異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

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第十六章 収穫祭

第三百三十二話 アイス屋さん始動

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「おー、もう人が集まっている!」

 ブルーノ侯爵領の収穫祭当日。
 朝早くからブルーノ侯爵領へ向かうと、既に多くの人が街に繰り出していた。
 一部では出店も営業している。

 俺達は、まずはルキアさんにご挨拶。

「「「おはようございます!」」」
「おはようございます、皆さん。今日は色々と宜しくお願いします」

 ルキアさんはアルス様と共に、沢山来ている来客の対応に大忙し。
 邪魔をしちゃ悪いと思って、挨拶は簡単にして切り上げた。

「しかし、本当に聖女様はサトーの女装だったんだね」
「あはは……」

 毎回恒例の俺か女装してびっくりで、今日はイルゼ達がびっくりしている。
 収穫祭の格闘技大会はお昼から始まるので、それまでは自由行動。
 ミケ達は、早速屋台の準備を始めた。
 必要な道具は、スラタロウのアイテムボックスに入れてきた様だ。
 皆も手伝って、あっという間に屋台は完成。
 何だか作りが、前世のお祭りの屋台の様だ。
 そして、お店の名前は聖女様のアイス屋さん。
 何で俺の名前になっているのかは、議論の余地はあるだろう。
 しかも、普通のアイス屋さんの作りになっている。
 
「ミケ。アイスクリームディッシャーなんて、どうやって作ったんだ?」
「親方に頼んだの。こういうのが欲しいって頼んだら、任せろって言ったよ」

 成程、ドワーフの親方の職人魂に火を付けたか。
 こんなものを作るなんて、流石としか言い様がない。
 そしてアイスを冷やすのにてっきり魔法を使うのかと思ったが、そうではなかった。

「ふふふ、これは冷凍魔道具の試作品。丁度良いから試しに使うの」
「いつの間にそんなものを作ったんだよ」
「これは野菜とかをお肉の鮮度を保つのに使うの。お店でも使えるようにするの」

 うまく行けば、店頭でも鮮度を保って販売することができるという。
 ただ、残念な事に冷凍しかできないので、今日一日使って改良点をさぐるという。
 何というか、レイアのこだわりは半端ないな。
 
 そしてアイスの登場。
 普通のアイスクリームに、色々なフルーツを使ったアイスに、ミントのアイスもある。
 さすがにチョコ味はなかった。
 個人的には、ドワーフ自治領産の緑茶を使った緑茶アイスが食べてみたい。

「ミケ、アイスはいいんだがどうやって販売するんだ?」
「ふふふ、頑張って作ったんだよ!」

 そう言ってミケが取り出したのは、アイスのコーン。
 カップ型もある。
 そういえば、フローレンスが昨日の日中に子ども達と何かを作ったと言っていた。
 何を作ったかは内緒と言って言わなかったが、これを作っていたのか。
 
「ダブルもトリプルも売るよ!」
「何それ、素敵なんだけど」
「エステルお姉ちゃん、食べてみる?」
「食べる! アイスクリームとイチゴとブドウで!」

 ミケの発言に、食いしん坊のエステルが直ぐに食いついてきた。
 当たり前の様に、ミケにトリプルを頼んだ。
 
「うーん、美味しい! 一度に色々な味を楽しめるよ」

 エステルは、アイスを頬張ってご満悦だ。
 その間にもテキパキと動いて、開店準備は完了。
 座って食べる人向けに、椅子も並べていた。

「じゃーん、準備完了だよ。ちなみに売り子スタイルもあるんだよ」
「ふふふ、これで今日の出店ナンバーワンはアイス屋さんで決定」

 レイアは、あらかじめアイスを盛り付けたコーンを肩から下げた箱の様な物に刺していた。
 これで、移動販売もやるつもりらしい。
 レイアは、早速屋敷の中に入ってアイスを売り始めた。

「いらっしゃい、アイス屋さんだよ!」
「じゃあ、僕はダブルで」
「私はトリプルだわ」
「ミントって、爽やかでいいわね」
「緑茶って、少し苦味があって大人の味だな」

 直ぐにアイス屋さんには、人の列ができた。
 テキパキと接客しているので、そこまでは列は長くなっていない。
 ミケとララとリリに加えて、フェアとオリヴィエもお揃いのエプロンを着て接客している。
 フローレンスに加えてマーメイド族のメイドも手伝ってくれているので、特に問題もおきていなかった。

「サトー様、ルキア様がお呼びです」
「分かりました。直ぐに向かいます」
「お姉ちゃんも頑張ってね!」
「ミケも皆も頑張れよ」

 ミケ達に声をかけて、俺は呼んできた侍従の後に従って屋敷の中に入っていった。

「ミケちゃん、トリプルもう一つ! 今度は別の味にしよう」

 背後で律儀に列に並んでいたエステルが、再びトリプルを頼んでいる。
 俺は何も聞いていないことにしよう。
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