小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百五話 僕の噂話?

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 カラカラカラ。

 僕達を乗せた馬車は、街を出て五分もすると長閑な街道に出ました。
 空も晴れていて風も気持ち良く、暑くも寒くもなくて絶好の旅行日和です。
 順調に行けば、サンダーランド辺境伯領への十日間の旅になります。

「君が噂のレオ君か、随分と多くの冒険者が見送りにきたな」
「うう、騒がしくしてすみません……」
「何も問題ないぞ。それだけ、レオ君が冒険者に愛されている証拠なんだからな」

 馬車に同乗している五名は、全員がこの先にあるコバルトブルーレイク直轄領の村に向かうそうです。
 馬車乗り場での一幕を思い出して、僕に話しかけてきました。

「この先の村は、どんな村ですか?」
「そうだな、街道沿いにあるからそこそこ大きいぞ。順調に行けば、昼過ぎには着くな」
「途中休憩はするが、昼食は村に着いてからだな。宿併設の食堂で食事を食べる事が、村に寄る旅人では多いぞ」

 おお、宿もついている食堂もあるんだね。
 それに、お昼過ぎなら直ぐに到着しちゃうね。

「それよりも、レオの噂話はとても有名だ。本当かどうか、聞かせてくれよ」
「えっ、良いですけど、もし動物とか魔物が出てきたら戦わないといけないですよ」
「大丈夫だろう。先日ちょうど守備隊の定期的な街道巡回があったし、ある程度は間引きされているだろうよ」

 守備隊長さんが、旅が安全に出来る様に気を使ってくれたんだ。
 とってもありがたいけど、その分僕は乗客とのお喋りに集中しないといけないみたいだね。
 でも、特に変な事を聞かれた訳じゃないし、僕は普通にお喋りしていました。
 因みに、シロちゃんはいつの間にか僕の腕の中ですやすやと眠っていました。
 朝早かったし、とっても気持ちのいい天気だもんね。

「噂話は全部本当だったのか。しかも、事実の方がもっと凄いぞ」
「こういうのは噂話の方が誇張しているが、全く反対だったとは」
「えっと……」

 そして噂話の事を説明すると、皆がとっても驚いちゃった。
 とはいっても前にコバルトブルーレイクの街の冒険者ギルドで話した内容と一緒だし、間違ってはいないんだよね。
 こんな感じで同乗者とのお喋りをしていたら、予定通りにお昼過ぎに村に到着しました。

「おじさん、明日の朝は何時くらいに出発しますか?」
「俺は明日はコバルトブルーレイクの街に帰るが、隣の子爵領行きの便が今朝と同じくらいに出るぞ」

 僕は明日の馬車の時間を確認すると、御者のおじさんにお礼を言って村の食堂を目指しました。
 あっ、思ったよりも大きい二階建ての建物があったよ。
 良い匂いもしているし、目的地の食堂兼宿で間違いないですね。
 僕は建物の中に入って、カウンターに向かいました。

「いらっしゃい、可愛いお客さんだね」

 宿のカウンターには、ちょっと恰幅のいいおばさんがいました。
 多分この人が、この宿の女将さんだね。

「今夜、一部屋お願いします」
「あら、本当にお客さんだったのね。ちょっと待っていてね」

 おばさんは、カウンターから部屋の鍵を取り出しました。

「泊まるのは、もしかして一人かな?」
「はい、旅の途中です。あっ、僕は冒険者ですよ」
「確かに、冒険者で間違いないのね。はい、部屋の鍵よ」

 僕がお金と共に冒険者カードをおばさんに見せると、おばさんは納得してくれました。
 子どもの一人旅だから、何かトラブルを抱えているんじゃないかなと思っている人もいるかもね。
 おばさんから鍵を受け取ると、僕は部屋に向かいました。

 かちゃ。

「とってもシンプルな部屋だね」

 部屋は二段ベッドが置かれているだけで、机もありません。
 本当に、ただ寝る部屋なんだね。
 昼食の時間は過ぎたけど直ぐに夕食の時間になっちゃうから、僕は軽くパンだけを食べて少し休む事にしました。

「起きる時間を設定して、っと」

 僕は懐中時計型の魔導具に起きる時間を設定してから、ベッドにもぐりこみました。
 朝早かったし思ったよりも疲れちゃったのか、直ぐにシロちゃんと共に寝ちゃいました。

 ざわざわ。

「わあ、人が沢山いるね」

 僕はお昼寝から起きると、部屋から食堂に移動しました。
 夕食の時間なので、食堂は沢山の人で溢れかえっていました。
 幸いにして食堂のカウンター席が空いていたので、僕とシロちゃんはカウンターに座りました。

「おう、坊主、何にする?」
「えっと、ハーフサイズのナポリタンを下さい」
「あいよ、ちょっと待ってな」

 僕が席に座ると、直ぐにシェフのおっちゃんが厨房から顔を出して注文を聞いてくれました。
 僕は、まだ一人前のパスタが食べられないんだよね。
 頑張って大きくなって、一人前のパスタを食べられる様にならないと。

 ゴト。

「おまちどう、ハーフサイズのナポリタンだ」
「わあ、美味しそう!」
「ありがとな、いっぱい食べろよ」

 あっという間に料理が運ばれてきたけど、とっても良い匂いがして食欲が誘われます。
 一口食べただけで口の中に美味しさが広がっていって、とっても幸せな気分になります。
 シロちゃんにも少し分けてあげたけど、シロちゃんもとても満足気にふるふるしていました。

「もぐもぐ、この時間はお酒を飲んでいる人が多いんだね」

 ナポリタンを頬張りながら食堂を見渡すと、上機嫌にお酒を飲んでいる人が沢山いました。
 仕事終わりの一杯って感じだね。

「俺は、あの黒髪の魔法使いと一緒に仕事をした事があるんだぜ」
「へー、そりゃ凄いな」

 おや?
 酔っ払って顔を真っ赤にしている見たこともないおじさんが、上機嫌で僕と一緒に仕事をしたって言っているよ。
 微妙に二つ名も間違えているけど、きっとお酒を飲んで気持ちが盛り上がっちゃったんだね。
 悪い事をしている訳でもないし、僕はナポリタンを食べ終えるとお金を払って部屋に戻りました。

「シロちゃん、凄かったね。こうやって噂が広まっていくんだね」

 僕は生活魔法で体を綺麗にしてから、シロちゃんとベッドに入りながらお喋りしていました。
 人から人に話が伝わるのもあるけど、ああいったお酒の場が一番話が広まるんだね。
 別の街に行ったらまた別の噂が聞けるかもと思いながら、僕はシロちゃんと一緒に眠りにつきました。
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