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第十六章 収穫祭

第三百三十話 休日も訓練

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 収穫祭まであと一週間。
 今日はお休みなので、ブレットさんの特訓もうちで一日行う。
 婚約者のアントニオさんも、うちに来ています。
 婚約者パワーは凄いな。
 ここの所気を張り詰めていたブレットさんの肩の力が、アントニオさんが声をかけるとふっと抜けている。
 訓練の間に二人が話をしていると、楽しく話をしたり笑い合っていたりととってもラブラブな雰囲気です。

「なあに?」

 思わず横にいるエステルを見たが、この間大阪のおばちゃんの様な感じで俺の事をバシバシ叩いてきたな。
 少しは、目の前のラブラブカップルを見習って欲しいものだ。

「それじゃ、行ってくるね」
「気をつけて行ってこいよ」

 イルゼ達は、ドラコ達と早速冒険者ギルドに行くという。
 今日は、入園希望者との親睦を深める意味もあるようだ。
 珍しく、ビアンカ殿下とヴィル様も参加するという。
 この間、人神教国から来た人の治療でポーションを沢山使ったから丁度良い。
 是非とも楽しんで貰いたい。
 ちなみにレイアとかは、自分が住む屋敷の中に家具とかを配置しているという。
 レイアの屋敷はまだ侍従が足らないから、引っ越しは収穫祭の後の予定だ。

「サトー、ちょっと来て」

 目の前のブレットさんの訓練を見ていたら、エステルにこっちと手招きされた。
 なんだろうと思ってエステルに近づくと、いきなりハイタッチされた。

「じゃあ、あとよろしくね!」
「は?」
 
 目の前には、休憩が終わったブレットさん。
 俺の後ろには、助かったって感じのエステルの笑顔が。

 はめられた?

「皆、サトーがどれ位強いか知りたいんだって」
「すみません、サトーさん。宜しくお願いします」
「何だって!」

 エステルが戦いをしろとはやし立てていて、ペコリとお辞儀をしてきたブレットさん。
 もう完全に断れない感じです。

「はあ!」
「よっと」

 という事で、ブレットさんとの組み手が始まりました。
 流石に刀を使うわけにはいかないので、俺も格闘術で応対します。
 先日の竜王妃様達との話し合いが少し効いているのか、目で追うのではなく魔力とか色々なものを感じながら戦える様になってきた。
 この分なら、来週までには新しい戦い方をものにできそうだ。
 
「お疲れ様、だいぶ良くなってきていますね」
「有難う御座います。でも、一撃も入れられませんでした」
「ハハハ、そこは俺も必死で避けていましたから」

 十分程組み手を行い、お互いの感想を交換している。
 先日レイアに完敗した時は焦っていたけど、今日は自己分析もちゃんとできていて安心して見ていられる。

「お疲れ様、ブレット。流石にサトーさんは強いね」
「有難う、アントニオ。勝てるとは思っていなかったけど、完敗だったよ」

 うん、やっぱり恋人効果が非常に大きい。
 さっとブレットさんのサポートをするあたり、アントニオさんもかなり良い人だ。

「こんな美味しい料理は、初めて食べました」
「だよね。この間のスイーツとかも、本当に美味しかったんだから」

 お昼ご飯は、スラタロウが疲労回復に良いものを作ってくれた。
 初めてスラタロウの料理を食べるアントニオさんは、スラタロウの料理に舌鼓を打っていた。
 やはり、スライムがこんな料理を作るなんて凄いよね。

 お昼ご飯の後は、ストレッチをしたり瞑想をしたりと体のコンディションを整える事に専念している。
 ゆっくりと体を休めるのも重要な訓練です。
 特に瞑想の効果が高いらしく、周りの動きなどを感じ取れる様になったらしい。
 俺は、流石にそこまではできないぞ。

「ぐー、ぐー」

 そして、庭の芝生の上では瞑想をしていたはずのエステルが爆睡していた。
 ショコラがちょんちょんとくちばしで突っついても、エステルは全く起きなかった。
 しょうがないなといった感じで、ショコラはエステルを連れて部屋にワープしていった。
 何だか、小さなふくろうが大きな人間の子どもの世話をしている様だ。

「ただいま!」
「おかえり、早かったな」
「午後から用事のある人がいたから、早めに切り上げたの」
「それなら仕方ないな」
「薬草は、バッチリ取れたよ」

 俺も軽くストレッチとかをしていたら、イルゼ達と共にドラコ達が帰ってきた。
 うちのメンバー以外はいないので、途中で別れた様だ。

「しかし、内務卿の娘の件といいシルクの事といい、中々面白い事になっておるのう」
「お祭りとしても盛り上がりますし、こういう事も良いと思いますよ」

 久々に顔を見せたビアンカ殿下が、俺の所にやってきた。
 ここ暫くは、宰相のところではなく学園関係の部署で仕事をしていたという。
 学園に入園すると学業優先で政務とかは後回しになるので、負担が少ない所で仕事をするそうだ。
 王都では収穫祭はやらないので、実質的にブルーノ侯爵領の収穫祭が国内で一番規模が大きくなる。
 多くの人も来るから、いい目玉のイベントになりそうだ。

 その後のブレットさんは、組み手をせずに攻撃パターンの確認や武器の手入れとかを行っていた。
 明日の朝は、組み手をせずに動きの確認で済ませるという。
 いつも、ガンガン訓練するわけにはいかないな。
 夕方になると、ブレットさんとアントニオさんはそれぞれの屋敷に帰っていった。
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