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第一章 新人冒険者

第二十一話 ちょっとオーバーキル

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 私は、魔法袋から薬草採取に使うカゴを取り出しました。
 このカゴは、魔法袋に最初から入っていた物です。
 初めての薬草採取だからどのくらい採れるか全く分からないけど、もし沢山薬草が採れたら別の何かに入れておこう。
 さっそく薬草採取を始めます。

「えーっと、冒険者登録をした時に貰った冊子にも薬草の事が書いてあったっけ」

 冊子を片手に、グミちゃんにも見てもらいながら薬草を探し始めました。
 そして、薬草を探し始めてから五分後。

「あっ、あった! 葉の後ろに毛があるし、ちょっと独特な匂いがするよ」

 グミちゃんも薬草で間違いないと言ってくれたので、私は周囲にある薬草の葉を摘み取ります。
 一回見つけるとどんなところに薬草があるかが何となく分かったので、そこを中心に薬草を探していきます。
 おかげさまで、三十分もすればそこそこの量の薬草を採る事ができました。
 ここで、私は森からの気配を感じていました。

「さっきから、私の様子をずっと伺っているね。戦闘は避けられなさそうだよ」

 視線に混じって、殺気も飛んできています。
 グミちゃんも森に視線を向けているし、私は戦闘態勢を取りました。

 ガサガサ、ガサガサ。

「「「ブフゥ!」」」

 森の中から、数頭の気配が私に向けて一気に突っ込んできました。
 突っ込んできたのは、大きさは中型犬くらいだけど大きな牙を蓄えたイノシシ三頭でした。
 不意打ちでこの突進を受けたら大怪我をするだろうけど、予測していれば幾らでも対応できます。

「ふっ、せい!」

 シュッ、ドカッ!

「ブヒィ!」

 ズサッ。

 私はサイドステップでイノシシの突進を避けつつ、右足でイノシシの足を払います。
 一頭のイノシシが、勢いあまって地面を滑っていきました。
 どうも前足を怪我したらしく、イノシシはまともに動けなくなりました。

 ドドドド。

「「ブヒー!」」

 仲間が一頭行動不能になっても、イノシシは私に突っ込んできます。
 それでも、イノシシは直線的な動きしかできないので、私はそのまま迎え撃ちます。

「やあ!」

 シュッ、バキン!
 ズササ。

 私は、ちょっとイノシシを避けつつ横っ面に右の回し蹴りを一閃しました。
 イノシシの突進に私の回し蹴りがカウンター気味に入ったので、イノシシは声をあげることもなく一発で昏倒しました。

「えい!」

 ブオン、ドカッ!

 更に、今度は右足を軸にして左の回し蹴りをイノシシにくらわします。
 これまたイノシシの突進速度にカウンター気味に回し蹴りを打ち込んだので、イノシシはその場に崩れ落ちました。
 どうやら、二頭のイノシシは私の回し蹴りを受けて絶命したようです。
 私の足には特にダメージはなかったので、どう考えても前世よりも身体能力が向上しているみたいです。
 そして、私は前足を怪我して動けなくなったイノシシに近づきました。

「ブ、ブヒィ!」
「これも私を狙ったからだよ。ゴメンね」

 シュイーン。

 私は、右手に魔力を溜めました。
 ここは、確実に魔法でトドメを刺します。

「ふっ、やあ!」

 ズドーーーン。

 私は、イノシシ目掛けて魔法を放ちました。
 上手く魔法がイノシシに命中したけど、イノシシはとっても人前には見せられない姿になってしまいました。

「うわあ、イノシシの頭がぐちゃぐちゃになっちゃった……」

 派手な土煙をあげたと思ったら、私の聖魔法の直撃を受けたイノシシの頭部がそれは凄い事になってしまった。
 明らかに、オーバーキルだよね。
 すると、私の戦いぶりを見ていたグミちゃんがアドバイスをしてくれました。

「えっ、魔法を刃の様にして放てば簡単にトドメをさせると。うん、もっと魔法の訓練をしないといけないなあ」

 グミちゃんは、私が回し蹴りで倒したイノシシ二頭の頭部を風魔法を使って切り落としていました。
 グミちゃんは、本当に魔法が上手です。
 私ももっと頑張らないと、私の肩からぴょんと飛び降りてイノシシの血抜きをするグミちゃんを見ながら痛感しました。
 ともあれ、この世界に来て初めての動物との戦闘をクリアした事になります。
 でも、まだ森の中からの視線を感じるから、このあとも警戒しながら薬草採取を続けないと。
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