異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
306 / 394
第十五章 人神教国

第三百六話 夜勤後の睡魔との戦い

しおりを挟む
「眠いよ……」

 結局、部屋の外に出しても子ども達が夜警に連れて行ってくれなかったとブーブー騒いでいたので、貴重な睡眠時間が削られてしまった。
 眠い頭をなんとか覚醒させて、レイアとともに王城に向かった。

「昨晩は、大活躍だった様だな」
「頑張ったのは、馬とスラタロウとホワイトですけどね」
「サトー達も犯罪組織を潰したというし、結果的に上出来だろう」

 上機嫌の宰相に迎えられて、仕事を開始する。
 売人を確保した上に、結果的に王都に巣食う悪を一網打尽にできたのだから。
 日中の巡回では、この辺までは分からない所だからな。

 さてさて、仕事を開始する。
 最初は頑張っていたけど、段々と数字の羅列をみると催眠術にかかってくる様だ。
 ヤバいぞ、このままじゃ落ちる……
 ぐー。

「パパ寝ない」
「いってー!」

 夜警に連れて行ってくれなくてとっても不機嫌なレイアが、寝落ちしそうな俺の尻に何かを突き刺した。
 よく見ると、風魔法で指に鋭利な爪を作っていた。
 なんてもので、お尻を刺すんだよ!
 慌てて、聖魔法でお尻を治療する。

「ハハハ。レイアよ、サトーは心配してくれていたのだ。そこは理解するのだな」
「むう」

 子どもっぽい反応するレイアを、宰相がたしなめていた。
 他の職員も、思わずクスクスと笑っている。
 流石に目は覚めたけど、こういう起こし方は勘弁してほしい。

「流石にサトーは眠そうだな。そしてレイアはふくれっ面か」
「ふふふ、子どもっぽくてかわいいですな」

 未だにほっぺを膨らませているレイアも参加しての会議が始まった。

「いやあ、この数は凄いな。三人の売人を捕まえるだけなのに、犯罪者を百人以上捕まえて、浮浪児を十人保護したか」
「あの、八割は馬とスラタロウとホワイトの活躍ですよ」
「謙遜するな。従魔も含めて主の活躍だ」
「むう」

 夜警の成果に、陛下はホクホク顔だ。
 対して、レイアは未だにふくれっ面だけど。
 馬とスラタロウとホワイトがいれば、犯罪者は逃げられないだろうな。

「尋問の結果、人神教国は王国を再び混乱させようとしていたという。あと、やはり人神教国は経済が滞ってきたようだ」
「それで、新たなビジネスを考えたのか。その結果が薬物売買か」
「強くなる薬といって売りさばいていた様だな。更に売人もスカウトしていたか」

 色々なビジネスを考えるよな。
 まともにやれば、普通に儲かりそうな気がするけど。

「現在、人神教国に向けて抗議文を送っている。期限を決めて報告しなければ、こちらから乗り込むとしてある」
「期限は十日後だ。勿論、帝国と公国にも伝えてある。なので、サトー達はいつでも乗り込める準備をしてほしい」
「分かりました。王都と国境も人を出します。それと、ドラコとルシアの母親も是非参加したいと」
「人数は多いほうが良いだろう。報酬はスラタロウの料理だと思うし、問題ない」

 ドラコとルシアの母親は、合法的に暴れる機会を狙っているからな。
 白龍王やドラコとシラユキの祖父母にも、念の為に伝えておこう。

「ミケに絡んだ冒険者は、薬の売買に加えて依頼先での窃盗もあった。被害金額は計算中だが、貴金属も含まれるので相当年数の強制労働になる」
「初心者の冒険者が陥りそうな罠とはいえ、これは仕方ないですね」
「サトーが保護した三人も、登録チームのメンバーという関係で処罰対象になる。まあ、二ヶ月の冒険者ライセンス停止が妥当だな」
「止められなかった責任が付きますね。俺から伝えます。暫くは、うちで修行兼ねて色々とやって貰いましょう」
「レイアが養ってあげるの」

 ある程度どうなるかは伝えているが、当分は冒険者についてもう一度しっかりと教えてあげよう。
 あの三人なら、問題はなさそうだ。

 その後もなんとか気力で仕事を乗り切り、ふらふらの状態で帰宅する。
 仕事終わりに冒険者ギルドから三人に対する通達がきたけど、予想通りにライセンス停止二ヶ月でランクはそのままだ。
 ちなみに犯罪をやった彼は、冒険者ギルドからの追放と被害金額の賠償。
 ギルドが被害金額の肩代わりをして、その分を強制労働から徴収するという。
 幸いにも宝石類はまだ持っていたので、直ぐに被害者に返還された。
 というか、被害受けたのが農商務卿のところなので、後で菓子折り持っていかないと。

 帰宅して、未だに抗議をしている子ども達を後にして、三人に今後の事を話した。

「何となく、ライセンス停止は想像はできていました」
「明日にも、被害者の所に謝罪に行かせてください」
「逆にサトーさんに色々とご迷惑をかけて、申し訳ないです」

 しゅんとしてしまった三人だが、冒険者を続ける事ができるのは素直に喜んでいた。
 ここからは、一歩一歩進んでいかないと。

 今後の事を含めて皆に話さないといけないので、パーティールームに集まって貰った。

「先ず最初に、この三人は二ヶ月の冒険者ライセンス停止になりました。保護観察も兼ねてうちで働く事になります」
「マックスです。冒険者の時は戦士型でした。宜しくお願いします」
「ヒューゴです。シーフをやっています。お願いします」
「パメラです。魔法使いとアーチャーをしています。ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いします」
「「「わー!」」」

 子ども達は、三人を歓迎している。
 マックスは濃い青色の短髪で、筋肉質の如何にも戦士って感じだ。
 ヒューゴは緑色のくせ毛で、少し痩せ型。
 うちでシーフっていうと、クロエが該当するくらいしかいないから、ある意味貴重な存在。
 パメラは、暗めの金髪ボブカットでオーソドックスな魔法使いとアーチャー。
 うちで弓を使うのは、レイアしかいないな。
 
「そして、これからが本題になる。今回の件を受けて、人神教国に抗議文を送った。返事がない場合、もしくは謝罪になっていない場合は、人神教国に乗り込むことになる」

 おい、何で皆はキラキラした目になっているんだ?
 やっと人神教国と全面対決になることを、そこまで待ち遠しく思っていたのかよ。

「人神教国に乗り込む本隊、王都の守備隊、国境守備隊に分けることになる。どこも厳しい戦いが予想される」
「人員分けは後ほど行うけど、戦いが早まる可能性もあるので、直ぐに動けるように準備するように」
「「「「おー!」」」」
「マックス達も、暫くは戦闘訓練だな。すまんが非常時には出てもらうぞ」
「「「はい!」」」

 さて、連絡事項はこんなものかな。
 と、ここでミケが手を上げてきた。

「お兄ちゃん、歓迎会は?」
「今日はちょっと無理かな。やるなら明日だよ」
「でも、あそこに王様がいるよ!」
「はっ?」

 ミケの指さした方を見ると、もう定位置となっているテーブルに座っている偉い人が、パーティーまだなのって顔をしていた。
 そして続々と入ってくる、追加の偉い人達。

「スラタロウ、今から準備できる?」

 スラタロウに聞くと、既に準備万端だという。
 最初から、歓迎会をやる気満々だったな。
 ということで、歓迎会が開催されることに。
 農商務卿もきていたので、三人は土下座をして謝罪していた。
 何とか三人を起こして、明日改めて伺うという事で落ち着いた。
 その後は子ども達に囲まれながら、楽しそうにしていた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...