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第十五章 人神教国

第三百九話 人神教国に到着

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「今の所は何も動きは無いですね」
「不気味なほどに静かじゃ。嵐の前の静けさにならなければよいが」

 回答期限の当日。
 今日の十時が期限となるのだが、未だに人神教国からあのふざけた回答以外何もない。
 あと三十分になったら、人神教国に向かう。
 既にどの場所でも、うちと軍の戦力がスタンバイしている。

「お兄ちゃん、あれ!」
「ビアンカ殿下、新たな回答が出ましたね」
「うむ、実に分かりやすいのう」

 ミケが指さした先、王国と人神教国の国境となる橋の先で、魔獣や魔物が現れ始めている。
 その動きを見て、国境警備隊とシルク様達は直ぐに戦闘態勢に入った。
 
「前の敵はおとりの可能性がある。周囲の探索を続けて、陽動に気をつけろ」
「「「はい!」」」

 今日は国境に軍務卿がきて、軍の指揮をとっている。
 一緒にきているミミも、周囲の警戒をしている。
 
「サトー、橋は渡らずに龍に乗った方が良さそうだな」
「その可能性は考えていました。ドラコの母親にも話をしていたので」

 ここでギース伯爵領にいるスラタロウと、王都にいるホワイトもやってきた。
 
「もしかして、そっちも出た?」

 スラタロウとホワイトは、こくこくと返事をした。
 やっぱりというか、予想通りだな。

「よし、スラタロウとホワイトも頑張ってな」
「正直な所、お前らが頼りだ」
「頑張って」

 俺だけでなく軍務卿やミミからも激励を受け、スラタロウとホワイトは触手と小さな手をふりふりして元の持ち場に戻っていった。

「サトー、そろそろ時間じゃ。人神教国に乗り込むぞ」
「はい、すぐに行きます。軍務卿、後は宜しくお願いします」
「こちらは任せろ。サトーも気をつけてな」

 ビアンカ殿下が、俺の事を呼びに来た。
 既に龍の形になっていて、いつでも行けるようになっている。
 この場は軍務卿に任せて、俺も人神教国に向かおう。

「お待たせしました」
「では行くとするか。一気に人神教国の中心部まで行くぞ!」
「お願いします」

 白龍王の背中に乗って、俺も準備万端。
 他の人も準備できたので、人神教国へ向かって飛び立った。
 飛び立って直ぐに国境の橋を超えるが、沢山の魔物がうじゃうじゃといる。
 あの程度の魔物なら問題ないけど、倒すのに時間が掛かりそうだな。
 そんな事を思いながら、僅か三十分の空の旅で人神教国の中心部に到着。

「人神教国というものを、良く表しておるの」

 皆が準備をしている間、ビアンカ殿下が中心部を見て感想をポツリと漏らした。
 住民が住むと思われる建物はバラック作りで、とてもボロボロなものだ。
 対してバラック小屋の先には、超豪華な寺院がドーンっと建っており、寺院の周囲にも高級感のある建物が建っている。
 一部だけに富が集中している構造が、はっきりと見て取れる。

「ビアンカ殿下、先ずはあの豪華な寺院に向かいますか?」
「いや、その手前の行政を行っている所に向かう。一応王国からそこに書簡を送っておる」

 という事で、最初はその行政を行っている建物に向かう。
 バラック街を進んでいくと、奇妙な事に気がついた。
 
「ミケ、人の反応はあるか?」
「誰もいないよ」
「だよな。避難でもしているのかな?」

 そう、気味が悪いくらいあたりは静かになっている。
 それでも何かあると行けないので、周囲を警戒しながら進んでいく。

「どうやら、あの寺院以外は街に人はいなさそうじゃな」
「ここまでくると、ゴーストタウンですね」

 流石は白龍王夫妻。
 俺なんかでは太刀打ちできない規模の探索をしてくれた。
 他の龍人も、ウンウンと頷いている。
 となると、一体住民はどこに行ったのか。
 懸念が一つあるけど……

「サトー、妾も同じ考えじゃ。恐らく住民は、王都や国境に送られたのじゃろう」
「その可能性は高いというか、間違いないですね」
「直ぐに各所へ連絡しよう。聖魔法を使えるものも、今では多いのでな」

 直ぐに、ビアンカ殿下が各所へ連絡を取ってくれた。
 うちの子どもらも探索能力に優れているから、何となく気づいてくれてるはずだ。
 
 さほど規模の大きな街ではないので、少ししたら高級住宅街に到着。
 王国などで言う貴族街なのだが、ここも人が全くいない。
 ここまでくると、かなり怖いものがある。
 
「生き物の気配が全くしないですね」
「幽霊屋敷を歩いている気分です」

 エステルとリンも周りのきみの悪さに、少し顔色が良くない。

「さて、目的の行政所に着いたのじゃが」
「うーん、人がいないですね」

 そして、少し豪華な建物に着いた。
 ここが目的地なのだが、ここも人の気配が全く無い。
 探索をかけても何もヒットしない。

「お兄ちゃん、ドアが開いているよ」

 ミケが、建物のドアが開いている事に気がついた。
 どうやら中に入れるとの事だが、さてどうするか。
 と思ったら、龍の皆様が次々と入っていった。

「サトー、置いていくぞ」
「ここはさっさと終わらせて、本陣に乗り込まないと」

 ドラコとルシアの母親が、俺に声をかけてきた。
 確かにここは通過点なのだから、直ぐに捜索を終わらせないと。
 俺は、皆より少し遅れて中に入っていった。
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