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第三章 コバルトブルーレイク直轄領

第百五十九話 ナナさんの過去の話

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 ピピピピ、ピピピピ。

「うーん、もう一時間経ったんだね。よいしょっと」

 懐中時計型の魔導具のタイマーがキッチリと一時間で鳴ったので、僕とシロちゃんはベッドから起きてうーんと背伸びをしました。
 夕方までちょっとあるから何をしようかなって思ったので、僕はフルールさんの所に向かいました。

「あら、レオ君。お昼寝から起きたのね」
「はい、何かお手伝い出来る事はありますか?」
「うーん、そうね。じゃあ、浴室を生活魔法で綺麗にしてくれるかしら? 軽く洗ってあるから、そのまま魔法をかけて大丈夫よ」

 食堂で夕食を作っているフルールさんからのリクエストもあったので、僕はシロちゃんと一緒にお風呂に向かいました。

「よーし、ピカピカにするよ!」

 きらー!

 僕は浴室に入ると、ちょっと頑張って生活魔法を放ちました。
 浴室の中を明るい光が包みこんで、光が消えるとピカピカになった浴室が現れました。
 壁も床も湯船も、新品みたいにピカピカ光っています。

 ガチャ。

「あっ、レオ君ここにいたのね」
「ちょっと、探しちゃったよ」

 ピカピカになった浴室にシロちゃんと一緒に満足していると、突然ユリアさんとイリアさんが浴室に入ってきました。
 ちょっとプンプンしながら僕の事を見ていたけど、一体何があったのかな?

「依頼の手続き完了をしに冒険者ギルドに行ったら、レオ君が不審者に襲われたって聞いたんだよ」
「私達だけじゃなくて、ナナ達もレオ君に何かあったんじゃないかって心配していたわ」

 あっ、薬草採取をしていた時の二人組の話だ。
 防壁の門の近くで起きた事だし、この件でギルドマスターも来たから多くの人に広まっちゃったんだ。

「レオ君が強いのも分かるけど、でもレオ君はまだ小さな子どもなのよ」
「男どもは黒髪の魔術師に武勇伝が増えたって言っていたけど、私達はレオ君が無事で良かったと思ったわ」

 ユリアさんとイリアさんに、だいぶ心配をかけてしまったみたいですね。
 膝をついて僕の事を抱きしめてくれたユリアさんとイリアさんの事を、僕もぎゅっと抱き返しました。
 でも、厄介ごとって自分の意思とは関係なしにあっちからくるから中々難しいね。

「盛り上がっている冒険者がいっぱいいたけど、私はちょっとちがうなーって思っちゃったよ」
「確かにレオ君は凄い冒険者だけど、こんなにも小さいんだもんね」

 夕食の際に、ユマさんとハナさんが僕が襲われた事を聞いてかなり憤慨していました。
 他の冒険者よりも親しい関係だから、余計にそう思うんだろうね。

「……」

 それよりも、僕としてはナナさんがとっても元気がない事が気になります。
 終始俯いていて、少し暗い表情です。

「ナナさん、どうしたんですか? 依頼の最中に何かあったんですか?」
「ううん、依頼は問題なく出来たわ。ただ、ちょっと考える事があってね……」
「「ああ……」」

 ナナさんの呟きを聞いたユマさんとハナさんも、何かに思い当たった節がある様です。
 でも、ユマさんとハナさんはその事について何も言いませんでした。
 ちょっと夕食の雰囲気も静かになり、そのまま食事は終了しました。
 そして、まだ表情が暗いナナさんと一緒に部屋に戻ると、ナナさんが突然僕の事をキツく抱きしめてきました。

「良かった、レオ君が何もなくて本当に良かった……」

 ナナさんは僕の事を抱きしめながら、涙を流していました。
 ナナさんに何かあったんだなと思いながら、僕はナナさんを抱きしめ返しました。

「ご、ごめんね。ちょっと昔の事を思い出してね……」

 暫くして、ナナさんは僕の事を離してくれました。
 でもナナさんはまだ不安そうな顔をしていたので、ベッドに座りながら話を聞く事にしました。

「前にレオ君には話をしたかもしれないけど、私には年の離れた弟がいたのよ。私の事もお姉ちゃんってニコニコしながら慕ってくれて、本当に可愛かったわ。でも、弟は暴漢に襲われて亡くなってしまったのよ」

 そっか、ナナさんの弟さんが暴漢に殺されちゃったから、僕が襲われたって聞いてショックだったんだね。

「弟がちょうどレオ君と同じ位の時に、友達と遊んでいるところを襲われたわ。捕まった暴漢はむしゃくしゃしてやったと平然と言ったけど、弟と仲の良い友達全員が殺されたから私は衝撃が大きかったわ」
「そうだったんですね。でも、僕は簡単には死にませんよ。僕も殺されかけた時がありましたけど、その時も今もこうして生きていますから」
「そうね、そうね。でも、本当にレオ君が無事で良かったわ」

 僕がニコリとしたら、ナナさんはもう一度僕の事を抱きしめました。
 そして、僕はナナさんと一緒に寝る事にしました。
 ナナさんは弟がどういう子だったかをベッドの中で話してくれました。
 ナナさんが少しでも落ち着いてくれればと思い、二人で手を繋ぎながら眠りにつきました。
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