異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

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第十八章 結婚式の話

三百六十二話 事の次第

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お父ちゃんがさ
体の使い方がガチで下手ぴでさ
何回も顔から落ちるの

娘の綾羽は半ば呆れながらも楽しそうに話す
今日、親父とほぼ無重力の惑星ゼログラビティに行った時のエピソードを嬉しそうに自慢する

そこは核となる小惑星を中心に大地がまばらに浮いている奇妙な場所
重力が極限まで弱く、ほぼ無重力を体験できる
恐怖を抑制してくれるプログラムがあるので、高所が苦手な子供もにっこり
プレイヤー達は頭の上にある浮島に向かって飛ぶわけだが、体をうまく反転させる必要がある
全国の子供達はでんぐり返しの要領で中々うまくやるらしいが、親父はそう簡単にはいかなかったらしい
何度も失敗しては、ふわっと、顔を打ったと重ねて語って大爆笑

今日の食卓は親父の話題をメインにして賑やかだった
母は娘の話に頷いて相槌を打ち、時折クスッと笑う

お父さんは昔からそうなのよ
ドジでねー
ほら、誠清覚えてる?

何のこと

お父さんが川で溺れた日のこと

またその話か
忘れるわけねーよ
親父が目の前で死ぬと思ったからな

何があったの?

綾羽は興味津々で身を乗り出してきく
母はまた思い出してクスッと笑った

笑い事じゃないんだけどね
お兄ちゃんが小学校二年生くらいの時だったかな
二人で川に釣りに出掛けて、その時に足を滑らせて溺れたの

あーその話か
こっわ

俺に、川に入るなって散々言っておきながら自分は入ったからな
あれはアホだ

こーら
お父さんのこと悪く言わないの

いやアホだろ
絶対カッコつけて入ったぜアレ

お父ちゃんと釣りに出掛けるの不安になってきたなあ

綾羽、お父さんと釣りに行く約束したの?

約束しちゃった
でもまあ仕方ないね

行くって約束したのなら、ちゃんと行ってあげてね

うん分かってる
二人でキャンプする予定だよ

あら良かったね

あのさ
愛里奈がお父ちゃんのこと大嫌いでさ

あの、ちょっと言葉がキツい子?

そう、めっちゃお父ちゃんにキレるの
マジで話聞いてて可哀想そうでね
だから綾羽は優しくしてあげるの

娘に愛されて、うちのお父さんは幸せ者ね

愛しては、、、ないかなあー

娘ケラケラですよ悪魔
息子は些か同情する

ひどっ
親父に言ったろ

やめて
またキレるじゃん

数日後

お父さんが人魚になるのがそんなに嫌か!

当たり前だろ!
親父の人魚なんか死んでも見たかねーよ!

綾羽は見たい

お前も恥かくんだぞ

お父ちゃんだって誰にも分かんないじゃん
今はこんなに可愛いんだから

「こんなに可愛いんだぞ」

遠慮しろよ
可愛くねーよ

可愛いだろ!

可愛くねえ!

あーうっせえわ
うちの男共マジめんどくせえ

こら綾羽!
お前まで何だその言い方は!

つまんないことで喧嘩しないで
早く遊ぼう

三人が訪れたのは水の惑星アトランチス
サイズが盧舎那仏の顔級の真珠の核から、無数の珊瑚礁が積み重なって大地を形作っている
表層の海面は歩けるほど浅く、珊瑚礁に開いた穴から潜行する
太陽の光よりも真珠の輝きが底から全体を照らしているので、明かりの心配はいらない

人魚の住む町から古代都市、さらに沈没した潜水艇に宇宙船までロマンがある
プレイヤーは数少ない地上の島の一つから、どこまでも透明に澄んだ海へ飛び込んで冒険に出る
もちろん呼吸も会話も可能で視界だって良好
水の苦手な子供には恐怖心を抑制するプログラムが働くので、少しずつ慣れるといいぞ

海中では足を使って泳ぐか、人魚になるか、いつでも切り替えが出来る
当然、簡単なのは魚のヒレだ
また、泳ぐスピードが俊敏に比例するのは地上で走るのと変わらず

誠清
どうだ似合うだろう

ちんちくりん

そんなことないだろう

親父は結局、人魚になることを決意した
上半身は警備服を着て、下半身はそれに色を合わせた藍色の鱗の尾ビレ
水着は喧嘩してでも阻止した
息子は良くやったと内心で自分を褒めた

ねえーお兄ちゃん
似合ってる?

似合ってるよ

こいつは人魚でも水着でもいい
好きにすればいい
中身が妹でなければもっと可愛かったのにそれが惜しい
と思う兄であった

あれー?
もしかして綾羽に惚れた?

ふざけんな
キショいこと言うな

はあ?
ひどっ
最低
お兄ちゃんの方が虫よりキショいわ
気遣いできないから彼女できないんだよ

倍返しでボロカス言いやがって
お前が他人に言えたことか

こーらダメだぞ
喧嘩するなら、お父さんビキニを着ちゃうぞ

何でだよ
母さんが本気で泣くぞ

、、、困る

お父ちゃんてば、ほんとお母ちゃんラブだねー

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