小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
表紙へ
上 下
33 / 584
第三章 コバルトブルーレイク直轄領

第百二十八話 山小屋風の宿に泊まります

しおりを挟む
 カラカラカラ。

 馬車は、何事もなく街道を進んで行きます。
 天気も良くて風も気持ちよく、絶好の旅日和です。

「しかし、レオ君はやっぱり凄いね。アマード子爵の街の人が、あんなにもレオ君に声をかけてくれるなんて」
「そうそう、私も思わずビックリしちゃったよ。それだけ、レオ君が街の人に愛されていたんだね」

 馬車の中では、ユリアさんとイリアさんが僕に話しかけてくれました。
 僕も、多くの街の人に話しかけられてビックリしていたんだよ。
 でも、それだけ僕も街の人の役に立てたって事だから、何だか嬉しいなあ。
 すると、他の冒険者が僕に話しかけてきました。

「そういえば工房の親方がレオにミスリルのダガーを渡していたが、ミスリル製って事は黙っていた方が良いぞ。まあ、見た目は普通のダガーだから問題ないがな」
「ミスリルってだけで、レオの事を殺してでも奪う馬鹿がいる。まあレオなら負ける事はないが、用心した事はないな」

 うん、確かにゴルゴン男爵の件もあるし、不用意にミスリル製って言わない方が良いね。
 僕も充分気を付けよう。

「あ、そういえば、どのくらいの日程でアマード子爵領からコバルトブルーレイク直轄領に到着しますか?」
「うーん、順調に進めば五日もあれば到着するよ」
「この時期は晴れる事が多いし、たぶん予定通りに進むわ」

 ユリアさんとイリアさんの言葉に、僕は思わずホッとしました。
 セルカーク直轄領からアマード子爵領に行く時も順調にいったから、今度も何事もなく進んで欲しいなあ。
 
「今夜は、確かアマード子爵領内の村に泊まるはずだよ。とってもオシャレな街だったよ」
「そうそう、街道の宿場町だけど山小屋風のペンションが立ち並んでいるの」

 おお、とっても期待が膨らむ情報ですね。
 因みに今日は昼食を食べる村とかが無いので、休憩場所に使用されている街道沿いの開けた場所で昼食を食べます。
 ここは歩きで街道を進んでいる人の為に、テントとかを設営できる場所でもあるんだって。
 僕は、街のパン屋さんで購入したパンを魔法袋から取り出しました。

「モグモグ、特に街道で何も出なかったですね」
「そうね。普段だとツノウサギとか出て来てもおかしくないけど、何にも出てこないね」
「あっ、確か子爵領の兵がこの前訓練を兼ねて街道に出ていたよ。もしかしたら、レオ君が安全に旅が出来る様にしてくれたのかもね」

 確かセルカーク直轄領でも、守備隊の人が街道に現れる動物や魔物を狩っていたっけ。
 あれ?
 僕は動物や魔物を狩った事がないけど、何か違いがあるんだっけ?

「動物はどこにでも生息しているぞ。ツノウサギやオオカミとかもそうだな」
「魔物は森などにある魔力の影響を受けている。最大の違いは、体内に魔石を持っている事だ。体も力も、動物よりも大きいぞ」

 冒険者の人が教えてくれたけど、そんな違いがあったんだね。
 僕も、もうそろそろ狩りの依頼を受けるタイミングかもね。

「確か四日目に通る森で、動物や魔物が出やすいんだよな。この時期は冬眠から目覚めるのもいるから、十分に気をつけないと」

 となると、四日目は本当に厳重警戒なんだね。
 僕も気をつけないと。
 因みに、他の人は固そうなパンに干し肉を食べていました。
 冒険者っぽい食事で、ちょっと憧れなんだよね。
 さて、皆食べ終えたのでまた馬車の旅が再開します。

 カラカラカラ。

「あっ、見えてきた。本当に面白いお家だ!」
「あれが山小屋タイプの宿よ」
「街の雰囲気と合っていて、とっても素敵よね」

 夕方前には、今夜泊まる宿場町に到着です。
 とっても個性的な建物が並んでいて、僕は思わず驚きの声を上げてしまいました。

「じゃあ、また明日朝な」

 冒険者の人達は僕とユリアさんとイリアさんとは別の宿に泊まるそうなので、僕達は手を繋いで山小屋みたいな宿に向かいます。

「いらっしゃい。一泊で良いかい?」
「はい、宜しくお願いします」

 カウンターには、おひげがもじゃもじゃの主人が座っていたよ。
 すると、主人はユリアさんにちょっと困った表情で話しかけてきました。

「悪いが、ダブルベッドの部屋しか空いて無いが、それで良いかい?」
「ええ、問題ないですよ」
「悪いね。食事はこの後食堂で取ってくれや」

 この宿はお風呂がないらしく、希望者はお湯を貰えるそうです。
 でも、僕は生活魔法が使えるので全く問題ありません。
 部屋に案内されたら、早速僕はユリアさんとイリアさんに生活魔法を使いました。

 ぴかー。

「レオ君、ありがとうね。この時期は、濡れたタオルで体を拭いたりしていたのよ」
「レオ君の生活魔法があると、本当に便利よね」

 僕の生活魔法は、とっても喜ばれたみたいですね。
 僕にも生活魔法をかけて、食堂に向かいます。

「あら、可愛らしいお客様ね。いっぱい食べてね」

 皆で食堂に向かうと、ちょっとふくよかなおかみさんが夕食を持ってきてくれました。
 シカ肉を使った焼き肉と、山菜の料理だそうです。

「おお、初めてシカ肉を食べたけど、とっても美味しいですね」
「シカ肉は臭みがないから食べやすいよね」
「レオ君も、いっぱい食べてね」

 僕だけでなく、ユリアさんとイリアさんも大満足の夕食でした。
 初めてのシカ肉だったけど、とっても美味しかったなあ。

「明日も朝早くに出発だよ」
「今夜は、疲れを残さない様に早く寝ましょうね」

 そして、僕はユリアさんとイリアさんに挟まれる形でベッドに入りました。
 とても良い匂いがしたのと疲れもあってか、僕はユリアさんとイリアさんの温もりに包まれてあっという間に寝ちゃいました。
しおりを挟む
表紙へ
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。