも百頭以上のオークが現れたそうだ」
「「「ひゃ!」」」

 うん、流石にこの数は冒険者は想定してなかったみたいで、一同かなりビックリしていた。
 でも、困っている人がいるし何かあったら大変だもんね。

「ギルドマスター、どこでオークが出ましたか?」
「ここから馬で二時間程の村だ。怪我人が出ているから、フレアやミシャも勿論だがレオも現地に行った方が良いな」

 フレアさんがホークスターさんに話を聞いたら、今度は僕がビックリしたよ。
 でも怪我をしている人がいるなら、早く行かないと。

「フレアさん、ミシャさん、急いで行かないと!」
「そうね。準備をして向かった方が良いわね」
「商会に戻って馬車を準備しましょう」
「軍の案内役を付けさせよう。他の者も、行けるものは馬車を出すぞ」

 という事で、僕達は一度ミシャさんの商会に行って準備を整えてからもう一度冒険者ギルド前に行きました。
 すると、冒険者ギルド前には完全武装したマシューさんの姿もありました。

「えっ、もしかしてマシューさんも村に行くんですか?」
「サンダーランド辺境伯軍の指揮をとる必要があるし、何よりも一つの村が壊滅している可能性もある。サンダーランド辺境伯家として、現地に行く必要があるのだよ」

 サンダーランド辺境伯領の村なんで、壊滅していないか自身の目で見るためにマシューさんも現地に向かうそうです。

「こう見えても、父ほどではないが武芸の腕はあるのでな。それに、指揮に専念して前線に出る事はしないよ」
「でも、念の為に戦闘時はシロちゃんをマシューさんと一緒にいるようにしますね」
「ははは、それはとんでもない援軍だな。ありがたく申し出を受けるとしよう」

 どんなにマシューさんが強くても、次の辺境伯様なんだから何かあったら大変だよね。
 シロちゃんもやる気満々だし、きっとマシューさんを守ってくれるよ。
 冒険者を乗せる馬車はまだ準備中なので、僕達とマシューさんは一足先に現地の村に向かう事になりました。

 カタカタカタ。

「私も行ったことのある村だから、ちょっと心配だな。何事も無ければ良いけど……」
「ただ、以前にもオークが現れたって話があったわ。複数のオークがいるのは、不思議ではないわね……」

 御者を務めるフレアさんも、僕の横にいるミシャさんも、とっても不安そうな表情をしていました。
 しかし、目の前に現れた光景に不安が募ってきました。

「あっ、あれって煙じゃないですか?」
「炊事とかの煙じゃないわね。真っ黒な煙だわ」
「少し急ぎましょう。村で何かが起きているのは間違いないわ」

 もう少しで村に着くという所で、街道の先から黒い煙が立ち上っていました。
 はやる気持ちを抑えつつ、僕達を乗せた馬車の速度は少し速くなりました。
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