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第十四章 公国

第三百話 家族の再会とお肉祭り

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 行政府での対応が終わり大型馬車が用意されたので、皆で公国王邸に向かうことに。
 リン達も公国王邸にいるらしいので、現地で合流する。
 今日色々あった事は、内容を精査して明日国民に発表されるという。
 今回は、俺はあまり役に立たなかったな。
 王妃様を始めとする、他の人の活躍が大きかった。
 
「公国王陛下。公国王邸に着きましたら、リディア様を王国よりお連れ致します」
「聖女様、今までジュリエットとリディアを匿って頂き、感謝します」

 公国王は、俺に娘を匿ってくれた事に感謝していた。
 まあ、うちでジュリエット様とリディア様を預かったのはきっと偶然だと思いたい。
 馬車はトコトコと、ゆっくり街道を進んでいく。
 ここに来たときはゆっくり周りを見る余裕がなかったけど、こうしてみると風光明媚な土地柄だ。
 坂の街って感じで、石畳も綺麗に整備されている。
 ゆっくり時間が取れるなら、一日観光とかもしてみたい。
 そしてそんな祖国の様子を、王妃様は馬車の窓から懐かしそうに見つめていた。

 馬車は、ゆっくりと大きな建物の敷地に入っていく。
 そして、玄関の前に着くと老執事が待っていた。
 馬車の扉が開いて皆が降りていくと、老執事は綺麗なお辞儀をした。

「旦那様、お帰りなさいませ」
「ロブス、すまんな。引退したのに急に呼び出して」
「いえ、私めをこうして国の危機に際してまたお呼び頂き、感謝致します。粉骨砕身の気持ちで業務にあたります」

 公国王邸の執事が捕まったので、急遽先代の執事が、呼び戻されたという。
 その執事の事を、王妃様も懐かしそうに呼んでいた。

「ロブス、久しぶりね。元気そうで何よりですわ」
「エリザベス様、お久しぶりに御座います。今日の活躍をお聞きしており、私めも感動しております」

 どうもこのロブスさんは、王妃様がまだ公国に居たときの執事でもあるらしい。
 だからなのか、王妃様もかなり親しげに話をしている。
 そして、ロブスさんが公国王邸の玄関扉を開けた。
 そうしたら、まだ俺がここに呼んでいない人物が飛び込んできた。

「お父様!」
「リディアではないか。毒に侵されたと聞いたが、体調は大丈夫か?」
「うん!」

 建物の中から現れたのは、王国にいるはずのリディア様だった。
 リディア様は公国王様に飛び込むかの様に抱き着き、公国王様のお腹に頭を押し付けてグリグリしている。
 公国王様も、そんなリディア様の頭を撫でながら微笑んでいた。
 王妃様も他の面々も、ニコニコその様子を見ている。

「ハハハ、よっぽど早く会いたかったんだね」
「エステルが連れてきたのか?」
「ショコラに頼んで、龍とかをうちに連れて行ったんだよ。そうしたら、もう待ちきれないといった感じで待っていたんだって」

 リディア様は、久々に父親との再会を待ちきれなかったのだろう。
 こればかりは、仕方ないだろうな。
 しかし、リディア様が勢いよく走っていったので、プリンが床に転がっているぞ。
 プリンはぴょんぴょん跳ねて、リディア様の頭の上に着地した。
 そこにリンも現れた。
 リンの両手には、ララ達と同じ位の女の子がいた。
 粗末な貫頭衣を着て、リンの体に隠れながらこちらを見ている。

「サトーさん、お帰りなさい」
「リン、その子はどうした?」
「実は、外務大臣の屋敷で囚われていた子どもでして。この子の他にも、もう五人いました」
「おい、奴らはまたですか」
「しかもこの二人は、外務大臣からひどい虐待を受けていました。他の五名はジュリエット様が公国で面倒を見ると言っていますが、この二人は公国にいるのはちょっとと言うことで……」

 チラチラとリンの後ろに隠れてこちらを見ている少女は、少し見た目が特殊だった。
 一人はレイアに似ているエルフだが、髪が銀髪のセミロングで肌が褐色。
 前世のファンタジーとかで見た、いわゆるダークエルフだな。
 もう一人は、ララとリリの特徴が混ざった容姿だ。
 髪は金髪で毛先が少し赤目の長髪、肌は普通の肌色だが、目がルビーの様に赤い。
 ララの様な天使型の翼だけど色は黒いし、リリの様な角も頭にある。
 まあ、うちは珍しい人種だろうと特にどうこうすることはないし、いい子ならオッケーだ。
 俺はしゃがんで、二人の目線の位置で話し始めた。

「お名前を教えてくれるかな?」
「フェア」
「オリヴィエ」
「そっか、フェアにオリヴィエね」

 ダークエルフがフェアで、堕天使っぽいのがオリヴィエね。
 ちゃんと話を聞いてくれたあたり、大丈夫かな。

「二人が良かったら、うちにくる? リンやエステルに、ミケ達もいるよ」
「いいの?」
「行きたいな」
「そっか、それなら決定だね」

 二人もオッケーしてくれたので、大丈夫だろう。
 そうしたら、案の定ミケ達がわらわらと集まってきた。

「わーい! フェアもオリヴィエもよろしくね!」
「リリが色々と教えてあげる」
「ララも教えるよ!」
「レイアも」
「えーっと」
「オロオロ」
「ミケ達よ、もう少し落ち着きなさい。二人が驚いているぞ」

 ミケ達と同じ年代なので、話はしやすいはずだ。
 でも、ミケ達がいきなり元気良く話しかけたから、フェアとオリヴィエは戸惑っているぞ。
 
「そうだ。サトーさん、スラタロウが一杯お土産くれたの。皆で食べてって」
「それは良かったね。家族みんなで食べてね」
「うん!」

 リディア様が話しかけてきた。
 スラタロウもリディア様が帰ると分かったから、急いで料理を作ったんだな。
 そして、リディア様はいつの間にか冒険者登録をすると貰えるバックを持っていた。
 きっとプリンの従魔登録する時に、ついでに冒険者登録をしたのだろう。
 そして、リディア様がサラリと爆弾発言をしてきた。

「サトーさんって大変だね。昨日はお兄さんなのに、今日はお姉さんだなんて」
「「「「「え!」」」」」

 リディア様が、さらりと俺が女装なのをバラしてきた。
 俺の正体を知っているジュリエット様やうちにきた侍従はともかくとして、公国王様や公国王太子様に老執事に侍従、はたまたフェアやオリヴィエもビックリしているぞ。

「叔母上、聖女様が女装とは本当なのですか?」
「本当よ。しかもウィッグ付けて女性者の服を着ただけなんですよ」
「化粧すらしていないのよ」
「ある意味、女性の敵ですわね」

 公国王様は、顎が外れそうな位ビックリしている。
 そして、王妃様達。説明が適当ですよ。

「うそ……」
「信じられないよ」
「お兄ちゃんは、お姉ちゃんにもなるよ!」
「凄いよね」
「とっても綺麗だよ」
「不思議だよね」

 フェアもオリヴィエも、俺が女装していることにかなりビックリしている。
 ミケ達も、俺の説明が適当ですよ。
 エステルもリンも、俺を見て苦笑しない!

「今日は疲れているようですし、また日を改めて訪問しますね」
「叔母上、本当に色々と助かりました。改めてお礼を致します」

 今日は、色々あって皆疲れているのでこれで解散に。
 事務レベルで日程を調整して、再度訪問することにする。
 ということで公国王家族とは分かれて、皆うちにワープします。

「お帰りなさい」
「ただいま」

 うちに着くと、直ぐにフローレンスが出迎えてくれた。
 そして、一緒についてきたフェアとオリヴィエの事にも直ぐに気がついた。

「フェアとオリヴィエだ。例の如く、人神教国で違法奴隷として囚われていた子だよ」
「またですか。先ずはララちゃんとかの予備の服を着せるようにしますね」

 フェアとオリヴィエは、フローレンスに連れられてお風呂場に向かった。
 ホワイトが生活魔法で綺麗にしたけど、お風呂で改めてゆっくりと温まって欲しい。
 他のメンバーや王妃様達も、続々とお風呂に向かっていった。
 俺も女装から着替えて、お風呂に行こう。

「「「「かんぱーい!」」」」

 そして、皆さんお待ちかねのお肉祭りが開幕。
 人数が多いので、食堂にプラスして外でもバーベキュー形式でやっている。
 龍人達が、次々に肉を魔導コンロでジュージューと焼いている。 

「カァー! 仕事終わりの一杯は美味しいな!」
「ホントだよ! 今日は良く働いたから格別だな」

 庭にあるベンチで、ドラコとルシアの母親がリクエストしたキンキンに冷えたエールを飲んでいる。
 今日は、龍人の方に本当に助けられました。
 どんどん食べて飲んで下さい。
 パーティールームを簡易宿泊所にしているので、泊まる場合でも大丈夫。

「お肉美味しいー!」
「お肉サイコー!」

 子ども達とドラコ達は、食堂の方でもりもりお肉を食べている。
 勿論、フェアとオリヴィエも一緒に食べている。
 お風呂で綺麗サッパリして、フローレンスに髪を軽く整えて貰った。
 二人共白いワンピースを着ているけど、随分と見違えて綺麗になった。
 ちなみに、俺がお風呂上がりに二人に話しかけたら、俺が誰だか分からなかったらしい。
 女装を解いた姿だと教えたら、かなりビックリしていた。

 王妃様達も、食堂でお肉を食べている。
 とても上品に食べているが、お肉を食べるスピードがかなり早い。
 今日は大活躍だったし、余程お腹がすいているのかもしれない。
 さて、俺もお肉を食べるとするか。
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