小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
161 / 589
第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百五十六話 年末に発生した緊急事態

しおりを挟む
 もうそろそろ年の瀬になるのだけど、毎朝の訓練は勿論続けます。

 カンカン、カンカン。

「はあ、えい! やあ!」
「良い感じよ、どんどんと打ち込んできてね」

 身体能力強化の魔法もそこそこ使える様になったので、僕とシロちゃんは身体能力強化の魔法を使った状態でフレアさんとミシャさんに木剣を打ち込みます。
 身体能力強化の魔法の習熟度も剣技のレベルもフレアさんとミシャさんとは雲泥の差があるので、とにかく頑張って訓練します。

「はあはあはあ、うーん、全然かなわないよ……」
「そりゃそうよ。これでも、小さい頃から結構訓練していたのよ」
「とはいっても、最初の頃に比べれば良い感じよ。レオ君は天才だけど、流石に簡単に抜かれる訳にはいかないわ」

 僕とシロちゃんが悔しがっていると、ちょっと得意気なフレアさんとミシャさんの姿がありました。
 乗り越えないといけない山は、まだまだとっても大きいね。
 さて、今日はどんな依頼をしようかなと思って、汗を拭いてからフレアさんとミシャさんと一緒に冒険者ギルドに向かいました。

 ガヤガヤガヤ。

「あれ? 何だか冒険者ギルドが騒がしいですね。何かあったのかな?」
「うーん、依頼掲示板の前に人が集まっているわね。特殊な依頼でもあったのかな?」
「取り敢えず確認しに行きましょう」

 僕達も、人がいっぱいいる掲示板の前に向かいました。
 うーん、僕の身長じゃ何が何だか全く分からないよ。
 ぴょんぴょんジャンプしても見えなかったので、他の人に聞くことにしました。

「すみません、何かあったんですか?」
「ああ、どうも街の近くの村でオークの群れが現れたようだ。腕におぼえのある冒険者は、是非とも参加して欲しいそうだぞ」

 剣を背負ったスキンヘッドの大男が何があったかを教えてくれたけど、とっても大変な事が起きていたよ。
 フレアさんとミシャさんもビックリして、思わず顔を見合わせちゃったよ。
 すると、僕達の所に頭をポリポリとしながらホークスターさんがやってきました。

「お、早速集まっているな。実は軍も巻き込んでの大騒ぎになってな、どうも百頭以上のオークが現れたそうだ」
「「「ひゃ!」」」

 うん、流石にこの数は冒険者は想定してなかったみたいで、一同かなりビックリしていた。
 でも、困っている人がいるし何かあったら大変だもんね。

「ギルドマスター、どこでオークが出ましたか?」
「ここから馬で二時間程の村だ。怪我人が出ているから、フレアやミシャも勿論だがレオも現地に行った方が良いな」

 フレアさんがホークスターさんに話を聞いたら、今度は僕がビックリしたよ。
 でも怪我をしている人がいるなら、早く行かないと。

「フレアさん、ミシャさん、急いで行かないと!」
「そうね。準備をして向かった方が良いわね」
「商会に戻って馬車を準備しましょう」
「軍の案内役を付けさせよう。他の者も、行けるものは馬車を出すぞ」

 という事で、僕達は一度ミシャさんの商会に行って準備を整えてからもう一度冒険者ギルド前に行きました。
 すると、冒険者ギルド前には完全武装したマシューさんの姿もありました。

「えっ、もしかしてマシューさんも村に行くんですか?」
「サンダーランド辺境伯軍の指揮をとる必要があるし、何よりも一つの村が壊滅している可能性もある。サンダーランド辺境伯家として、現地に行く必要があるのだよ」

 サンダーランド辺境伯領の村なんで、壊滅していないか自身の目で見るためにマシューさんも現地に向かうそうです。

「こう見えても、父ほどではないが武芸の腕はあるのでな。それに、指揮に専念して前線に出る事はしないよ」
「でも、念の為に戦闘時はシロちゃんをマシューさんと一緒にいるようにしますね」
「ははは、それはとんでもない援軍だな。ありがたく申し出を受けるとしよう」

 どんなにマシューさんが強くても、次の辺境伯様なんだから何かあったら大変だよね。
 シロちゃんもやる気満々だし、きっとマシューさんを守ってくれるよ。
 冒険者を乗せる馬車はまだ準備中なので、僕達とマシューさんは一足先に現地の村に向かう事になりました。

 カタカタカタ。

「私も行ったことのある村だから、ちょっと心配だな。何事も無ければ良いけど……」
「ただ、以前にもオークが現れたって話があったわ。複数のオークがいるのは、不思議ではないわね……」

 御者を務めるフレアさんも、僕の横にいるミシャさんも、とっても不安そうな表情をしていました。
 しかし、目の前に現れた光景に不安が募ってきました。

「あっ、あれって煙じゃないですか?」
「炊事とかの煙じゃないわね。真っ黒な煙だわ」
「少し急ぎましょう。村で何かが起きているのは間違いないわ」

 もう少しで村に着くという所で、街道の先から黒い煙が立ち上っていました。
 はやる気持ちを抑えつつ、僕達を乗せた馬車の速度は少し速くなりました。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。