上 下
10 / 21
第一章 新人冒険者

第十話 新人冒険者向け講習の始まり(座学)

しおりを挟む
 全員席についたところで、ジェフさんが私達新人冒険者に向けて話し始めます。
 うん?
 となると、あのやられ役も新人冒険者なはず。
 うん、気にしないことにしよう。

「今回の講習を担当するジェフだ。それと、サポートにアクアがつく。この後の流れだが、座学で冒険者の心得を教える。簡単な薬草採取の仕方も教えるつもりだ。その後、場所を移して実技を行う。冒険者は常に危険と隣り合わせだ。自分の実力を把握するのも、大切な事だ」

 ジェフさんが話し始めると、直ぐにみんなが一斉にジェフさんを見ます。
 私もグミちゃんも、真剣にジェフさんの事を見ています。

「では、まずは簡単に冒険者関連のルールを説明する。一番大きなルールは、依頼に関するルールだ。ランク制度が無い分、どの依頼が自分に合うのか慎重に調べる必要がある。受付にいる者に相談するのもありだし、信頼する冒険者に相談するのもありだ。話を聞くのは恥ではないし、逆に自分勝手な行動をして多くの人に迷惑をかけるのも駄目だ」

 うん、この辺は特に日常的に気をつけておけば良い事だ。
 そういえば、大学の時にも自分の実力に合わない授業をとって単位を落としていた人がいたなあ。
 自信過剰は禁物ってところだね。

「人として当たり前の事を守る、これも当然の事だ。約束を守る、犯罪を犯さない、特に金銭関係でのトラブルが非常に多い。他人の依頼成果を盗まない、依頼の横取りをしないなど、考えれば常識的な事ばかりだ。犯罪を犯して強制労働になる者もいる。冒険者は自己責任とも言われているが、とにかく当たり前の事を守る事を徹底して欲しい」

 うわー、ジェフさんが熱く語る度にアクアさんがうんうんと頷いている。
 トラブルを起こす冒険者が後を絶たないんだなあ。
 とはいえ、あのモヒカン頭みたいなのがいるからトラブルが起きるんだな。
 他にも少し人格とかに問題がありそうな人がいるし、十分に気をつけないとね。

「後は、冒険者登録時に配られた冊子をとにかく読む事だ。今は分からないと思うが、後々で必ず差が出てくる」

 確かに冒険者登録時に配られた冊子は常識的な事ばかりだったけど、依頼関係とかで結構重要な事も書いてあったんだよね。
 宿に戻ったら、もう一回読んだ方が良さそうだ。

「依頼関係で必要なのは、とにかく調べるということだ。その依頼はどんな内容でどんな事に気をつけなければならないとか、どんな装備が必要かを確認しなければならない。事前準備や装備を怠って死ぬケースもある。命を落とす危険性のある依頼なら尚更だ」

 私は魔法袋があるからとにかく入れれば良いけど、普通の人は持てる荷物の量も決まっている。
 遠征とかだと沢山の荷物が必要だし、食料や水も必要だ。
 そう考えると、事前準備ってとっても大切だね。

「あと、意外と重宝するのが家事スキルだ。料理、洗濯、覚えておいて損はないぞ。一週間、水と乾パンと干し肉だけだと本当に辛いぞ」

 ジェフさんの経験談もあり、ちょっとした笑いが起きている。
 でも、確かに一週間乾パンと干し肉だけは嫌だなあ。
 私は幸いにして料理が出来るし、魔法袋の中にパンや作った物を入れておけばいいね。

「武器に関しては、人によって適性が違うのでここでは言及しない。だが、必ずナイフは持っておく様に。解体や料理にも使えるし、火起こしの為に木を細く削る事もできる。できればダガーもあれば良いが、街中で受ける依頼なら必要としないだろう」

 そういえば、魔法袋の中にナイフはあったけどダガーはなかったなあ。
 私は格闘タイプだけど、ダガーはあった方が良さそうだね。
 ナイフもだけど、料理用に包丁とかもあった方が良いね。

「では、薬草採取について簡単に話をしよう。というのも、この街の直ぐ側に森があり、そこで沢山の薬草が採れる。動物や魔物も程よく出てくるので、相当腕に自信がない限りは一人で行かない方が良い。しかし、薬草採取も案外稼げるぞ」

 薬草採取が稼げるって聞いて、周りの人がちょっとざわざわしている。
 まあ、薬草も数を沢山採ってこそ稼げるだろうね。

「冊子にも簡単に書いてあるが、代表的な薬草は葉の裏に細かい毛があって独特な匂いもする。沢山葉を採っても、半月もすれば葉が生えてくるぞ」

 うーん、よもぎみたいな物が薬草なんだ。
 でも、他にも薬草はありそうだし、どれを採れば良いか迷うなあ。
 ちらっとグミちゃんを見ると任せろって表情をしているから、グミちゃん先生に色々と教えて貰おう。

「では、座学はここまでとしよう。この後、ギルドの敷地横にある訓練場で実技を行う。武器を使うのが初めての物もいるだろうし、そういう人には別の者が指導につく」

 これで座学は終了だ。
 ジェフさんの話し方が良かったから、あっという間に時間が過ぎたよ。
 ちょっと気になったのが、あのモヒカン頭の大男だ。
 やけに静かだった気がするけど……

「「「「ぐー、ぐー」」」」

 うん、机に突っ伏して寝ているよ。
 モヒカン頭にとって、座学は睡眠魔法みたいなものなんだなあ。
 そんな事を思いながら、私とグミちゃんは部屋を出ていきました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた! 〜仲間と一緒に難題を解決します!〜

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 異世界転生した主人公が、仲間と共に難題に巻き込まれていき、頑張って解決していきます 詳細説明 ブラック企業に勤めているサトーは、仕事帰りにお酒を飲んで帰宅中に道端の段ボールに入っていた白い子犬と三毛の子猫を撫でていたところ、近くで事故を起こした車に突っ込まれてしまった 白い子犬と三毛の子猫は神の使いで、サトーは天界に行きそこから異世界に転生する事になった。 魂の輪廻転生から外れてしまった為の措置となる。 そして異世界に転生したその日の内に、サトーは悪徳貴族と闇組織の争いに巻き込まれる事に 果たしてサトーは、のんびりとした異世界ライフをする事が出来るのか 王道ファンタジーを目指して書いていきます 本作品は、作者が以前に投稿しました「【完結済】異世界転生したので、のんびり冒険したい!」のリメイク作品となります 登場人物やストーリーに変更が発生しております 20230205、「異世界に転生したので、ゆっくりのんびりしたい」から「異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた!」に題名を変更しました 小説家になろう様にも投稿しています

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

処理中です...