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第三章 コバルトブルーレイク直轄領

第百四十三話 毒に冒された女の子

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「では、緊急の指名依頼の手続きをしましょう。何処のお屋敷ですか?」
「はい。場所はマリアージュ侯爵家の別荘ですが、診て頂きたいのはフランソワーズ公爵家のクリスティーヌ様で御座います」

 コバルトブルーレイク直轄領には貴族の別荘が沢山あるって聞いたけど、いきなり貴族からの指名依頼だね。
 でも病気の事なら貴族でも平民でも関係ないし、苦しんでいるなら助けてあげないとね。

「分かりましたわ。公爵家が絡んでいるとなると、ギルドマスターの私も同席した方が良いですわね。ユリアちゃんとイリアちゃんも、一緒に来てくれるかしら?」
「はい、分かりました」
「一緒に向かいます」

 ギルドマスターは、コバルトブルーレイクの街で初めての依頼をする僕に気を使ってくれたみたいです。
 僕がギルドマスターに視線を向けると、パチリとウィンクをしました。

「ギルドマスター、手続き完了しました」
「ありがとうね。手続き料は、病状を診てから決めましょう」

 受付のお姉さんが手続きを終えてくれたので、僕達は侍従の案内で現地に向かおうとしました。

「馬車を用意しております。お乗り下さい」

 何と、冒険者ギルドの前に豪華な場所が用意されていました。
 僕達は馬車に乗り込んで、貴族の別荘に向かいます。

 カラカラカラ。

「すみません、どんな方がどんな症状を訴えていますか? 治療の参考にしたいので」
「はい、勿論で御座います。クリスティーヌ様は、まだ三歳になられたばかりで御座います。最初は微熱を出されましたのでこの街で売られているポーションを購入してお飲みになられた所、急に顔色が悪くなられまして……」

 うん?
 この街で売られているポーションを飲んで、更に具合が悪くなった?
 普通じゃありえないなあ。

「うーん。あっ、確か村であった冒険者が、この街のポーションは効きが悪いって言っていましたよ」
「確かに、この街のポーションは評判が良くないわね」

 ギルドマスターも、ポーションの事で考える素振りを見せていたよ。
 この街のポーションに、何かがありそうだね。

 カラカラカラ。

「皆様、到着しました」
「ええ、ありがとうね。急ぎましょう」

 そして、馬車は大きな別荘の前に到着しました。
 僕達は侍従さんの後をついていって、屋敷の中に入りました。

「ただいま戻りました。黒髪の天使様とお会いできました」
「おお、そうか。ささ、こちらだ」

 僕達が屋敷に入ると、とても良く品の良さそうな中年男性が待っていました。
 中年男性は僕を一瞬見ると、直ぐにある部屋まで案内してくれました。

 ガチャ。

「ささ、こちらだ。どうかクリスを助けてやってくれ」

 中年男性が部屋のドアを開けると、ベッドには綺麗な桃色の髪の女の子が寝込んでいました。

「はあ、はあ、はあ」

 女の子は息も荒く、顔色もとても悪くて辛そうです。
 うん?
 この状況に似た事を、どこかで見た覚えがあるよ。
 あっ、あの時だ。

「すみませんこの子の症状を確認する為に、鑑定を使っても良いですか?」
「おお、構わないぞ。やってくれ」

 中年男性の許可も得たので、僕は女の子を鑑定しました。
 うん、やっぱりそうだ。

「実は、前に教会で同じ症状の子どもを治療した事があります」
「その話なら、教会から美談として聞いた事があるぞ。確か、誤って毒草を食べてしまった子どもを治療した……、うん? 毒?」
「はい、この子は毒に侵されています。風邪もひいていますが、圧倒的に毒の影響が大きいです」

 僕の告げた事実に、この場にいた全員が絶句しました。
 しかも、女の子が急に具合が悪くなったのは、この街のポーションを飲んでからです。
 色々と考えちゃうけど、先ずは目の前の苦しんでいる女の子を治療しないと。

「先ずは、回復魔法と聖魔法の合体魔法で治療します」

 ぴかー。

「おお、何という光なのだ」
「凄いわ。合体魔法を使う魔法使いがいるなんて……」

 中年男性とギルドマスターが何か呟いているけど、今は置いておきましょう。
 合体魔法のお陰である程度は治療できたけど、まだ根本的な原因が残っています。
 僕は、魔法袋から毒消しポーションを取り出しました。

「僕が作った毒消しポーションです。これを飲ませて下さい」
「うむ、分かった」

 毒消しポーションを受け取った中年男性は、女の子の側に行きました。

「クリス、毒消しポーションだ。これを飲めば楽になるぞ」
「はあはあ、はい……」

 女の子は中年男性に体を起こしてもらい、毒消しポーションを飲みました。
 暫くすると、女の子の顔色がとっても良くなりました。
 鑑定しても、毒の表示は無くなっていました。

「女の子にあった毒の表示も無くなりました。もう、大丈夫ですよ」
「おお、まさに黒髪の天使様と言われるだけの事はある。レオ君、ありがとう。クリスや、ゆっくりと休むんだよ」
「はい……」
「良かった、本当に良かった……」

 中年男性と侍従は、涙ながらに女の子の回復を喜んでいました。
 女の子も直ぐに寝息を立てましたが、とても安定したものです。
 僕も良かったと思っていたら、シロちゃんがベッドの側にあったもう一つの空になったポーションの瓶を持ってきました。
 うん、やっぱりそうだね。

「シロちゃんが、この瓶に入っていたポーションに毒が混ざっていたと言っています。僕の鑑定でも、残り液に毒があると出てきました」

 何となく皆も予想していたからか、僕がポーションの事を伝えると冷静に受け止めていました。
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