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第四章 サンダーランド辺境伯領
第二百六話 噂話をしていた人は悪い人だった?
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サンダーランド辺境伯領への旅路、二日目の朝です。
ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ。
「うーん、もう朝なんだ……」
今日は朝早くに馬車便が出発するので、いつもよりも早い時間に起きます。
僕は懐中時計型の魔導具から鳴っている音を止めて、うーんと背伸びをしました。
シロちゃんも枕元からもぞもぞしながら起きてきたし、着替えて訓練をして朝食を食べないとね。
「はい、鍵です。ありがとうございます」
「こちらこそね」
僕とシロちゃんはカウンターに行っておばさんに部屋の鍵を返したんだけど、おばさんが僕に不思議そうな顔を向けてきたよ。
一体何かあったのかな?
「レオ君って、確か黒髪の魔術師って言われているわよね?」
「はい、そうですけど。何かありましたか?」
「うーん、昨日食堂でレオ君と一緒に冒険をしたという中年男性がいたんだけど、どう見ても言動が怪しいのよ」
あー、もしかして昨夜僕と一緒に冒険をしたというあの酔っ払いの事で間違いなさそうだね。
僕は酔っぱらっていた影響かなと思っていたけど、周りの人はそう思っていなかったみたいだね。
ここは正直に話をした方が良いね。
「えっと、僕あの人初めてみたんです。それにコバルトブルーレイクの街にいた時は女性の冒険者と一緒に行動していましたし、アマード子爵領の時は指名依頼だけやっていました」
「やっぱりそうよね。小さな子が、あんな酔っ払いと一緒に行動するのかなと思ったのよ。こっちも注意しておくわ」
おばさんも納得した表情になったけど、僕も変な噂話には気を付けないといけないね。
僕とシロちゃんは、おばさんに手を振りながら宿を後にしました。
がやがやがや。
「あれ? 馬車乗り場に、人が沢山集まっているよ」
馬車乗り場に向かうと、早朝なのに何故か人がいっぱいいるよ。
あっ!
よく見ると、僕と一緒に冒険したって言っていた中年男性が、周りの人に手を押さえられているよ。
「おい、お前! 逃げるのか! 俺達に散々奢らさせたくせに」
「あんな嘘話をしやがって、金返せ!」
「嘘じゃない、本当の話だ!」
言い争いをしている人の話を聞くと、どうも嘘の話をしてお酒とかを奢って貰ったみたいだね。
うーん、悪い事をしてなければ気にしないつもりでいたけど、これは駄目だよね。
と、ここであの嘘をついていた人が近くにいた僕の事を見たよ。
「ガキが何を見ているんだ、あっちに行け!」
あーあ、僕の事を見たら何故か激昂しちゃったよ。
どうしようかなと思っていたら、ここで救いの手が現れたよ。
「こらー! 何騒いでいる!」
「お前ら、落ち着け」
馬車乗り場に姿を現したのは、コバルトブルーレイク直轄領の守備隊員だったよ。
盗賊団を捕まえる時も一緒だったし、何回か会った事がある人だね。
そういえば、この村はまだコバルトブルーレイク直轄領の中にあるんだった。
守備隊員の二人は僕の存在にも気がついていたけど、先ずはという事で争いを諌め始めました。
「コイツがあのレオ君と一緒に冒険したと言って、嘘話をして俺等から金を騙し取ったんですよ」
「嘘じゃねーよ、本当の話だよ。守備隊員さん、信じてくれよ」
守備隊員に向けて双方が意見を言っているけど、守備隊員は最初っからどちらが本当の事を言っているのか分かっているね。
守備隊員は、僕にニコリと話しかけてきました。
「そうらしいよ、レオ君」
「「「はっ?」」」
守備隊員が僕の名前を呼んだら、目の前の争っていた人が嘘だって表情で固まっちゃったよ。
「お前、さっきレオ君の事をガキって呼んでいたよな?」
ジト目で守備隊員が嘘をついている人を睨んでいるけど、僕に対して言った事も聞いていたんだよね。
だっ。
「あっ、くそ!」
「ぐっ!」
あっ、とうとう嘘をついていた人が逃げ出したよ。
でも、ここは反省して貰わないと駄目だね。
僕は、手に軽く魔力を溜めました。
「えい!」
シュイーン、バリバリバリ!
「ギャー!」
ばたり。
僕は軽めのサンダーバレットを放って、走って逃げた嘘をついた人を痺れさせました。
直ぐに守備隊員が、痺れて動けなくなった人を拘束しました。
「うおー、すげー! やっぱり本物は違うな!」
「ははは、嘘つきが本物に倒されるとは笑い話だな」
「わわっ」
嘘をついていた人を捕まえていた人は、僕の魔法を見てとても盛り上がっていました。
でも、僕はこの人達に謝らないといけないよね。
「ごめんなさい。実は昨日僕も食堂にいて、この人が嘘を話しているのを聞いていたんです。あの時、僕があの人を注意をすれば良かったのかも……」
「気にしなくて良いぞ。これだけの事が見れたんだからな」
「そうだな、逆に俺等は目の前で黒髪の魔術師の武勇伝を見た事になるな」
「わわっ!」
今度は、謝った僕とシロちゃんごと頭を撫でてきました。
二人とも、良いものを見たって表情をしているよ。
「じゃあ、コイツは詐欺で取り調べを行うから」
「レオ君も、気を付けて旅を続けてね」
「う、うう……」
僕とシロちゃんは、嘘をついた人を連行していく守備隊員に手を振りました。
「あの守備隊員の人とは、盗賊団を捕まえる時に一緒だったんですよ。たまに、コバルトブルーレイクの街の巡回時に会った時にも挨拶していました」
「やっぱり本物が本当の事を言うと、信頼性が格段に違うな。守備隊員と、あんなにフレンドリーに話をするのだから」
「この話は、早速今夜の酒場のネタになるな。黒髪の魔術師と冒険をしたと嘘をついた男が、颯爽と現れた本物の黒髪の魔術師の一撃で倒されたってな」
う、うーん。
これは広まって良いものか判断に悩むけど、本当の事だから否定しづらいよね。
ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ。
「うーん、もう朝なんだ……」
今日は朝早くに馬車便が出発するので、いつもよりも早い時間に起きます。
僕は懐中時計型の魔導具から鳴っている音を止めて、うーんと背伸びをしました。
シロちゃんも枕元からもぞもぞしながら起きてきたし、着替えて訓練をして朝食を食べないとね。
「はい、鍵です。ありがとうございます」
「こちらこそね」
僕とシロちゃんはカウンターに行っておばさんに部屋の鍵を返したんだけど、おばさんが僕に不思議そうな顔を向けてきたよ。
一体何かあったのかな?
「レオ君って、確か黒髪の魔術師って言われているわよね?」
「はい、そうですけど。何かありましたか?」
「うーん、昨日食堂でレオ君と一緒に冒険をしたという中年男性がいたんだけど、どう見ても言動が怪しいのよ」
あー、もしかして昨夜僕と一緒に冒険をしたというあの酔っ払いの事で間違いなさそうだね。
僕は酔っぱらっていた影響かなと思っていたけど、周りの人はそう思っていなかったみたいだね。
ここは正直に話をした方が良いね。
「えっと、僕あの人初めてみたんです。それにコバルトブルーレイクの街にいた時は女性の冒険者と一緒に行動していましたし、アマード子爵領の時は指名依頼だけやっていました」
「やっぱりそうよね。小さな子が、あんな酔っ払いと一緒に行動するのかなと思ったのよ。こっちも注意しておくわ」
おばさんも納得した表情になったけど、僕も変な噂話には気を付けないといけないね。
僕とシロちゃんは、おばさんに手を振りながら宿を後にしました。
がやがやがや。
「あれ? 馬車乗り場に、人が沢山集まっているよ」
馬車乗り場に向かうと、早朝なのに何故か人がいっぱいいるよ。
あっ!
よく見ると、僕と一緒に冒険したって言っていた中年男性が、周りの人に手を押さえられているよ。
「おい、お前! 逃げるのか! 俺達に散々奢らさせたくせに」
「あんな嘘話をしやがって、金返せ!」
「嘘じゃない、本当の話だ!」
言い争いをしている人の話を聞くと、どうも嘘の話をしてお酒とかを奢って貰ったみたいだね。
うーん、悪い事をしてなければ気にしないつもりでいたけど、これは駄目だよね。
と、ここであの嘘をついていた人が近くにいた僕の事を見たよ。
「ガキが何を見ているんだ、あっちに行け!」
あーあ、僕の事を見たら何故か激昂しちゃったよ。
どうしようかなと思っていたら、ここで救いの手が現れたよ。
「こらー! 何騒いでいる!」
「お前ら、落ち着け」
馬車乗り場に姿を現したのは、コバルトブルーレイク直轄領の守備隊員だったよ。
盗賊団を捕まえる時も一緒だったし、何回か会った事がある人だね。
そういえば、この村はまだコバルトブルーレイク直轄領の中にあるんだった。
守備隊員の二人は僕の存在にも気がついていたけど、先ずはという事で争いを諌め始めました。
「コイツがあのレオ君と一緒に冒険したと言って、嘘話をして俺等から金を騙し取ったんですよ」
「嘘じゃねーよ、本当の話だよ。守備隊員さん、信じてくれよ」
守備隊員に向けて双方が意見を言っているけど、守備隊員は最初っからどちらが本当の事を言っているのか分かっているね。
守備隊員は、僕にニコリと話しかけてきました。
「そうらしいよ、レオ君」
「「「はっ?」」」
守備隊員が僕の名前を呼んだら、目の前の争っていた人が嘘だって表情で固まっちゃったよ。
「お前、さっきレオ君の事をガキって呼んでいたよな?」
ジト目で守備隊員が嘘をついている人を睨んでいるけど、僕に対して言った事も聞いていたんだよね。
だっ。
「あっ、くそ!」
「ぐっ!」
あっ、とうとう嘘をついていた人が逃げ出したよ。
でも、ここは反省して貰わないと駄目だね。
僕は、手に軽く魔力を溜めました。
「えい!」
シュイーン、バリバリバリ!
「ギャー!」
ばたり。
僕は軽めのサンダーバレットを放って、走って逃げた嘘をついた人を痺れさせました。
直ぐに守備隊員が、痺れて動けなくなった人を拘束しました。
「うおー、すげー! やっぱり本物は違うな!」
「ははは、嘘つきが本物に倒されるとは笑い話だな」
「わわっ」
嘘をついていた人を捕まえていた人は、僕の魔法を見てとても盛り上がっていました。
でも、僕はこの人達に謝らないといけないよね。
「ごめんなさい。実は昨日僕も食堂にいて、この人が嘘を話しているのを聞いていたんです。あの時、僕があの人を注意をすれば良かったのかも……」
「気にしなくて良いぞ。これだけの事が見れたんだからな」
「そうだな、逆に俺等は目の前で黒髪の魔術師の武勇伝を見た事になるな」
「わわっ!」
今度は、謝った僕とシロちゃんごと頭を撫でてきました。
二人とも、良いものを見たって表情をしているよ。
「じゃあ、コイツは詐欺で取り調べを行うから」
「レオ君も、気を付けて旅を続けてね」
「う、うう……」
僕とシロちゃんは、嘘をついた人を連行していく守備隊員に手を振りました。
「あの守備隊員の人とは、盗賊団を捕まえる時に一緒だったんですよ。たまに、コバルトブルーレイクの街の巡回時に会った時にも挨拶していました」
「やっぱり本物が本当の事を言うと、信頼性が格段に違うな。守備隊員と、あんなにフレンドリーに話をするのだから」
「この話は、早速今夜の酒場のネタになるな。黒髪の魔術師と冒険をしたと嘘をついた男が、颯爽と現れた本物の黒髪の魔術師の一撃で倒されたってな」
う、うーん。
これは広まって良いものか判断に悩むけど、本当の事だから否定しづらいよね。
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