異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

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第十六章 収穫祭

第三百四十一話 決勝戦

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「お待たせしました。それでは決勝戦の開始です」
「「「うおー!」」」

 舞台の清掃も終わったので、いよいよ決勝戦の開始となる。
 ビューティーさんとシルク様が、完全武装で入ってきた。
 観客のテンションもかなり上がっている。
 
「圧倒的な強さで勝ち上がってきた二人を紹介します」
「「「おお」」」
「冒険者になって僅か数年でBランク冒険者に上り詰め、実は貴族のお嬢様でもあった逸材。剛腕ビューティーこと、ザンディ・フォン・ビューティー!」

 アルス様のお姉さんもノリノリで紹介している。
 ビューティーさんが手をあげて紹介に答えると、観客もヒューヒュー言っている。
 アルス様とビューティーさんの同級生も集まっているのか、野太い声援も聞こえてくる。

「続いては、可憐な少女に似合わずの圧倒的な武の才能。それもそのはず、あの武で有名なランドルフ家の血を引く者です。戦女神シルクこと、シルク・フォン・ランドルフ!」

 シルク様はペコリと挨拶をするが、観客からはどよめきが起きている。
 ランドルフ領は隣の領だしあの惨状はブルーノ侯爵領にも伝わっている。
 まさかランドルフ家の生き残りがいるなんて、思ってもいないのだろう。

「試合のルールに変更はなし。両者とも健闘を祈る」

 この試合の審判は、ドラコの母親が務める。
 俺も魔法障壁を厚めに張っておこう。

「では、試合開始だ!」

 バキ!

「「「おお!」」」

 お互いの右ストレートが交錯した。
 一瞬二人の動きが止まり、観客からどよめきが起こった。
 暫くは格闘戦が続いている。
 ビューティーさんは力押しだけでなく、技術もある。
 シルク様はカウンターを主体にして、ビューティーさんを迎え撃っている。
 そして、お互いが少し離れると、剣を抜いて構えた。

「ここからが本当の勝負ですね」
「はい、さっきまでのはウォーミングアップを兼ねた様子見かと」
「あんなに楽しそうなビューティーは、学園以来だな」

 ルキアさんもアルス様も、ここからが本番だと感じている。
 近くにいる王妃様達や竜王妃様達もうなづいている。

「すげー」
「これが達人同士の戦いか」

 両者ともに、身体強化を使っての剣撃に格闘戦を繰り広げている。
 剣の当たる音が辺りに響いている。

「中々凄まじい試合だのう」
「純粋な格闘術ではなく、両方とも冒険者としての戦闘術ですね」
「どんな形でも良いから、相手を倒す。そんな戦い方ですわ」

 ビアンカ殿下とウィル様にルキアさんが感想をこぼしているが、確かに綺麗な形ではない。
 しかし、その分激しい撃ち合いになっている。

「でも、このままではシルクの負け」

 レイアが冷静に状況を分析しているが、確かにビューティーさんがシルク様を押し始めた。
 いくら武の天才とはいえ、シルク様は格闘技を習い始めてまだ半年。
 ビューティーさんとの経験の差が、徐々に出てきている。

「はあー!」
「ぐっ」

 ビューティーさんの左ストレートがシルク様を捉えた
 シルク様は、この試合で初めて完全な防御体制に入った。
 その瞬間を、ビューティーさんは見逃さなかった。

「えやー!」
「「「あっ」」」

 ビューティーさんの強烈な回し蹴りが、シルク様に炸裂した。
 シルク様は何とか踏ん張ろうとしたが、そのまま場外に吹き飛ばされてしまった。
 ミケとララとリリが、声をあげてシルク様の所に駆け寄っていった。

「そこまで、勝者ビューティー」
「「「うおー!」」」

 ドラコの母親が勝者を告げると、観客からは今日一番の声援が上がった。
 シルク様も直ぐに立ち上がって、ミケ達に支えられながら舞台の中央へと歩み寄った。

「完敗です」
「魔法戦だったら確実に負けたがな」
「それでも、経験の差が出ました」
「まあ、これでも格闘技一本でBランクになったからな。また機会があったらやろう」
「はい」

 シルク様とビューティーさんは、互いの健闘を讃えて握手をしていた。

「激戦を戦った二人に、今一度大きな拍手をお願いします」

 パチパチパチパチ。

 観客からも二人に向けて拍手が飛んでいた。
 そんな中、シルク様とビューティーさんは控え室に下がっていった。

 さて、とても盛り上がっているけど、この後が本当のメインイベントになりそうだ。
 無事に終わるか、とても心配だ。
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