小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百二十二話 ちょっとだけ失敗?

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 そして、中継地点の村に到着しました。
 この村で昼食を食べて少し休んでから、今日泊まる予定の村に移動します。
 馬車は何も躊躇いもなく、村の食堂に到着しました。

「ここの食堂は、この村に寄った際に必ず来ている」
「あの、普通の食堂ですけど、貴族の方が使われるんですか?」
「何も問題ないぞ。偏屈な貴族もいるが、私は気にしない。気にしても仕方ないのだよ。出されたものを食べる、それが出来なければならない」

 おお、とっても素晴らしいですね。
 確かに変な貴族に会ったことはあるけど、豪華な食事を出してこいって言いそうだね。

「お館様、いつもありがとうございます。お待たせしました」
「うむ」

 おお、骨つき肉がドーンってお皿に盛られてきたよ。
 豪華な料理に、僕もシロちゃんもビックリしちゃいました。
 それに、おかみさんとボーガン様は気軽に話をしているし、本当にいつも利用しているんだね。

「うわあ、とっても美味しいです。肉汁が溢れてきます」
「ははは、気に入ってくれたみたいだな。タレに漬けてから焼くんだが、何故かとても美味いんだよ。見た目も派手で、私は好きだな」

 確かにこれだけ迫力のある料理だと、派手好きな貴族にもウケそうですね。
 僕もシロちゃんも、とっても大満足な一品でした。

「おかみ、最近変わった事はあったか?」
「街道も直ぐに復旧しましたし、特にございません。叶うことなら、あっという間に街道を復旧したという、黒髪の天使様にお会いしたいです」
「それは、良かった。因みに、黒髪の天使様は、私の横にいるこの子だ」
「えっ?」

 あの、ボーガン様?
 僕の事に触れなくても良かったんですけど……
 おかみさんが、凄いビックリした表情に変わっちゃったよ。

「じゃ、じゃあ、君がレオ君なんだね。わあ、本当に黒髪だ。あ、あの、握手して下さい!」

 僕は、物凄くテンションの高いおかみさんと握手していました。
 食堂の他のお客さんとも握手をする事になり、お肉を食べたのに何故か疲れちゃいました。

 ガラガラガラガラ。

「はうう、なんか疲れちゃいました……」
「ははは、大人気だったな。流石は黒髪の天使様だ」

 馬車の中でぐったりしていると、ボーガン様まで僕の事をからかってきました。
 でも、ボーガン様はとても厳しい人だと聞いたけど、僕は優しい人だなって思っちゃった。
 住民の話にも真摯に耳を傾けていたし、実際に執事に対策を指示したりしていました。
 厳格だけど、やる時はやるって感じなんですね。

 ガラガラガラガラ。

「ボーガン様、この馬車は馬車便よりも凄い速いですね」
「我が家の馬は、とっても頑丈でスタミナがある。一般の馬車に使われる馬とは違うのだよ。だから、子爵領から我が領都まで馬車便では三日かかるが、我が家の馬なら二日で着くぞ」
「わあ、それは凄いですね。後でお馬さんにお礼で回復魔法をかけても良いですか?」
「うむ、許可する。馬も喜ぶだろう」

 一生懸命に走ってくれているから、僕も一生懸命にお馬さんを治療しよう。
 シロちゃんも、お馬さんの治療をするつもりみたいだよ。
 そして僕達を乗せた馬車は、あっという間に今日宿泊する村に到着しました。

「わあ、とても大きいですね。村じゃなくてまるで街ですね」
「我が領第三の人口を誇る。男爵領の領都よりも大きい。我が家の別荘があるから、今日はそこに泊まる」

 沢山の人が道を行き交っていて、とっても活気のある街です。
 僕達を乗せた馬車も、ゆっくりと道を進んで行きました。
 そして、大きなお屋敷に入っていきます。
 あの、この大きさで別荘なんですか?
 男爵領の屋敷よりも大きい気がするのですが……
 ちょっと戸惑う僕も、馬車から屋敷の玄関前に降りました。
 あっ、お馬さんにお礼の回復魔法をかけないと。

 シュイーン、ピカー。

「えーい!」
「これはまた凄い魔法だ……」

 僕とシロちゃんは、まだ覚えたてだけどエリアヒールの魔法を使いました。
 ボーガン様が僕とシロちゃんの魔法を見て驚いていたけど、お馬さんはとっても気持ちよさそうです。

「元気になって良かったね」
「「「ヒヒーン」」」

 騎馬のお馬さんも含めて、とっても良い表情で返事をしてくれました。
 うん、元気になって良かったね。

「お、お館様、私の腰痛が綺麗さっぱり無くなりました」
「私の肩こりもです」
「あっ!」

 騎馬に乗っていた兵が、とっても調子が良いって言っているよ。
 エリアヒールだから、周囲にいた人にも回復魔法がかかったんだ。

「ははは、流石は黒髪の魔術師だな。私もとても調子が良いぞ」
「はい……」

 ボーガン様も豪快に笑いながら、僕の頭を撫でていました。
 僕とシロちゃんは失敗したと思ったけど、皆が元気になったので結果的に良かったと思いました。
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